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変化をとらえるセンサーを磨く

By: cdrussorussoCC BY 2.0


ずっと同じことを繰り返し続けていると、変化に敏感になる。

同じ時間に同じ場所で同じ行動をとっていると、「変わらない部分」と「変わる部分」がくっきりと分かれていることに気づく。「変わらない(と思っていた)部分」に変化が認められれば、それは「大きな変化」としてとららえられるようになる。言い換えれば、パターンを見抜くことができるようになる。

ずっと同じことを繰り返し続けていない人にとっては、ほとんどすべてが「変わる部分」のように映るので、その変化に気づくことはない。

すべての領域においてこのセンサーを発動させることはできないので、この「大きな変化」をとらえたければ、どこか一つの局面を決めて(ほかは捨てて)、飽きることなく集中することになる。

inspired by:

イギリス卓球界の「稲妻男」、デズモンド・ダグラスのことを思い出そう。

彼は対戦相手の動きのパターンをチャンキングすることで、ボールが打たれる前に予測できていた。またほかのスポーツにおけるトップ選手が、ほかの選手たちのやることをあらかじめ知ることができるという、通称タイムパラドックスについても思い出そう。そのおかげで彼らは、きわめて時間がかぎられているときでも、悠然とプレイできるのだ。

クラインはやがて、消防士もまたずばり同じ精神的なプロセスに頼っているのだということに気がついた。彼らは燃える建物に直面すると、ほとんど即座にそれを、長年の経験でつちかった、豊かで詳細かつ入念な理論的枠組みに当てはめられる。彼らは現場の視覚的な特性をチャンキングして、その複雑な力学を理解できるのだが、しばしばその理由を自分でも把握していない。消防隊はそれを「超能力」と呼んだ。ダグラスはそれを「第六感」と呼んだ。

床が陥没する前に部下に建物から退避させた消防隊長の頭のなかで、なにが起きていたかを考えてみると状況がわかってくる。

彼は火事の現場が地下室だとは思わなかった。建物に地下室があることさえ知らなかったからだ。でもすでに、豊富な経験にもとづいて、なぜ火が予想通りのふるまいを見せないのか不思議だとは思っていた。火事がずいぶん小さいのに、居間が妙に熱いし、あたりがあまりに静かすぎる。彼の予想は裏切られていたのだが、それがあまりに細かいために、隊長はその理由に意識的には気がついていなかったのだ。

あとから考えてようやく──そしてクラインと何時間も話をした結果として──できごとの帰結を組み立てることができた。放水で鎮火しなかったのは、出火場所が台所ではなく地下室だったからだ。居間が予想外に熱かったのは、火の手が足もと数メートルのところから上がっていたせいだ。そしてあたりがあまりに静かだったのは、床が緩んで音を吸収していたからだ。

このすべて──そして説明しがたいほど複雑な、かずかずの相互に結びついた変数──が、消防隊長の退却命令につながり、それが人命を救ったのだ。(p.50)


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