今回は057から060を。個別のノート術を紹介する4冊です。
- 『東大合格生のノートはかならず美しい』(2008)
- 『マインドマップ超入門』 (2008)
- 『3本線ノート術』(2009)
- 『新版 図解 仕事ができる人のノート術―アイデアマラソンが仕事も人生も豊かにする』(2011)
『東大合格生のノートはかならず美しい』
いわゆる授業ノート・講義ノートに関するノート術です。
ビジネス実務では「ノートをきれいに書く必要などない。自分がわかればいいのだ」という割り切りが多いですが、一方でプレゼンテーションのスライドはきれいに作ることが推奨されるでしょう。もし講義ノートを「自分にプレゼンテーションするための道具」だと捉えるならば、それをきれいに仕上げる意義が見えてきます。ようは、何度もそれを見返して、頭にたたき込むためには、整っていないよりも、整っていた方がよいのです。
ただそれ以上に、ノートを「きれい」にとるためには、情報の構造を適切に理解しておく必要があります。でなければ、配置などが決められません。つまり、ノートが「きれい」に書けるということは、情報について一定の理解があることの証左でもあるわけです。
だから、はじめからノートが「きれい」に書けることはないでしょう。むしろノートに「きれい」に書く気持ちで情報に臨み、頭を働かせながら耳を澄ますことで、はじめてそれが可能になるのです。
受動的にただ見た目を整えることではなく、能動的に情報を理解しようとする姿勢。それが効果的でもある「きれいな」ノートを取るために必要なのもだと言えます。
『マインドマップ超入門』
「マインドマップ」というノート術を紹介する本です。タイトルの通り初心者向けの本ですが、内容は十分です。
ノートと聞いて講義ノートをイメージする人には、マインドマップの書き方はあまりにも「ノート」からかけ離れているように思えますが、これも立派なノートの書き方です。はじめから整理されていることをまとめるというよりは、自分の頭の中にあるものを芋づる式に書き出していく用途として抜群の効果を発揮してくれます。
「マインドマップ」という手法には正式なやり方が決まっているのですが、それに100%従わなくても「まず中心にテーマを書き、そこから放射状に書き広げていく」というやり方はたしかに効果があります。イラストやカラーペンを使わなくても、普段とは違うノートの書き方をしてみるだけで、脳の動き方が変わってくるのがわかるでしょう。
このように一口にノートといっても、その内実はなかなか奥深いものになっています。
『3本線ノート術』
タイトル通りノートに三本の線をあらかじめ書き入れて使う、というノート術を紹介する一冊です。コーネル式ノートと呼ばれる方法と類似の手法と言えるでしょう。
この手法はノートという均一的な領域を複数の領域に分割し、それぞれの領域に役割を割り当てるノート術だと言えます。たいていの講義ノートは黒板の写しであり、黒板は面いっぱいを均一に使うので、必然的にノートの「空間的」な使い方も均一になってしまいがちですが、それを変えるのがこのノート術です。
簡単に言えば、補足的な情報・発展的な情報・後から追記される情報、といったものを書き込む領域をあらかじめ作っておくわけです。ノートに慣れた人ならば、自然にそうした「余白」を設けながらノートを書いている場合も多いでしょう。
こうした「先に線を引いて、領域を作っておくノート術」の最大のポイントは、その領域の存在そのものが記入のリマインダーとなることです。つまり、補足的な情報を書き込むための領域を設けたら、その領域が空白であることを目にした私は「そうだ、何か追加的な情報を書こう」と思い出せるわけです。言い換えれば「記入のための場所がすでに確保されていること」それ自体に、行動を促す効果が期待できるのです。
最近ではすでにそうした線が引かれたノートなども販売されていますので、自分で線を引くのが面倒な人はそうしたノートを使ってみるのもアリでしょう。
『新版 図解 仕事ができる人のノート術―アイデアマラソンが仕事も人生も豊かにする』
本書の内容の半分くらいは「議事録とかを取っておくと、仕事に有利だよ」という話で、たしかにそれは納得なのですが、それはさておき「アイデアマラソン」というノート術はとても大切です。簡単に言えば「書くこと、考えること、発想すること」のトレーニングとしてのノート術です。
以下のサイトからもその内容は確認できます。
簡単に言えば、ノートをいつでも持ち歩き、そこに最低一日一つは「発想」を書いていくことを自分に課す、というノート術です。知的筋トレな趣がありますね。
アイデアマラソンでは、当然「アイデア」が対象となりますが、広く捉えれば、人間観察でもスケッチでもイラストでもライムでも歌でも何でも対象にできます。毎日そのことに関して最低一つは何かを書く、という課題を自分に課すわけです。
はっきり言ってちょっとバカバカしいように思えるでしょう。そんなことを毎日続けたってどうなるんだ、という疑問が思い浮かぶと思います。それを修辞疑問にせず、真なる問いとして、つまり「毎日続けたらどうなるんだろうか?」という好奇心を持って一度やってみてください。半年後くらいには、確実に頭の使い方が変わっていると思います。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中。