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きっちりと人生設計するための7箇条

 1.人生設計の必要性を確認する
 2.「自分年表」を作る
 3.将来の収支の予測を大まかにでも立てる
 4.出会いたい人とは「ナンパ」して知り合いになる
 5.ブログで表現力を身につける
 6.やりたいことを「やりたい」と言っておく
 7.トラブルにあったら「政治的な正しさ」に気をつける

理系のための人生設計ガイド (ブルーバックス 1596)
理系のための人生設計ガイド (ブルーバックス 1596) 坪田 一男

講談社 2008-04-22
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1.人生設計の必要性を確認する

本書は少々クセのある文章なので、個人的な好みが分かれるでしょう。

とくに、「人生設計が必要だ」という「そもそも論」となると、どうしても筆者特有の思考法に好印象が持てないと、言っていることの是非とは関係なく反発心が起こります。

しかしそれをあまり気にせず読むと、本書のテーマは実は、かなり広範の人にとって役立つ本だとよくわかります。人生設計が必要なのは、決して理系の研究者だけではありません。

ただ、理系の研究者という人たちはおそらく、「人生のこと」なんかより「研究のこと」だけを考えていたいと切望している人が多いのでしょう。同じように、「人生設計」など面倒だと考える人には、本書は実に有用な知識が満載です。

とは言え、本書の著者に比べて「設計」や「計画」に頓着したくない人は多くいると思います。ので、こういった本は、部分的な知恵を拝借するというスタンスで十分でしょう。

2.「自分年表」を作る

人生設計の第一歩は、未来に関する自己分析。
それを最も手早く、ざっくりと知るためには、「自分年表」を作るのが最適です。

筆者は「ざっくり」というわりに、かなり細かい「将来の年表」を作っていますが、そこまでするのは気が進まないという人がほとんどだと思います。
(気が進まないのはしかし、単に面倒だからということもあるでしょうが、あまり知りたい気持ちにならないから、ということもあるでしょう。そこにこそ問題はあるのかもしれません。)

そこで、もっと簡単に「自分年表」を作るのです。単に、10年後、20年後、30年後40年後の、家族の年齢が書かれただけのものです。

まずはこの分かりきった事実を確認するだけでも、なぜ「人生設計」が必要かがより明らかになるでしょう。一見したところ、あまり楽しいものではないかもしれませんがこれを楽しくするためにこそ、人生設計はあるのです。

3.将来の収支の予測を大まかにでも立てる

将来の家族の年齢構成が明らかになったら、次に必要なことは、おおよその年収を、想定してみることです。

筆者はこれについて、次のようなことを指摘します。
研究者こそ、経済的自立が必要であり、経済的自立がなければ、好きな研究を続けていくのはむずかしい。

しかし、理系研究者で(文系でもあまり事情は変わりませんが)、経済的に余裕がある人はほとんどおらず、結果として好きな研究はおろか、研究者として生きていくこと自体をあきらめなければならない人がとても多い、と。

「好きな研究を続けていく」ために、あの手この手で経済的な基盤を固める方法を提案している筆者は、はっきりいってとてもユニークな人だと思います。女性の経済的自立について口を極めて強調し、自由に生きるための勉強法を提案して一躍有名になった勝間和代さんと同じ事を、女性の立場ではなく、理系の立場から主張しているのが、坪田さんだと感じます。

主旨の全体に賛同できなくてもいいと思います。また、経済力をつける方法は他にもあるでしょう。ただし、自由と経済力の関係については、筆者は事実を述べていると思います。

4.出会いたい人とは「ナンパ」して知り合いになる

ここでいう「出会いたい人」とはもちろん、同じ研究者です。ただし、有名な人や興味深い研究をしている人、ということでしょう。

研究の世界であっても物書きの世界であっても、自分一人のアイデアや知識というものは、どうしても限りがありますから、広い知識や技術を持った人と知り合いになりたいという欲求は当然あるわけです。

