一時期、サイト制作を生業としていたことがあった。
クライアント先に出向き、どんなサイトを作りたいかをヒアリングし、自分だけでできるようなら一人で制作し、そうでなければデザイナーやプログラマーとチームを組む。
どんなサイトであれクライアントとの最初のミーティングがすべて。ここできちんとヒアリングができれば、そして相手との信頼関係が築ければ、あとはたいていうまくいく。
ある日、知り合いから紹介されたクライアント先にミーティングに赴いた。多くを語らないクライアントで、質問一つひとつが鋭く、いつにも増して緊張した。
「どんなサイトを作ってもらえますか?」
「どんな形でも、ご要望に応じて…」
とにかく仕事を取りたかったので「できない」とは言いたくなかった。相手の要望を100%叶えることで信頼してもらえると思っていたし、これまでもそのスタンスだったので、今回もそのようなスタンスで臨んだ。
「何でもできるってのは何にもできないのと一緒ですよ」
即答できなかった。
あなたは何が得意なのか。もっと言えば、あなたならではの強みは何なのか。ありていに言えば、あなたに発注することのメリットは何なのか。
結果的にはこのクライアントから仕事はいただけなかったが、もっと大事なものをいただけた。
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お客様は潜在的に「何でも屋」には仕事を頼みたくない、という意識を持っています。
あなたが生命保険の見直しを考えているとしたら、「お金に関する相談なら何でもどうぞ」というファイナンシャル・プランナーより、「生命保険の見直し相談を専門に受けつけています」というファイナンシャル・プランナーに相談したいと思いませんか?
範囲を狭めることに抵抗を感じる人がいるかもしれませんが、特定の層に向かってアピールをしていけば、そのニーズを持っている人の胸に必ず響くのです。(p.187)