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仕事で自己実現を図る



佐々木正悟 仕事といってもさまざまで、職場といっても人それぞれです。「仕事で自己実現」なんて古いきれいごとだよと言われてしまっても不思議ではありません。

けれども私は「仕事で自己実現」のリアリティを、間近で目にする機会に恵まれました。

この本の制作プロセスです。

私はこの本の制作に、長い間かかわってきました。

著者の稲葉遼一さんとはとても親しくさせていただき、最初はいつであったか思い出せないほど以前から「国会のルール」についての思い入れを聞いてきたのです。

しかし、この本を作るお手伝いはそう簡単ではありませんでした。

なぜ「日程」と「カレンダー」が大事なのか?

なによりも、稲葉さんがおっしゃりたいことを、私が理解できなかったのです。

私は政治にも国会にも疎くて、しかも稲葉さんのお話は私がイメージしていた「国会のイメージ」とかけ離れたものであったため、話を聞いてもどこに魅力があってなにを感じ取ればいいか見当がつかなかったのです。

ちょうど、野球の面白さもルールもサッパリ知らない人間が、ラジオの野球中継を途切れ途切れに聞かされていたようなものでした。

国会と言えば、首相が怒られている。古そうな椅子にみんなが腕組みして座っている。秘書らしき人たちが紙の束を持って恭しく動き回っている。ときどき「強行採決」のときにだけ、眠そうな人がいなくなってエキサイトし始める。

しかし稲葉さんは、何かと言えば「日程」と「カレンダー」の話を持ち出すのです。

国会中継で「カレンダー」が示されるのは、ごくたまのことです。

なぜ日程とカレンダーが大事なのか。

日程がわかると、なにが見えてくるのでしょうか? 

「採決したら与党が勝ってしまうのだったら、採決させなければいい」これが野党の戦い方の基本方針です。採決しなければ法案は可決せず、もちろん成立もしません。つまり、採決の時期を遅らせれば遅らせるほど、法案の成立を先延ばしできるのです。

私はこれを読んで目からうろこがおちました。

このことが、こんなにわかりやすく説明されている記事や書籍を、私はこれまで読んだことがありません。

  • 与党は「法案」を期日以内に可決させることがすべて
  • 野党はそれを阻止することがすべて

という「基本戦略」を教えてもらうことで、いままで目にしてきたなんだか不思議な光景の意味がわかるように思いました。

そしてそう言えば、小学生のころ「90日以内に衆議院はどうしたこうした…」といったことを、テストで回答させられたことを思い出しました。

本を出すことは稲葉さんの「本業」ではありませんが、仕事のようなものだとは言えるでしょう。

間違いなく本書を出すことで、ご自分の中での「一区切り」がついた感覚があったのではないかと、私は憶測しているのです。

そしてこれを人は「自己実現」と呼ぶのだろうと思うのです。

▼編集後記:
佐々木正悟



「本を出す」までいかなくても、小さな自己表現を通して「自己を実現していくこと」は可能なのではないだろうか。
 
『国会というゲームのルール』を通じて私がいちばん可能性を感じるのはそのへんです。
 
書籍であってもブログであっても、一文から成り立っています。
 
その一文ごとに「自分の言いたいことを100%言い切れた」という感触が得られれば、一文ごとに自己が実現していきます。
 
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