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「終わりの時間」を自分で決めると、そこでちゃんと終えられる



大橋悦夫24 TWENTY FOUR」という米国の人気ドラマがあります。

その名のとおり、24時間をリアルタイムに追っていくドラマで、出来事はすべて時間順に進行していきます。

通常のドラマや映画にありがちな、過去へのフラッシュバックや「それから半年後」のようなスキップがありません(唯一の例外として、現時点での最新シーズンであるシーズン9では「それから12時間後」というスキップがあります)。

テーマはテロリストとこれに対抗する政府機関との闘いなので、24時間きっかりでテロ事件を解決することになります。



24時間もあったら間延びしてしまうのではないか、と思いきや、次々と事件やトラブルが起こり、展開は非常にスピーディー。

1話あたり1時間分(放映時間としては45分)で、全24話から成るのですが、1話だけのつもりが、続きが気になるために、次々と観てしまいます。

タスク管理的にはとても悩ましいドラマです。

現在シーズン9まで制作されていますが、すべてのシーズンを最低2回以上観てきて、ついつい引き込まれてしまうその魅力の原点には何があるのかを考えてみました。

その結果、次の4つに整理できました。

「24」の魅力の原点

  • 1.「仕事」は常に例外なく「割り込み」で入ってくる
  • 2.どんなに完璧なスケジュールを立てていても「テロリスト」の衝動一つでひっくり返される
  • 3.割り込みに100%対応していれば良さそうだが、政府機関としての「通常業務」もあるため、その両立をめぐる“苦悶”が伝わってくる
  • 4.主人公(政府機関職員)はテロリストと闘いつつも、憲法と規約と業務手順の遵守を盾に保身一辺倒の上級管理職たちの妨害にも対処する必要がある

いずれも、日々厳しい仕事に直面しているビジネスパーソンとぴったり重なる構造がそこに見て取れます。

やりたいことがあるのに、やらねばならないことに時間と注意と体力を奪われ、いっこうに「世界の平和」ならぬ「自分の平和」が訪れないという苛立ちの構図です。

どのシーズンでも物語のスタートは一発の銃声やカークラッシュ、バスの爆発、といった日常への「割り込み」。

その割り込み対応からすべて始まり、その割り込みは次々と新たな割り込みを連鎖的に生み出しながら枝分かれして広がっていきます。

そのうちのいくつかは食い止められますが、その過程で生じた小さなほころびにより、思わぬ方向に事態が悪化したり、新たな火種につながったりします。

割り込みの連鎖は簡単には止めることはできないわけです。

枠いっぱいまで膨張する

とはいえ、「主犯」となる人物はどのシーズンにも存在し、彼の目指す最終ゴールへの導火線は物語の進行とともに一定のスピードで短くなっていきます。

逆にいえば、“爆発”するのは最後の最後であって、それ以前に爆発することは絶対にないわけです。

その意味では、もっと早い段階で事件が解決しても良かったところを、時間枠に合うように物語を引き延ばすことで、うまく帳尻を合わせている、と言えなくもありません。

結局のところ、「24」は「24時間」という“所要時間”を所与にしている以上、どんなにがんばっても24時間かかってしまうというパーキンソンの法則の支配下から抜け出せないわけです。

パーキンソンの法則とは、

「仕事の量は、完成のために与えられた時間の限界まで膨張する」

という法則。

つまり、このドラマの長さは24時間という枠いっぱいまで膨張するということです。

制作する側としても、これは難易度の高い制約といえます。

物語が一段落しても、時間枠が余っていればそれを埋めるべく“新しい事件を起こす”必要がありますし、逆に時間枠に収まらなくなれば、“いくつかの事件を未然に防ぐ”ことを余儀なくされるからです。

そんなこともあってか、現在の最新作であるシーズン9は24時間ではなく12時間とハーフサイズになっています。

「24」を観ていていつも思い出すのは、まさにこのパーキンソンの法則なのです。

パーキンソンの法則については、学生時代に読んだ『新・1日24時間をどう使うか』という本の解説がわかりやすかったです。

毎日の仕事を、スケジュールを組み、重要性の度合いを測り、上手にコーディネートすることができずに、仕事の量が多すぎるのだと勘違いしている人が多い。彼らはつまらぬ仕事を山ほど背負い込み、脇道にそれているのだが、自分のしていることがさほど大事でないことに気づかず、どうでもいいような問題ばかりに目を奪われ、毎日バタバタ暮らしている。

辛辣な書き方ではありますが、まさにその通り。この後に以下のような項目が続きます。

  • やるべきことをリストアップし、所要時間を決める
  • リストに優先順位をつける
  • リストアップしたすべての仕事について、いつやるかを決める
  • 色分けで一目でわかる予定表を作る
  • 一日の計画を立てる時間を設定する
  • 時間を配分し、見積もりは正しかったか検討する
  • スケジュールを絶えず検討する
  • 時間を分割し、その枠内で仕事を仕上げる

今回読み返してみて、タスクシュートという考え方はこの本に強く影響を受けていることを改めて感じました。



まとめ

僕自身、会社員時代は毎日深夜まで、時間にして15時間くらい会社で仕事をしていたために、気づかぬうちに仕事のスピードが「15時間続けられる」ペースになっていたことに思い至ります(当時はまだブラック企業という言葉はありませんでした…)。

つまり、知らず知らずのうちに毎日が「24 TWENTY FOUR」ならぬ「15 FIFTEEN」になっていたのです。

本当はもっと早い時間に仕事を終わらせることができたはずなのに、「いつもの時間」まで体をもたせるために、無意識のうちにスピードを緩めたり、余計な仕事を背負い込んだりしていたのかもしれません。

それが証拠に「今日は飲み会なので何としても18時に終わらせないといけない」となれば、不思議なことに、まるでサーモスタットが作動しているかのように、ちゃんと18時に仕事が終わっていました。

まずは「終わりの時間」を決めること、しかも、それが動かしがたいものにすることです。

個人的に最も効果的だと感じているのが「ノートPCのバッテリーが切れる前に仕事を終える」というチャレンジです。バッテリーの残量がわずかになると、当たり前ですが余計なことをいっさいやらなくなります。「これだけはやっておかないと!」という本当に必要なことだけに集中できるので、結果として仕事が進みます。

「つべこべ言わずにさっさとやれ」るようになるのです。