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『坂の上の雲』にどっぷりとひたる2017年の春



大橋悦夫3月に読んだ本をふり返っていたら、けっこうな時間を『坂の上の雲』に費やしていることに気づいたので、この本から学んでいることを書いてみます。

『坂の上の雲』とは言わずと知れた司馬遼太郎による歴史小説。

20代の頃より「いつか読もう」と思いつつ、ようやく40代に入って取りかかることができました。

『坂の上の雲』は全8巻からなる長大な作品です。

秋山好古・真之兄弟、正岡子規という3人の主要人物の視点で明治初期の日本が時系列に語られるのに加え、関係各国それぞれの立ち位置からの視点、そして時折著者である司馬遼太郎の視点から補足的な解説が織り込まれることで、実に立体的にこの時代の空気というものが伝わってきます。

実は2015年の暮れに、松山を訪れていました。

松山城をスーッと一通り見学し、道後温泉にサーッと浸かったあとは、残り2日間の滞在期間めいっぱいひたすらミュージアム。



以下の2つそれぞれに3~4時間ずつ、堪能しました。

ここで得られた背景・周辺知識は『坂の上の雲』ワールドに浸るうえで彩りを加えてくれています。

さらに、2009年~2011年にかけて放映されていたNHKのスペシャルドラマ「坂の上の雲」(DVD)も同時に視聴しており、もうこの春は『坂の上の雲』一色となっております。

「戦術」はほぼそのまま「仕事術」に通じる

本書を読み進めていて、時折ハッとさせられることがあります。

戦争における「戦術」がほぼそのまま「仕事術」にも応用可能であることに気づかされるからです。

主力タスクに真っ先に取りかかるべし

例えば、以下はドイツの軍事学者モルトケ(ヘルムート・カール・ベルンハルト・グラーフ・フォン・モルトケ)について言及している部分です。

モルトケ戦術のあたらしさは、主力殲滅(せんめつ)主義にあるであろう。戦場における枝葉の現象に目もくれず、敵の主力がどこにいるかをすばやく知り、味方の最大の力をそこに集結させて一挙に攻撃し殲滅するというものであった。日露戦争における奉天大会戦で日本陸軍がとった方法はこのモルトケの思想であるといっていい。(第1巻 p.225)

これは、その日のタスクリストにおける主力タスク、すなわち最も重要度が高く、最も高い気力を要するタスクに真っ先に取りかかり、これを完了させることで、その後の展開が極めてラクになるという真理に通じます。

その日のタスク群における主力タスクを見極めることが何よりも先決であり、この見極めに加えて、これに最優先で取り組むための仕組みが欠かせないことを改めて気づかされます。

この2つのうち1つでも欠ければ、たちまちその日は敗北を喫することでしょう。

仕事はレシピ化せよ

また、モルトケの弟子であり、お雇い外国人として来日したメッケル(クレメンス・ヴィルヘルム・ヤーコプ・メッケル)は、陸軍大学において教鞭を執ります。

「ドイツ陸軍は」と、メッケルはいう。

兵器の質量においてフランスにすぐれていたのではない。兵の数においても決してフランスを凌駕していなかった。ドイツがフランスよりもはるかにすぐれていたのは、各級指揮官の能力である。

「指揮官の能力は、固有のものではない」と、メッケルはいう。

「操典の良否によるものだ」

よき操典で心身ともに訓練されつくした指揮官は、悪しき操典で動かざるをえぬ軍隊に負けるはずがない、とメッケルはいう。(第1巻 p.229)

操典(そうてん)とは、「軍隊運動の基礎的動作を書いたもの」という説明がありました。これは仕事においては「手順書」あるいは「レシピ」に該当するでしょう。

↓レシピの重要性は以下の記事でも書いている通りです。

» 仕事を前に進めるために「どうしたら、未来の自分がもっと●●になれるか?」を問い続ける

この仕事は、週に一度の頻度で行なうものであり、かれこれ1年以上続けているので、実はすでに手が覚えています。

それでもこのレシピを見ながら取り組んでいます。

そのほうがラクだからです。

レシピを見ずに、記憶に頼って作業をしていると、ときどき、

「これで合ってるよな?」

という不安がよぎることがあります。

不安を感じるのはうれしいことではないので、わずかではありますが、ストレスになります。

一方、レシピを見ながら手を動かすやり方であれば、

「うん、これで合ってる」

と確信を持ちながら作業を進めることができます。

ストレスフリーなのです。


「宣戦したときにもう敵を叩いている、というふうにせよ」

メッケルは続けます。

「宣戦布告のあとで軍隊を動員するような愚はするな」となれば、軍隊を動員し、準備をととのえきったところで宣戦し、同時攻撃をし、敵がねむっているあいだに叩き、あとは先手々々をとってゆく。要するにメッケルは、「宣戦したときにもう敵を叩いている、というふうにせよ」というのである。(第1巻 p.230)

一日の始まりの時点で既にその日のタスクリストが完成している(進撃が開始できる)ようにせよ、と解釈しました。

↓まさに以下の実践です。

朝一番に取りかかる順番を決めたら、可能な限りこの順番に沿って仕事を進めるのが最短ルートになる

毎朝、その日に予定しているタスクすべてに目を通し、取りかかる順番に並び替えるようにしています。このタスクリストに沿って、上から順に書かれているタスクを1つとして飛ばすことなく実行していくと、その結果は「その日に予定しているタスクすべてをその日のうちに終えるための最短ルート」になります。


まとめ

というわけで、小説としての楽しさにとどまらず、仕事にも地味に効いてくる滋味も加味した奥深い味わいが『坂の上の雲』にはあります。

まだまだ書き切れないところがありますので、続きはまた改めます。

↓松山城からの眺め


 

参考文献:

小説は、Kindle版が8巻セットで販売されてます。

NHKのスペシャルドラマは1話あたり90分×13話(トータル19.5時間)という大作です。ちょっと高めなので、レンタルがおすすめです。「旧作」扱いで安く借りられるはずです。

何と言っても、出演する俳優陣が最高です。よくぞここまでの役者を集めたものだと深く感服。