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「プロジェクト」・「読書」についてのノート術/ノート術企画第五回

倉下忠憲
前回まではノートの使い方の全体像についてみてきました。ノートの大きさや組み合わせは無数に存在するが、最終的にはそれぞれの環境の中で適切な解を見つけていく必要がある、というのが一応のまとめと言えると思います。

今回からは、具体的にノートに何を書いていくのか、について考えてみたいと思います。

まずは、一般的にノート術で紹介されている基本的な使い方から見ていくことにしましょう。

今回取り上げるのは、「プロジェクトについて」「読書について」の二つのノート術です。


プロジェクトについて

一日程度で終わる仕事ならばともかく、中長期で動かしていくプロジェクトに関してはさまざまな情報やデータが存在するはずです。それを頭の中だけで管理するのは無理があるでしょう。長い期間やたくさんの情報を保管しておく場所として脳はかなり心許ないものです。

そういった情報は「ノート」に書き出してまとめておくことです。単純なメリットとしては、

  • 記憶違い・忘れるなど、情報の紛失から逃れる
  • 書き出してみることで漏れや無駄をチェックできる

というものがあります。

また情報を残しておくことで、将来似たようなプロジェクトを動かす際の参考資料として使うことができるようになります。

実際の書き方としては次の二つのような例が考えられます。

PDCAノート

これは『「結果を出す人」はノートに何を書いているのか』で紹介されているノート術です。見開きのページの中央に区切り線を入れてページを4分割します。それぞれのスペースにプロジェクトのPDCAの流れを記入していくというやり方です。

PDCAとは

  • Plan(計画)
  • Do(実施・実行)
  • Check(点検・評価)
  • Act(処置・改善)

の頭文字です。これらの4つの要素を見開きのページに記入していくことで、要点をまとめながら全体を一望できる状態を作り出すわけです。
※PDCAサイクルの詳細については「PDCAサイクル」あたりを参照ください。

ちなみに、この見開きのページを4分割して使う方法は『モレスキン「伝説のノート」活用術』でも「ABCD分割法」(p89)として紹介されています。ノート術としては汎用性の高いものですので、他にも応用することができるでしょう。

プロジェクトノート

PDCA以外の形式でもプロジェクトについてまとめる事ができます。

その際記入すべきことは、

  • プロジェクトの概要
  • 全タスク
  • スケジュール
  • 参照情報
  • アイデア
  • 関係する人(連絡リスト)

といったものがあるでしょう。

こういったデータを全て一元管理するのはアナログのノートでは若干手間がかかり過ぎるかもしれません。GmailやEvernoteなどを使ってデジタルの形で情報を集約していく形を作るのが効果的でしょう。

プロジェクトが終わった場合は、作業記録や反省などの記録も「プロジェクトノート」の内容に加えておくのがポイントです。

読書について

読書の内容を活用するためのノート術は私が知る限りでもかなりの数があります。それぐらい読書のやり方というのが「個人的」なものである、ということでしょう。

プロジェクトの管理と同じで、読書の履歴も頭の中で管理するには無理があります。読書についての記録を残しておけば、読んだ本を直接読み返すことなく「読書体験」を想起させることができるので便利です。

今回は簡単に3つ紹介しておきます。

読書記録

もっとも一般的なものがこれでしょう。読書記録、あるいは読書履歴といったものです。ノートに記入する項目としては、

  • 書名
  • 著者名
  • 価格
  • 購入した日
  • 購入した経緯
  • 読了した日
  • 読了後の感想
  • 印象的な文章

あたりが考えられます。もちろんこれ以外の要素を記入しても問題ありません。

独自のフォーマットが準備されているモレスキンのブックジャーナルを使うこともできますし、普通のノートに線を引いて独自の形式を作ることもできるでしょう。そういうのが面倒ならばエクセルなどでフォーマットを作って、それを印刷して使うこともできそうです。それすらも面倒ならば「MediaMarker」や「ブクログ」というWebサービスを使うことでも読書記録を残すことができます。

この手の読書履歴は書いた直後にはあまりおもしろみは感じられません。しかし、三ヶ月ぐらい後でこの「読書履歴」を見返すと、読んだ本の内容や読んだ事実すらすっかり失念してしまっている事に気がつかされます。読書好きな方で読書記録を残していないという方は一度つけてみると面白い発見ができるかもしれません。

レバレッジ・メモ

この連載でも何度も紹介している「レバレッジ・メモ」。詳細は割愛しますが、一冊の本から重要な部分を写して自分なりの「濃縮本」を作るというスタイルです。

できるだけ日常的に持ち歩くノート類に書くのがよいでしょう。スマートフォンをお持ちならば「デジタルorクラウド」で保存するのが効率的かもしれません。

ねぎま式読書ノート

これは『読書は1冊のノートにまとめなさい』で紹介されている方式です。

まず最低限の情報として書誌データを書きます。書誌データとは「タイトル・著者・出版社」の3つです。最低限その本を特定できる情報ということですね。

その後に

  • 自分にとっての重要な内容(引用)
  • その本で発生した自分の考え(感想)

を交互に記入していくやり方が「ねぎま式」の特徴です。引用部分、それについての感想、引用部分、それについての感想という形でノートを書き進めていくわけですね。

この形式の特徴は、自分にとって興味ある(面白いと感じる)本に関しては分量の多い読書ノートができあがり、大して意味のないノートに関してはほとんど記入されないという点です。

面白くない本に関しては大して手間が発生しない、というのは読書ノートを継続していくためには大切な事の一つだと思います。

さいごに

情報を残しておく事は、将来の自分に対しての投資活動と考えることもできます。ノートをつけることのメリットの大部分はそこに集中していると思います。

しかしながら、どれほど「立派な思い」があったとしても継続させられなければ意味はありません。最終的な目的に合わせて最適の形を構築する必要があります。これはノート術だけではなくて、情報整理・情報管理に関して一般的に言えることでしょう。

次回は「アイデア」についての使い方について紹介したいと思います。

 

▼参考文献:

ノートに関するトピックスが一杯詰まった本です。

モレスキンへの愛が詰まった一冊ですが、全般的な手帳術やノート術として活用できるトピックスが盛りだくさんです。

すべてを一冊のノートに詰め込むための『情報は1冊のノートにまとめなさい』の読書編。「読書」の流れすべてをフォローするノートの使い方が紹介されています。ちなみに、11月後半に次作が発売されるようです。これも楽しみな一冊です。

頑丈なモレスキンならば、あなたの「読書人生」をしっかりと保存してくれるでしょう。1冊1ページで感想や書籍情報が書き込めます。

▼今週の一冊:

日本を覆っている閉塞感とは一体なんなのか。日本の希望はどこに行ったのか。そもそも希望とはなんなのか。希望は作り出せるものなのか。作り出せるとすれば、どのような方法を用いればよいのか。

希望学の玄田有史氏が送る『希望のつくり方』は、現代における希望の捉え方を根本から考え直すための材料を提供してくれる一冊です。若者向けに書かれていますが、20~30代の方でも十分に役立つ本ではないかと思います。

「かつて、希望は前提だった」

書き出しのこの一行が、この国の現状を正確に表現しているのではないかと思います。現代では希望は自らの手でつくりだしていくべきものなのでしょう。


▼編集後記:
倉下忠憲
北さんも編集後記で紹介されていましたが、11月27日に「iPhoneに振り回されないiPhone活用術セミナー@大阪」ですこしお話させていただくことになりました。関西圏でご興味のある方はチェックしてみてください。

 
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。