ただ、「人脈を拡げる」と簡単に言っても、実行に移すのは結構勇気とエネルギーがいるものです。いきなり有名な人のところに行って知己を得ようとするのは、とても「おこがましい」事のように思えるわけです。

筆者のアドバイスはあまりにも単純で、

行って知己を得ようとし続けなさい

というものです。著者はうまくいった事例しか書いていませんが「ナンパ」が100%うまくいくとは信用できません。それでも本書を読むと、やればうまくいくような気がしてくるから不思議です。

5.ブログで表現力を身につける

このアドバイスももちろん、本質的には「理系研究者」のためになされているものです。自分の実力がいくらあっても、「論文」で十二分に表現できなければ、それを評価してもらうのは難しい、というわけです。

その表現の場として、あるいは自己アピールの場としてブログを使えということですが、それ自体は「表現力を付けるため」と「人目に触れさせるため」です。

ポイントとなるのは、「人はあなたのことに興味を持つには忙しすぎる」という指摘で、これは実にもっともな指摘だと思います。著者は、大学教授のことを主に念頭に置いているのですが、誰にとっても事情は同じでしょう。

十分な注意を払われずに、ちらっと見ただけで評価されるとなれば、上手に自己表現しておくに越したことはありません。

6.やりたいことを「やりたい」と言っておく

以前、私の母の友人が、「出会いがない」と嘆いている私のテニス友達(私より10ほど上の男性)に、「出会いを求めていることを、周囲全ての人間にアピールし続けろ」と言っていました。

これは非常に正しいアドバイスだと思います。

私たちは、自分の周囲の人のことを見ても、他人が何を一番欲しているか、実はよくわかりません。何を欲しているかがわからない人のことは、手助けのしようがないのです。

色々な意味で、「自分が欲していることを正直に喋る」のは、実は自尊心に関わることでもあるため、巧妙に隠しつつやろうとすることが多いと感じるのですが、逆に言えば、これをわかりやすくアピールできる人は、それだけでも世の中、得するのではないかと思います。

7.トラブルにあったら「政治的な正しさ」に気をつける

「政治的な正しさ」というのは、ちょっとわかりにくい判断基準ですが、「偏見」に気を付けて、ニュートラルな立場で判断する、ということのようです。

私たちは、状況が混乱してきたり、ややこしい事態に陥ったりすると、どうしても「自分のこだわり」や「曲がったことは嫌い(倫理観へのこだわり)」を行動の指針としがちです。しかしここが難しいのですが、こうした行動規範は感情に依存しがちなため、判断が意固地になって、トラブルを鎮めるのに向きません。

家族の問題や、人間関係の問題になると、「そういうのは生理的に関わりたくな」とばかりに、ズバッと関係を切ってしまうような態度によく見られるのですが、このタイプの態度が、自分や他人にメリットをあまりもたらさないというのは、おそらく本当だと思います。

まとめ

冒頭の繰り返しになりますが、本書は個性が強く、しかも著者の経験を判断基準としているところが、いささか多すぎるきらいはあります。

しかし、理系研究者にとって、何が必要で、どうしたら豊かな人生を送るようにプランニングできるかという視点で書かれた内容は、単純に興味深く、その上ためになることがたくさん書かれています。

好きなことをしつつも、経済的に自立して、持ち家や、子どもの教育費まで稼いで生きていかねばならない。というのは、理系研究者以外にももちろんあてはまります。著者はそうしたことを検討するのが、おそらく嫌いではないのです。だからこそ、現実的で、抜け目のない人生設計のハウツーを、まとめることができるのでしょう。

これを全てやる気にならない人がいても、その気持ちは分かります。ですが、著者のような人が、かなり思い通りの人生を送ることができるのも、想像がつくはずです。そのいくつかを真似してみるのも、決して悪いことではないはずです。

【関連書籍】

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