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Evernoteでブログのネタ管理

倉下忠憲
以前のエントリーの中で佐々木正悟さんが、次のように書かれていました。

以前から気になっていることがあります。ネタをEvernoteに集め、それを「熟成」させてブログにアウトプットする、というやり方です。

もちろんそれも一つの立派な方法だとは思うのですが、どうもこの方法ばかりが強調されているのです。しかしブログを連日更新されている方々にしても、本当にそんなやり方をしているのかが疑問なのです。

私も、ブログを連日更新していますし、そのネタ管理はEvernoteで行っています。今回は、その私なりの「やり方」について紹介してみます。

ネタ帳のスタート

ブログネタのスタートは「~~について書こう」と思う気持ちです。これがなければ文章を書き始めることすら困難でしょう。

最終的にそう思う気持ちは共通でも、それを浮かび上がらせる触媒はさまざまです。他の人のブログを読んでいるときであったり、別の文章を書いているときであったり、読書中、散歩中、あるいはモレスキンなんかにいろいろ書き綴っているときかもしれません。

どのようなタイミングでも、何かについて書こうと思ったその気持ちを即座にメモする必要があります。状況はさまざまですが、Evernoteであれば、異なったメモスタイルも一元管理可能です。

他の人のブログであれば、それをクリップします。その瞬間に、書くテーマやタイトルが思い浮かんでいるならばクリップとは別にメモも残しておきます。パソコン上からでも、即座にEvernoteにメモを送る手段はいろいろあります。

※例えば、Macならば「Mac中にEvernoteにメモを送るためだけのアプリ『goEvernote』(仮)」とか。

移動中や読書中ならばiPhoneを活用することもできます。

なんであれ、「~~について書こう」と思いたった気持ちを想起する手がかりをEvernote上に残しておきます。これがネタ帳への第一歩です。

一週間フォルダ

43Foldersというのがあります。1~12月までの月フォルダと、1~31日までの日付フォルダ。これらを使うことで、特定の日付専用のフォルダを作ることができます。言い換えれば、未来の自分に向けた、特定の日付用の受信箱を作ることと言えるかもしれません。

※参照「未来の自分にメモを送るタイムマシン、Tickler File の応用

この43Foldersとはやや違ったアプローチですが、私のEvernoteには「一週間フォルダ」的なノートブックがあります。その日から一週間後までに自分が使いそうなノートが「とりあえず」放り込まれるノートブックです。自分が何かでネタを探す場合は、まずこのノートブックにアクセスするわけです。

上で作成されたノートは、ここに移動されます。ブログのネタだけではなく、メルマガのネタや、今日の一言など、思いついたことのなかで、短期で消化されそうなものは全てここに移動します。

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ここに入ってくるネタは、全て「使い方がはっきりしているもの」です。なんとなく思いついたけど、どう使うのかわからない、というアイデアは別のノートブックに移動されます。

リスト化

上のノートブックの中身は、ジワジワと増えてきます。

一週間分のネタがストックされたからもういいか、というのではなく、とりあえず「~~について書こう」と思いついたものはなんでも放り込んでいくので、上限はありません。また、「これはブログのエントリーになるだろうか」といった判断も加えません。「とにもかくにもメモする」方式です。なので、数は増加する一方です。

増えたらそれだけネタ不足に困らなくなる、とは限りません。あまり数が多すぎると、「さて、どれを書こうか」と迷いを生む原因にもなります。また、最初は書く気持ちが強かったけれども、時間が経ってみるとそうでもない、というものもあります。あるいは書きたいけれども、材料不足や思考不足で今すぐには書けないと気がつくものもあります。

これらがすべてごっちゃになっているのは、あまり喜ばしいことではありません。そのため、このノートブックは一定期間でレビューします。ノートを見返していって、「今すぐは処理しないな」と感じたものは、別のノートに転記します。

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頭にはチェックボックスを付けて、エントリーのタイトルや要約を書き付けておきます。最近追加されたノートリンクの機能を使えば、参考資料やウェブクリップへのアクセスを残しておくこともできるでしょう。

さいごに

短期で使う用のノートブックと、それをフィルターしたノート。この二つが私のブログ用のネタ帳です。「ブログ用の」とわざわざ書いているのは、別のネタ帳もあるからですが、その辺は割愛します。

基本的に短期用のノートブックでほとんどの更新が事足りますが、たまにネタノートを見返して、「あっ、そうだこれについて書いてみよう」と思いつくこともあります。3ヶ月ほど前の自分と対話しているような不思議な感覚ですが、これもなかなか面白いものです。

どのようなやり方にせよ、長期間にわたって定期的にコンテンツを更新していく場合には、「ネタ帳」は欠かせない存在だと思います。それらはメモ帳の使い方と同様、「なんであれすぐメモし」「それを見返して使う」という二つの要点を守ることが肝要です。

▼関連エントリー:

シゴタノ! —    BT002:アウトプットしないならインプットもしない
R-style » Mac中にEvernoteにメモを送るためだけのアプリ『goEvernote』(仮)
未来の自分にメモを送るタイムマシン、Tickler File の応用 | Lifehacking.jp

▼今週の一冊:

タイトルを見ただけでは、内容がいまいち掴みきれませんが、サブタイトルの「達人プログラマーの思考法と学習法」を見れば、この本の方向性はおおまかに掴めます。

『リファクタリング・ウェットウェア』__頭脳の再設計と再配線__は、どうやって考え、どうやって学べば良いのかについて多くの示唆を与えてくれます。

人が成長するに従って、周囲の環境や状況が変わっていき、自分の持つ習慣や手法も変えていかなくてはなりません。人生、変わらないものなどひとつとしてないのです。流されるのは死んだ魚だけ、と言うではありませんか。

これはとても重要な指摘です。初心者にとっての「学び」と達人にとっての「学び」が同一の形をしているとは限りません。むしろ、そうであったのなら、悲劇的なことだと言えるでしょう。達人の学びは初心者にとっては意味不明で、初心者にとっての学びは達人からすればイライラを伴うでしょう。もちろん、両者の中間の学びは、帯に短したすきに長し、といった具合です。

画一的な手法だけですべてうまくいくほど、世界は停滞していません。均一的な手法だけで学びがまかなえるほど、個人の多様性は小さくありません。

本書では、脳の二つのモード(RとL)の両方を使った学習法や思考法が紹介されています。その部分も面白いのですが、「ドレイファイスモデル」という5つの段階に分けて、人の置かれている状況を分けてみる、という考え方は、さまざまな分野で適応できる重要なものだと思います。

達人には達人の学びがあるし、初心者には初心者の学び方がある。そう考えるようになると、いろいろなすれ違いというのが解消されるのではないでしょうか。


▼編集後記:
倉下忠憲



今までの執筆はごくノーマルなエディタでやってきたのですが、最近高機能なエディタにも興味が出てきています。いろいろ試してみて、たどり着く結論は、「理想のエディタは自作するしかない」というもの。

いろいろ好みの機能が付いたエディタはあるのですが、いまいち「これだ!」という感じのものがみつかりません。とりあえず、Evernoteと連携するエディタがほしい所です。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。