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仕事が進むような環境を整備してあげる

By: Bruce TurnerCC BY 2.0


佐々木正悟 「コンテクスト」という考え方があります。

買い物メモがいい例で、「スーパーへ行ったら、今日はこれを買う」というリストが自動的に用意されるように、ある環境に身を置いたらそこでするべきリストが自動的に上がってくるようにするものです。

私はスーパーに買い物に行くたびに思うのですが、仕事が買い物で、リストが買い物リストというほどシンプルであるなら、さぞ仕事というのは進むはずなのです。

スーパーではどんな人も、人それぞれのペースはあるものの、あまり脱線することもなく、粛々と各自の「仕事」を進めています。それは仕事を進めるに際して徹底的に配慮がなされており(その配慮をしているのは要するにお店の側なのですが)、状況が至ってシンプルだからなのです。

空間コンテクストの限界

しかし、仕事はまずあのように進めることはできません。理由は、空間をそのように整備することには限界があるからです(やたらと書斎作りに精を出しても、実際それが仕事場と化したときには、思ったよりぐちゃぐちゃになる人が多いのはそのためです)。

仕事を進める上で最も大切な「コンテクスト」は、仕事をしている「空間」「場所」ではないのです。ドキュメントの作成だったら、書斎でも、オフィスでも、ちょっと前にはやったようにカフェでもできます。

  • □ドキュメント作成@書斎
  • □ドキュメント作成@カフェ
  • □ドキュメント作成@オフィス

こういうリストを作るのはあまり意味がないでしょう。ドキュメント作成に気乗りしなければ、「ここでやるべきだよ!」「ここでやれるよ!」という通知を「うるさい!」と一蹴し、仕事を先送りにするものです。人とはそうしたものです。

「その場」に現れてこないコンテクストは「時間軸の因果関係」です。「なぜその時にドキュメントを作成すべきなのか」というコンテクストを思い出せないと、やる気になれないものです。

本当は「買い物」でも同じなのです。

スーパーに行って小松菜を買うのは「そこに小松菜があるから」「そこで小松菜が買えるから」ではありません。そんな事を言ったら、あるもの全部買わなければならなくなります。「小松菜を切らしている」という時間軸上のコンテクストを記憶しているから小松菜を買うはずです。

買い物は、時間軸上のコンテクストを思い出すのが容易です(それでも思い出しきれなかったり記憶違いがあるから、買うべきモノがリストに上がらなかったりします)。「食材」が「まだあるから買わない」「なくなったから買う」という数少ない行動しか選択できないからです。

しかし、仕事はそうではありません。

やるべきことの種類もプロセスもずっと複雑ですから、「今すべこと」を「どうして今すべきか?」を頭でまったく思い出せません。思い出せないから、たまたま思い出せたことを優先的にやってしまうわけです。なぜなら思い出せたことからやる気になれるからです。

タスクシュートのようなタスク管理ツールは「今すべきこと」の前に「今までしたこと」のリストがずらりと表示されます。これがコンテクストを形成しているわけです。「今カフェにいる」などといったことよりずっと大事なのが、「今までしてきたこと」です。

20141010103903

これはなにか仕事をする判断としても使いますし、なにか仕事をしない判断にも使えます。「今日はこれだけやっているから、もうドキュメント作成なんて無理だ」という判断にも使えるわけです。それもまたコンテクストです。

  • □ドキュメント作成@オフィス

これだけでは、その場でドキュメント作成がとてもできない理由がさっぱりわかりません。そうして「今日は何をやったかがわからないのに、どうしてこんなに疲れているんだろう?」ということになってしまいがちです。それでは進むことも退くこともできなくなります。

今に至るまでやったことと、今からやることと、今やっていることがわかる環境が、仕事を進めるに有利な環境です。擬似的に仕事を進めるためのスーパーのような空間を、リストで作り出すわけです。

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