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デジタルノートでタスクはどう扱えるか



倉下忠憲デジタルノートにおけるタスクのハンドリングについてみていきましょう。

まずは、基本操作から確認します。

ちなみに、本稿におけるデジタルノートは広い意味になっています。通常のノートツールだけでなく、他のデジタルツールも含めての検討です。

タスク管理ツール

タスク管理ツールにおけるタスクは、いわば基本要素です。


(*Todoist)

タスク一つが要素となり独立的に操作できます。また、多くのツールでワンクリックでタスクを「達成」扱いにできます。これが基本中の基本です。

アウトライナー

アウトライナーにおけるタスクは、トピックを「タスクとして扱う」ことで操作できます。タスク管理ツールでは、そもそも生成されるオブジェクトが「タスク」として構成されるのに対し、アウトライナーでは汎用的なトピックを作り、それを(他とは異なる)タスクなるものである、と認識することでタスクとして扱えるようになります。

一部のアウトライナーでは、その「他とは違う」ことを明示するためにチェックボックスを行頭に挿入できるものもあります。もちろん、このチェックボックスはクリックで「達成」扱いにできます。つまり、こういう使い方をするならば、タスク管理ツールとまったく同じになりますが、こういう使い方をしなければならないわけではありません。

たとえば、自分で行頭に「○」を書き込んでいき、それが達成できたら「●」に書き換えるということで、進捗を管理することも可能です。もちろん、記号は何でもよいのですから、アレンジはいくらでも可能と言えるでしょう。

リッチテキストノート

リッチテキストノートでは、ノートの記述の一部として「タスク」を入れ込むことができます。

アウトライナーと同じように、準備されたタスク機能を使うこともできますし、記号などを自分で入力して「これはタスクである」と示すこともできます。また、絵文字なども活躍してくれるでしょう。

その意味で、アウトライナーと似ていますが、アウトライナーがタスクにまつわる情報を手軽に構造化できるのに対し、リッチテキストノートでは画像などを配置したり、表組みなどを使うことで二次元的に情報を整理したりが可能です。情報の「組成の手つき」がそれぞれで異なるわけです。

プレーンテキスト

ここまでを見てみると、「タスク」を扱うからといってチェックボックス機能が必須というわけではないことがわかります。自分で記号をつけることで、終了(/未終了)の状態は管理できるのです。だから、何の装飾機能のないプレーンテキスト(あるいはマークダウン)でも、「タスク」を扱うことは可能です。

というか、デジタルノート、つまりパソコンの黎明期には専用のタスク管理ツールなどは存在せず、何らかの「工夫」によってタスク的な情報を扱ってきた歴史があるわけで、このやり方は非常に「原始的」だと言えるでしょう。よって、最近デジタルツールを使いはじめた人には、新鮮に映る反面、面倒そうにも感じられるでしょう。自分で記号をつけるなんて、と。

でも、そこで立ち止まらずにもう少しだけ考えてみましょう。そうした面倒そうに思える行為には、何か付加的な価値があるのかもしれません。

表現が増える

自分で記号をつけるやり方をすると、表現方法が増えます。たとえば、以下の画像をご覧ください。

書き込んだ「タスク」が無事終了した場合は、「x」を記入することでタスクの達成が表現できます。しかし、「無事終了した」とは言えない場合もあるのではないでしょうか。そして、その「場合」のバリエーションはかなり多いのではないでしょうか。

  • やろうと思っていたけども、まったくできなかった
  • やろうと思っていたけども、ちょっとだけしかできなかった
  • やろうと思っていたけども、まあいいかと思い直した

上記以外にもさまざまなバリエーションがあるでしょう。これをon/offの二状態だけで表現するのは困難です。

たとえばそのための工夫として、チェックボックスを二つ使うというノーティングの技法があります。まず開始したらチェックボックスを一つチェックし、終わったらもう一つのチェックボックスもチェックする。これで「開始と終了」の二つのパラメータが扱えるようになります。

他にも「やろうと思ったけども、まあいいか」と思ったタスクを削除するのではなく、[-]マークにしておくことで、「やろうと思ったけども、まあいいか」のログが残るようになります。完全に不要だから削除するのとは違った「消し方」ができるわけです。

このような工夫の数々は、アナログノートではあたり前のことでした。皆それぞれにタスクの終了の扱いをどうするのかを検討していました。バレットジャーナルなどはそのモダンなスタイルだと言えるでしょう。

一方で、タスク=チェックボックスに慣れ切っている現代の私たちは、あたかもタスクの状態が二つしかありえないかのような感覚を覚えています。ツールに合わせて、自分の感覚が調整されているのです。これは結構怖いことだと感じます。

おわりに

もちろん、世の中にはon/offの二状態だけで十分事足りる話はあり、むしろその方が多いとすら言えるでしょう。そうしたものは、クリックするだけで終了済みにしていけるツールが抜群に活躍してくれます。

一方で、「二状態だけではちょっと扱えていないよな」という場合は、専用ツールを飛び出して、自分なりの工夫を入れていけるツールを使ってみるとよいでしょう。専用ツールに比べればたしかに手間ですが、その手間が工夫を呼び込む余地になってくれることを考えれば、そう悪いものではないと言えそうです。

デジタルノートテイキング連載一覧

▼編集後記:
倉下忠憲




拙著新刊『すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術』の重版が決まりました!
 
とても良い評価をいただけているので嬉しく思っています。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中