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自分も成功し、同時に周りの人にも成功してもらいたいと思っている人のための一冊

世の中には、成功するための本(スル本)はたくさんあるものの、人を成功させるための本(サセル本)というのはあまり多くないのではないかと思っています。

何はなくとも、まずは自分が成功をしないことには始まりませんから、これは当たり前と言えば当たり前なのかもしれません。でも、人を成功に導くという行為そのものも、成功の一形態と言えるのではないかと考えます。

「成功曲線」を描こう。 夢をかなえる仕事のヒントそんな中で、今回ご紹介する『「成功曲線」を描こう。 夢をかなえる仕事のヒント』は、タイトルのとおり成功するための本(スル本)ですが、同時に人を成功させる本(サセル本)でもあります。

そして、著者の石原明さん自身が成功者であると同時に、人を成功させる達人でもあるという意味で、本書はたぐいまれなる一冊といえます。

実は、本書のルーツは今から14年前の1995年にさかのぼります。当時は別の版元から刊行され、10刷を重ね、多くの方に読み継がれていると言います。その後、改訂を加えたうえで現在の版元から刊行されました。

以下、「はじめに」より。

不思議なことに、発行した1995年時点の読者も、現在の読者も、異口同音に「ここに書かれていることは奧が深い」と私に話してくれます。あるいは、この本を20代で読んだ方が、30代半ばでふたたび読み返し「ああ、この文章の意味はこういうことだったのか!」と得心し、感嘆するという現象も起きています。どうやら、本書には普遍的な要素が含まれているようです。

これは、本書における「スル本」の側面を端的に言い表したものといえます。

一方、同じく「はじめに」の以下の個所は「サセル本」の側面。著者は同書の内容に即したセミナー(現在は終了)が好評だったことを受けて、次のように続けます。

部下や社員を指導する立場の役職者のために、新たに加筆したらどうだろうかと考えるに至りました。それが、各章の最後に設けた「人を導くための黄金律」ですが、読者が管理職でないのなら、読み飛ばしてもらってもよいと思います。

一度目に本書を読んだ時は、この最後の「読み飛ばしてもOK」との記述を真に受けて、実際に読み飛ばしていました。なぜなら、僕自身は一人で仕事をしている身であり、フラットな立場にいるパートナーはいても、自分より下に位置する部下や社員はいなかったからです。

でも、読み終えてからふと「人を導くための黄金律」の部分だけを連続して読み返してみたらどうなるのだろうか? という好奇心が芽生えました。

本書のメインは「スル本」です。でも、各章末に「人を導くための黄金律」という数ページが加えられており、この部分が「サセル本」となっています。

普通に読み進める場合は、スル → サセル → スル → サセル → …といった具合に交互に立場が入れ替わるのですが、これを「スル本」を飛ばして「サセル → サセル → サセル → …」と拾い読みしていったらどうなるかと思い立ったわけです。

ということで、すぐに読んでみました。

その結果、自分が普段いかに本を受身で読んでいるか、ということを痛感させられました。課題や問題意識をもって本を読んでいるつもりでも、実際には目の前に書かれている活字にとらわれて、あるいは導かれて、結局は著者のロジックに取り込まれてしまう──良くも悪くも──のです。

それが、読み方を改めるだけで、それまで見えていなかったことに目が向くようになり、さらに普段の自分の仕事に自然と意識の矢印が向かい、何をどう改めるべきかを考えている自分に気づきました。

実際に部下や社員がいるかどうかは問題ではなく、もっと広くとらえて、自分は誰を導くために今まで努力を積み重ねてきたのか、そして、今後はどうなのかを考えるとき、この「サセル」で書かれている内容は示唆に富んでいます。

そういう意味で、本書は、新入社員から中堅社員、そして経営者にいたるまで、どのステージにいる人にも必ず何かしら発見と教訓の得られる一冊といえます。

 
一つ注意すべき点は、本書を読んでしまうと、ついつい身近にいる人を捕まえて、本書で得た学びの効果を確かめようとしてしまうことです。これは「スル」という意味では望ましいことなのですが、相手からしたら唐突な話になりますから、事前によく説明しておいた方がいいでしょう。

例えば、以下のような「指導」をしたくなるのです。

何かしようと思ったら、あらかじめそのための時間を割り振っていきます。

その時間になったら自分がその場に出て何か行動しさえすれば、また“行動すれば次の現実”で物事が動いてくのです。

この積み重ねが大切で、そのたびにいろいろな事柄が進みます。

また次のことをやって来たら、動かしていく…。こうして目的が達成されていくのだ、と説明してあげてください。

あなたは成功しようとスル人ですか?
それとも誰かを成功サセル人ですか?
あるいはその両方ですか?

これらの問いに自信をもって答えられれば、迷いは激減するはずです。本書はそのためのガイドとなってくれるはずです。

「成功曲線」を描こう。 夢をかなえる仕事のヒント
大和書房
発売日:2007-01-20
おすすめ度:4.5
おすすめ度4 素晴らしい!!
おすすめ度4 成長法則である。成功法則ではない。
おすすめ度5 行動の大切さを再認識させる本です。
おすすめ度4 一回査読した程度では、本書の真髄はたぶんわからない
おすすめ度5 成功へ一直線

合わせて読みたい:

とある方から「是非読んでみてください」ということで献本いただいた一冊。改めて詳しく紹介したいと思いますが、今回でいえば「サセル」をより深く掘り下げた内容であり、「スル」より「サセル」に力を入れていきたい人にとっては打ってつけでしょう。

プロデュース能力 ビジョンを形にする問題解決の思考と行動
日本能率協会マネジメントセンター
発売日:2008-12-19
おすすめ度:5.0
おすすめ度5 脳が、熱くなった。
おすすめ度5 「コンサルティング能力」が面白かったので・・・
おすすめ度5 普通の人が夢をかなえる方法が「プロデュース」だったとは!
おすすめ度5 後進にビジネスの方法を伝えようとする熱い想いが伝わってくる傑作


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▼編集後記:

今日は、井寄奈美さんの出版記念パーティーに参加してきました。最新刊『小さな会社の トクする 人の雇い方・給料の払い方』の出版を皆で祝ってきたわけですが、彼女もまた人を成功「サセル」人。

パーティーに来ていた方々が「知らないうちに井寄さんに巻き込まれていた」「初めて会ったのにそんな気がしない」と口を揃えていたのが印象的でした。

そんな井寄さんの今回の一冊は、小さな会社を経営する社長向けに人の採用について、人事のプロならではの視点でわかりやすく、微に入り細に入り解説しています。

さらに、すぐに使える書式集が専用のウェブサイトからダウンロードできるようになっています(URLは本書内に記載)。

起業を考えているビジネスパーソン、すでに起業していて採用を検討している社長には、実務的に役立つ一冊といえます。