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どう転んでも前に進める仕組みをこっそり作る

どんなに自分が好きで楽しいと思っている仕事であっても、必ず飽きがやってくる。

そして、飽きとともにやってくるのが現実逃避。現実逃避を防ぐことは困難であり、むしろ思う存分現実逃避をして、それに飽きさせる方が良策のように思える。

二つの現実逃避の表と裏を貼り合わせるイメージ

たとえば、どう転んでも前に進める仕組みとして、AとBという種類の異なる目標があるとき、Aの現実逃避がB、BのそれがAになるように仕込んでおけば、現実逃避のたびに自己嫌悪に陥ることがなくなるのではないか。

自分を追い込むことは、自分を傷つけるばかりで結果として何も進まないことが少なくない。少しずつでも前に進まねばならない、というプレッシャーが強すぎるとそれが自分を追いつめて現実逃避を呼び起こす原因になるのだ。

それゆえ「今はAのことは忘れていいのだ」という現実を自分に認識させ、伸び伸びとうしろめたさなしにBにのめり込めるようにする。

そして、Bに飽きた頃には、「よし」と元気になってAに心おきなく取り組めるようにする。

大事なことは「今はBに飽きるためにやっているのだ」という意識を芽生えさせることなく、こっそりとこの仕組みを作り上げてしまうこと。

そのためには、AとBだけでなく、AとC、あるいはBとCなど組み合わせを頻繁に変えて、飽きのプロセスが進行しないように心がける必要がある。

どう転んでも前に進める仕組みをこっそり作ることがポイント。

常に違うやり方を試し続けてみる

『脳はなにかと言い訳する』という本に以下のような指摘があった。

もっとも効率的に海馬の細胞を増やす方法は日々、勉学に励むことであろうが、それ以外にも、マンネリを避けて刺激ある日常生活を心がけることも効果的だという。

実際、ネズミの飼育箱に回り車やはしごなどの遊び道具を入れておくと、神経増殖が活発になることが明らかにされている。

その他、適度のランニング、食べ物を良く噛むこと、社交の場に積極的に出ること、ストレスを避けること、幼児の場合だったら母親の愛情をふんだんに受けることなどが、海馬神経の増加に有利に働くとされる。

グールド教授が2004年7月に報告した最新論文は面白い。社会の現場で優位な対人関係にいる者ほど神経細胞の増殖力が高まるというのだ。

海馬の健康を考えたら、上司の前ではペコペコとしながらも、内心はちょっと相手を見下しているくらいの自信を隠し持っているのがいいのかも知れない。


海馬というのは、脳の中にあって唯一神経細胞を増殖させる力を持つ部位であり、「記憶をコントロール」する役割を担っていることで知られている。

同書では、ロンドン市内の道を走るタクシー運転手の脳を調べたところ、ベテラン運転手ほど「海馬」が大きいという報告が紹介されている。市内に蜘蛛の巣のように巡らされた道を熟知し、日頃から走り続けているベテラン運転手ほど、神経細胞がよく増殖しているのだとか。

現実逃避に走りたくなっている状況というのは、新たな刺激が不足している状態と言える。

そこで、常に違うやり方を試し続けてみることで、飽きることなく、しかも海馬神経を増殖させるというおまけ付きで前に進めるようになるのではないかとー。

» 脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!? (新潮文庫)