集中して取り組んでいた原稿が一段落つくと、張り詰めていた気持ちがゆっくりと和らいでいくような感覚が生まれます。
すると、少しずついろいろなことが「気になって」きます。
私は普段思いついたことはすぐにEvernoteにメモしているのですが、原稿に集中して取り組んでいるときは、そもそもとして、その「思いつく」ことが少なくなります。きっと無意識下で抑制が行われているでしょう。しかし、ひとたび原稿に終わりが見えてくるとその抑制が弱まり、溜め込んでいたものが沸騰し始めます。
そうしたとき、その気持ちを放置しておくことはできません。「気になる」ことは、気になるからです。そこで何かしらの対処が必要なのですが、精神論はそこでは無意味です。「気になること」を「気にしないようにする」ことは(定義から言って)できないからです。
よって、実際的・具体的な行動が必要となってきます。
で、そうしたときに私が行っているのが、「書き出す」ことです。それも複数のプロセスにまたがった書き出しです。
まずは大学ノート
最初に取り出すのは、ノートです。ごく普通のノートで構いません。というか、ごく普通のノートが望ましいのです。「いくらでも自由に書いていい」「書き損じも気にならない」あたりの気楽な(あるいは気安い)感じでつきあえるノートがこの用途にはベストです。
そこに「気になること」を書き出していきます。ここはざざっとで構いません。箇条書きではないけれども、詳しく掘り下げるほどでもない、あたりの感覚で進めます。
一通り書き終えたら、もう少し掘り下げたいと感じるものが出てくるかもしれません。書き出しが物足りないと感じるようなものです。そうした要素については、改めて別にページを立て、そこに詳細を書き綴っていきます。ここでは1テーマ、1見開きぐらいの感覚でいきます。もちろん、1テーマで複数の見開きを使うことももちろんありです。
これが終わると、随分と心がスッキリしたような感覚が得られるでしょう。吐き出した、という感覚です。が、実際は、スッキリしただけで、具体的にはあまり変化はありません。
そこで次のステップに進みます。
WorkFlowy
次に使うのは、WorkFlowy。アウトライナーならなんでも構わないのですが、最近はこのWorkFlowyをよく使っています。
そこに「気になること」のトピックを新しく立て、先ほど書き出した「気になること」をその下に並べていきます。
ノートに書き出したときは、それぞれの要素は無造作に並んでいましたが、WorkFlowyに改めて書き出してみると、その構造が少しずつ見えてきます。「やるべきこと」をプロジェクトに変換することもできますし、別の項目にあったものを一つにまとめるようなこともできます。
編集・並び替えが可能なアウトライナーは、「気になること」を組織化(構造化)するのに最適なツールです。
もちろん、大学ノートを使わず、最初からアウトライナーに書き出す手もあるでしょう。私の場合は、一度紙を経由した方が、より頭がスッキリするという経験則に基づいてこの手法を使っていますが、それぞれの人によって最適は違うはずです。
そしてEvernoteへ
こうやって「気になること」に構造を与えたらそれで終わりかというと、もちろんそうではありません。
もしそこに「やるべきこと」が含まれているのなら、それをタスク管理ツールなり手帳に書き込む必要があるでしょう。でないと、「気になること」は「気になること」のまま永遠に留まります。「気になること」を実行に移すために、情報の変換が必要なのです。
私の場合は、行動情報の管理もEvernoteで行っているので、WorkFlowyに書き出したことをベースにして、改めてEvernoteにノートを作ります。タスクとそうでないもの(参考情報など)を分け、タスクにはチェックボックスを付けます。
直近で行動しないようなものは、「いつかやることリスト」に加えます。
そのようにして「適切な場所」に割り振ることを終えて、ようやく「気になること」は別の形へと__つまり「気になること」ではなくなくなっていくわけです。
逆に言えば、それを行わない限り、「気になること」は「気になること」のままで留まり続けます。
さいごに
「気になること」の書き出しは、たしかに効果的ですが、それだけではまだワンステップでしかありません。
全体を見通したり、より詳細な要素を掘り出したりする作業が必要です。俯瞰・構造化・詳細化。そうしたステップを踏むわけです。さらにそうしたものを、適切な場所に配置して、ようやく心のざわざわは収まって(納まって)いきます。
もちろん言うまでもありませんが、以上のようなことはGTDの基本を応用したにすぎません。逆に言えば、どういうやり方やツールを使うにせよ、基本は同じということです。
だからこそ、「基本」なわけですが。
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新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。
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