人前で話すのが苦手だった。
会社員時代に20人弱のクライアントを前にプレゼンをする機会が何度かあり、そのたびに「もうやりたくない」「逃げたい」と思いながらも仕事なので仕方なくやっていた。
テーマが「自分が話したいこと」ではなく「自社のサービスの紹介」だった、ということもあったかもしれない。
それ以上に、滑舌が悪いので聞きぐるしい自分の話し方を人に聞かれたくない、という気持ちも大きかった。
その後フリーランスになり、ブログを書き始め、ブログの続け方についてセミナーで話すという機会がやってきた。
依然として人前で話すのは苦手なままだったが、テーマは「自分が話したいこと」。
だから、プレゼン資料を工夫した。滑舌が悪くて聞き取れなくても聴衆はプレゼン資料を見ればわかるように、話す内容はすべてプレゼン資料に大きな文字で書いた。アドリブはいっさいなく、プレゼン資料を読み上げるだけのプレゼン。文字だけの紙芝居。
このプレゼンを何度か繰り返しているうちに、少しずつアドリブも交えながら話すことができるようになり、その後は原稿いっさいなしでも話せるようになった。
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「フォスベリーは跳躍に長けているわけではなかった。そのために、新しいスタイルを試みなければならなかった。その結果、次の問題にぶつかります ── お尻をバーから離すという問題ですね。そしてまたさまざまなことを試していったんです」
「またまた、そのとおり。ただこのことも見落とさないでくれ。人並みでしかない跳躍力は、フォスベリーの敵だった。その一方で友だちでもあった、ということをね。
次の話へ進む前に、ぜひとも触れておかなければならないことが一つある。フォスベリーは僕にこう言った。
新しいスタイルを編み出そうなんて、考えもしていなかったんですよ。ぼくはただ問題と ── 体のどの部分がバーにあたるのかという問題と向き合い、その問題を取り払うことに集中していただけなんです、とね。
大事なのはそこだ。論理だてて考えたりすれば、問題は必ず解決できるなんて、そんな印象をきみに持ってほしくないからね」(p.144)