始まりは、会社員勤めをしていた1998年8月6日に必要に迫られて作った1枚のExcelシート
当時の僕には日々大量に押し寄せるタスクを納期に遅れることなくさばくための「システム」が必要でした。
会社のPCゆえに勝手にアプリケーションをインストールすることもできず、今のようにクラウドツールのようなものも皆無な中で、同僚たちの多くが線表(ガントチャート)や予算計画を作るために使っていたExcelを使って何とかするしかない──。
試行錯誤の末にたどりついたのが、抱えているタスクをExcelシートにリストアップしていき、それぞれのタスクごとにかかる時間をその隣に入力する、というシンプルな方法。
これに期限や優先度やプロジェクトなどの列も必要に応じて加えていき、Excelのフィルタや並び替え機能を駆使することで、
- いまやるべきタスクはどれか?
- とりかかる順番は?
- すべて終えるのに何時間かかる?
といった問いに答えてくれるシートに仕立て上げていきます。
特に最後の「すべて終えるのに何時間かかる?」という問いが重要で、これがわかることで「今日は22時には帰れそうだから洗濯ができるな」という見通しが得られます。
いつ帰れるかわからないことほどストレスなことはありません。残業が避けられないにしても、何時に退社できるのかがわかっていれば、がんばれるものです。
このあたりについては、佐々木正悟さんが次のように解説しています。ちょっと長くなりますが引用。
一般に「脳」が「やる気」を出すぞという気になるには、大前提として「やる気」を出した成果についての「見通し」がはっきりしているということがあります。この前提を満たして上で、「脳」は以下の目的を果たすために「やる気」を放出します。
- ストレス解消(の見通しがある)
- 承認欲求を満たす(の見通しがある)
- 自己状況改善(の見通しがある)
このなかで、とくに2と3の目的を果たすために「やる気」を出すとき、「やりがい」があると言います。たとえば2で言えば、仕事を立派に成し遂げて、それなりの人から承認してもらえるとき。3は、仕事をすることで、自分に必要な何かが満たされる場合。
1のストレス解消についても、「やりがい」はあるはずなのですが、私たちはそうは感じないようです。締め切りに追いまくられて、何とかしようともがいているとき、「脳」は明らかに「やる気」を出すべき時だと感じていて、実際「ストレスを解消する」という見通しに立って、「やる気」を放出しているのです。
これは「やりがい」のある仕事をするために「やる気」を出すメカニズムと同じなのですが、それでも締め切りに間に合わせることを「やりがいがある」とはあまり言いません。
つまり「やりがい」とは、「脳」が貴重で有限な「やる気」を放出するための、「ストレス解消」以外のもっともな理由、ということになります。
この理屈を僕が知ったのは21世紀に入ってからですが、20世紀の僕にはただがむしゃらに「何時に帰れるのかが知りたい」という一心でした。
こうして、先のExcelシートに「終了予定時刻」がリアルタイムに表示されるようになりました。
その後、Excelのマクロ言語・VBAを勉強しながら機能を追加し、いつしかタスク管理ツールとして手放せないものになっていました。
6年前に以下の記事で公開したのをきっかけに少しずつ使ってくださる人が増え、
その後も愛用してくださったり、紹介してくださる方が現れ、
by @jmatsuzaki
もう手放せない!最高峰のタスク管理ツール「TaskChute」の使用感 | jMatsuzaki
エヴァンジェリストを買って出てくださる方まで登場し、
by @Surf_Fish
TaskChute初心者のための参考記事まとめ – NAVER まとめ
さらには、イラストを描いてくださる方ともご縁をいただき、
by @sawonya
今日を迎えることができました。
WindowsのExcel2000以上でしか動かない(VMWareを使えばMacでも動きます)、とっつきにくい、きわめて地味なツールではありますが、14年前の僕と同じように大量のタスクを抱えて、日々先送りや現実逃避の誘惑と闘っている人に、ぜひお使いいただけたら、と思っています。