※当サイトはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。

タスクをタスク以外と共に



倉下忠憲つい最近、Evernoteに「タスク」という新機能が追加されました。

新しいタスク機能の使い方 | Evernote 日本語版ブログ

単なるチェックボックスとは違い、個別に締め切りなどが設定でき、かつ「タスクビュー」で全ノートに含まれるタスクを一覧できるので、使い勝手はきわめて向上しています。

もちろん、総合的に機能を見れば、Todoistなどのタスク管理専用ツールの方が優れている部分は多いでしょう。しかし、ノートツールにおいてタスクを扱えることにはそれはそれでメリットがあります。

簡単に言えば、「タスク以外のことも気楽に書き残せる」というメリットです。

雑多な記述

たとえば、以下はタスク機能を使ったEvernoteのノートです。

二つのタスクがあり、それぞれの下に補足の情報が記述されています。もう、この段階でこのノートが「よくあるタスク管理ツール」とは別様に情報を管理していることがわかるでしょう。

タスクの実行に必要な情報(たとえばアプリのURLなど)が添付されるのはタスク管理ツールでもよくある使い方ですが、タスクでもサブタスクでもない「こういう風にやりたい、できたらいい」という思いみたいなものも書かれています。

その上、ちょっとやってみた結果、みたいな情報もメモ的に添付されています。ある種のログが記述されているのです。

そして、上記のような種類のことなる情報が単一のノートにするっとまとまっています。一般的なタスク管理ツールだとここまで「するっと」はまとまらないでしょう。メモやらなんやらを「駆使して」なんとかまとめることになるはずです。

一方、ごく普通のデジタルノートの場合、テキストを書き、その中に「タスク」を含む情報を記述することができます。言い換えれば、ある一塊の情報の中にタスクを「混ぜる」ことができるのです。

実行者が、「タスク」のことだけしか考えていないのであれば、タスクのリストだけでも十分用が足りるでしょうが、それ以外のことを考えているならば、それらをまとめて記述できた方が使いやすい可能性があります。

二種類のタスク

別の言い方をしましょう。もしタスクというものを「内発的タスク」と「外発的タスク」の二種類に区分したとしたら、内発的タスクは「想い」と一緒に生まれてきます。というか、まず「想い」があり、それを実現するために「タスク」が設定されるのです。タスク駆動ではなく、想い駆動がその実体です。

単に情報だけを見れば、タスクとしては「バナー画像を作る」というテキストが残っているだけで十分なような気がします。そういうテキストで構成されたリストを作れば、「管理」できているような気がします。

しかし、「バナー画像を作る」というそのタスクは、たまたまTwitterで見かけた「良さそうな画像」に触発されて生まれた「自分もこういうのを作りたい」という欲求を満たすための行動だったのです。その行動の欲求も一緒に残しておくことは、私には不要なことには思えません。むしろ、自分の動機づけ──それはつまり行動の出発点──を確認するというきわめて重要な役割を果たすように思えます。

もちろん、こうして画像を残しておくと、「参考資料」として役立たせられる面も確かにあります。効率や生産性の平面で評価すればそうなるでしょう。でも、それだけではありません。自分がどういう欲求に基づいてその行為を行おうとしていたのかを記しておくことは、「自分」というものの付き合いにおいて欠かせない役割を担うと感じます。

だからこそ、ちょっとだけ手間を掛けてもこうしてノートにタスク以外の情報も残していくのです。

想いとタスク

最近私が意識してるのは、タスクを出発点にするのではなく、むしろタスクを「成果物」だと見ることです。たとえば、何かしらの考えを文章で書いてみる。そうして書いてみた結果として、「じゃあ、これをやろう」というタスクが立ち上がる。それをタスクとして書き留める。こういう流れです。

このような手順を取っている限り、タスクに振り回されたり、自分とタスクの心理的距離感が離れすぎたりすることは避けられると感じています。この話は、Tak.氏の『アウトライン・プロセッシングLIFE』で言うところの「DO」の扱いと呼応するものがあるでしょう。

もちろん、すべてにおいてそのような手間のかかる「管理」方法をせよ、という話ではありません。事務的に淡々とこなせばよいものは、簡素なリストで十分事足りますし、むしろそれが最適な形であるでしょう。

つまりここで重要なのは、外発的タスクの処理でうまくいっている方法を、内発的タスクにおいても適用させる必要はないし、むしろそうしない方がよいのではないか、ということです。

たった一つの方法論で無理やり「やり遂げる」よりも、性質に合わせた方法を使い分けて「うまくやる」方が、全体としては良い着地を見せるのではないかと、そんなことを考えています。

デジタルノートテイキング連載一覧

▼編集後記:
倉下忠憲




徐々に発売が近づいている『すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術』ですが、Kindle版の予約もスタートしました。個人的には全面帯のデザインが素晴らしい紙版を推しますが、手軽に読めるKindle版も捨てがたいですね。いっそ両方……。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中