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デジタルノートとしてのアウトライナー4


倉下忠憲前回は、アウトライナーでは複数の情報が扱え、それらを越境させられることを確認しました。何かしらの使い方があるとしても、いつでもそれを逸脱できるのがアウトライナーの魅力です。

ここで、アウトライナーの特徴について復習しておきましょう。

まず、基本となるのはデジタルツールとしての能力です。テキストを入力でき、それを自由に再編集できる機能は、あらゆるデジタルツールに備わっている機能で、当然アウトライナーにも備わっています。

テキストの入力、コピー、カットアンドペースト、エトセトラ。こうした機能は、アナログノートとはまた違った情報環境を与えてくれます。気軽に書きはじめ、手軽に後から編集できるのです。これが一階部分と考えてよいでしょう。

アウトライナーとしての機能

次いで、アウトライナーは以下のような機能を持ちます。

  • 情報を階層的に表現できる
  • 階層ごとに情報を開閉できる
  • 階層単位で情報を移動できる
  • 単一の階層だけを表示できる

まず「情報を階層的に表現できる」が、アウトライナーという名称の基盤を支えています。階層的に表現された情報が「アウトライン」と呼ばれるからです。

ちなみに、普通のテキストエディタでも空白スペースなどを使うことで、疑似的に情報をアウトライン的に表示できますが、そうして表示されたものは見た目として階層が作られているだけで、実際はバラバラの部品と代わりありません。どういうことかと言えば、同一階層に対して「操作」ができないのです。

逆に言えば、アウトライナーでは同一階層に対して「操作」ができます。たとえば、「階層ごとに情報を開閉できる」のです。その時点で不要な(目に入れたくない)情報を閉じておき、必要になったら開く、という使い方ができます。これはごく普通のテキストエディタではなかなか難しいことです。

また、同一階層を一つのブロックのように扱い、それを別の場所に移動するといったことも可能です。テキストエディタだとその部分をすべて選択し、コピーなどの操作をして移動させなければならないものを、一つの項目を移動させるだけで実現できるのです。

もちろん、アウトライナーであってもコピー&ペーストして項目を動かすことはできます。それはデジタルツールの基礎機能なのだから当然です。その基礎の上に、「階層単位での簡便な移動」機能が備えられているのがアウトライナーです。

最後の「単一の階層だけを表示できる」は、一部のアウトライナーには備わっていないものもありますが、現代的なアウトライナーであればだいたい実装されている機能です。特定項目だけを表示してくれるので、一時的に階層構造のことを「忘れる」ことができます。

上記のような機能群が、「アウトライナー」と呼ばれるツールに備わっている機能、つまり二階部分の機能です。

二階と三階

その二階の上に、実際のツールが個別に持つ機能として三階が想定できます。でもって、現代では「アウトライナー」とカテゴライズされるツールであっても、個別の機能がかなりバラエティーに富んでいます。たとえば、WorkFlowyとDynalistはモダンなアウトライナーの代表例ですが、この二つは「少し違う」のではなく「だいぶ違い」ます。阪神と巨人くらい違うのではなく、阪神とFC東京くらい違います。

むしろ、そこまで違っていても「アウトライナーである」という共通点だけは持っている、とすら言えるかもしれません。

ともかくそうした個別の機能の話になると、それは「アウトライナー」についてではなく「そのツール」の話の領域になります。なにせAというツールでできても、Bというツールではできないかもしれません。この辺が、「アウトライナー」について語ることの難しさになっています。

ツールを渡り歩く

どちらにせよ、私たちは「アウトライナー」という概念的な(非存在的な)ものを直接扱うことはありません。私たちが扱うのは、いつでも具体的な目の前にあるツールです。だから、一〜三階までがセットになったものを一緒くたにして受け取ることになります。もちろん、どれが一階や二階なのかがわかるはずもありません。それがわかるのは、他のツールを使ったときだけです。

だからこそ、「アウトライナー」については複数のツールを一度試してみるのをお勧めします。それらの骨子はよく似ていても、実際に使ってみればかなり異なるツールであることがわかるでしょう。そういう理解の積み重ねが、ツールとうまく付き合っていく助けになります。

情報収集ももちろん役立ちますが、しかし汎用的に語られる話題であれば、どうしてもそれは「アウトライナー」レベルの話にならざるを得ません。そうした骨子の理解は無論大切ですが、一方で三階レベルの理解も必要です。最終的にどんなツールを使うのかの決め手になるのがその部分だからです。

だからまあ、まずは何かしらのツールから具体的に使いはじめましょう。日常的に「考えている」ことをそこにいれていくと、きっと「アウトライナー」の良さが体感されると思います。本格的なツール選びはそこからでも大丈夫です。

デジタルノートテイキング連載一覧

▼編集後記:
倉下忠憲




9月がもう、終わろうとしています……。
原稿は、まあ、それなりに……。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中