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リンボウ流の知的生産術

倉下忠憲
知的生産において、材料となるのは情報です。しかし、情報だけあればそれで十分かというとそうでもありません。それ以外に何が必要かというと、「時間」です。

情報を集める時間、考える時間、アイデアが発酵するまでの時間、実際に手を動かして何かを生み出す時間、そういったもろもろの時間がないと作業を前に進めていくことはできません。

これは知的生産に限ったものではありませんが、共同作業・分担作業ではなく自分の頭を使って進めざるを得ない知的生産においては、「自分の時間の使い方」というのは制限要因になりえます。

本書は作家であり書誌学者でもある林望さんの「時間の使い方」を紹介した本です。内容的にはタイムマネジメントの手法ではなく、有用に時間を使うための知的生産術として読むことができそうです。


概要

多くの著作を生み出されている林望さんの知的生産スタイルというのは、確かに興味あるところです。本書ではそれらをいくつかの切り口から紹介しています。

第一章 「忘れる」ことに備える
第二章 いかに迷わず「書く」か
第三章 誤った「読み方」をしない
第四章 無駄なく「話す」こと
第五章 「英会話」を最短で覚える
第六章 何事にも「凝らない」
第七章 「一日」の中で時間節約を重ねる
第八章 「人生」という枠で時間を見る
第九章 身も心も「丈夫」である

序盤は、メモの技術、読み・書きといった基本的な内容。中の方では学習法について。最後になると、知的生産術からライフスタイルへと話が広がっていますが、長期的に何かを成し遂げようと思えば、長期的な視野で物事を考えることは必要になってきます。

今回は、本書内で紹介されている2つのトピックスを紹介してみます。

A4万能メモ術

この連載でも「メモ」の重要性はたびたび書いていますが、どんなメモ帳を使えばよいのか、というところでお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。

リンボウ流は「A4の紙一枚」です。

メモ帳ではなく、一枚の紙を折って使っているだけ。特別な線が引いてあるとか、そういうことはなにもない。どこにでもある紙を使って、実に万能なメモ帳が作れます。

ごく普通のA4の紙を八つ折りにして持ち歩くだけの非常にシンプルなスタイルです。この紙にひたすらアイデアを書き込んでいくわけです。単価が非常に安く、また紙そのものを紛失したとしても、簡単に補充が効くというのがポイントです。一冊のメモ帳の場合、それを無くしてしまうと全てのメモがなくなってしまうというのがネックになります。私も何度か手持ちのメモ帳を置き忘れて帰りそうになったことがあります。
※お酒が入る場でメモ帳を取り出すと危険です。

もちろん、紙に書き付けたままではメモの再利用性はかなり低いので、一日の終わりにはそれを「移動」させる手順が必要になってきます。

リンボウ流ではパソコンに専用のフォルダをつくり、それをカテゴリーごとに分けていきます。例えば「エッセイ」「小説」「講演」といった分類です。そのフォルダに対応するメモを保存していく、というやり方になります。

私もアナログメモとデジタルツールを併用していますが、保存先はPCのフォルダではなくEvernoteです。どちらにせよ、書き留めたメモを後から利用するための流れが出来ているのが重要です。その流れが確立されていれば、「あのメモはあの場所に保存してあったな」と即座に思い出すことができます。

壁ファイル術

本書内に掲載されている「仕事場」の写真を見て驚いたのですが、壁一面に書類やら封筒が貼られています。要は壁をクリップボードとして使われているわけです。私はパソコンでもデスクトップにショートカットアイコンが溢れかえっているのに我慢できない性格で、この写真をみると唖然としてしまうわけですが、これを物理的スペースでやってしまうというのが「壁ファイル術」。

書斎というのは、私にとっては仕事場を意味しますが、この部屋の壁には、一面に書類やメモなどがピンナップされている。壁はいわばクリップボード。出版社などから届いたファックスも、そうやって壁に貼っておきます。原稿の締め切りとか、どこかの講演に出かける予定とか、そういうこともA4の紙に大きく書いて画鋲でとめておく。

このやり方自体に汎用性があるのかどうかはわかりませんが、重要なのは「使うあてがあるものは、こうして目に付くところに貼っておくのが一番効率的です」という考え方でしょう。確かに机の前の壁に貼っておけば、探し回る手間は無くなります。

この手法のポイントは、「使う当てがあるものを壁に貼っておく」という整理のルールが確立していところです。当然使い終わったものは壁から外されて処分されるでしょうし、新しく入ってきた「使う当てがあるもの」は壁に貼られます。このルールが遵法されていれば、「自分が必要なことは壁を見れば把握できる」という安心感が生まれます。

まったく同じように壁をクリップボードとして使ってみても、「使う当てがある」かどうかの判断をせずにひたすら貼りまくったり、用済みになったものを処理していなければ、このやり方はどこかで破綻するはずです。

これも先ほど紹介したメモと同じで、一定のルールに基づいて情報を処理でてきているかどうかが重要なポイントになってきます。

さいごに

メモをいかにつかうのか、覚えておくべきことがらをいかに管理するのか、というのは時間を有効に活用する上で常に考えておくべきことです。「無駄な時間」として削減対象の候補にまっさきにあがるのは、「何かを探し回る時間」です。この時間を日々少しずつでも減らすだけで、一年間を通して大きな時間節約をすることができるようになります。

不必要な時間は削減して、必要度の高い作業への回していく。これが時間の有用性をあげるということです。本書は、そのような行為への示唆がたくさん詰まっています。

▼合わせて読みたい:

こちらの本も、知的生産と「時間」について書かれています。このあたりは共通的な話題なのでしょう。「集中する時間の確保」「無駄な時間の仕分け」について興味がある方は、チェックしてみてください。


今回紹介したメモや書類の整理のルールというのは、ある意味でその人の「メンタルモデル」に通じる部分があります。メンタルモデルについて理解していれば、他の人の手法から自己流の方法論を立ち上げやすいと思います。メンタルモデルについては、以下の本を。


▼編集後記:
倉下忠憲
 花粉症なのか、風邪を引いてるのかイマイチわからないまま3月の終わりに近づいています。

どちらにせよ作業の進捗状況に影響が出るという点では変わりないのですが・・・。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。

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