一攫千金はめったにあるものではないとわかっていても、誰しもどこかでそれを期待し、一気に千金を求めて走るもの。それだけに千金が一気に得られないと分かると、さっさと諦めてしまいます。
そんな中で勝ち抜ける人というのは、次の2つの資質を兼ね備えた人でしょう。
- 少しずつでも倦まず弛まず努力を積み上げている
- ここぞというところで最高の集中力を発揮している
どちらか一方だけでは必ず競り負けます。このことをこれ以上にないくらいわかりやすく、かつ鮮烈に解説しているのが今回ご紹介する『坂本桂一の成功力』。
スレッショルドを超えるために一歩前に出るという生き方が、人として正しいのかどうか私にはわかりません。しかし、成功したいと思うなら、そうする以外にないのです。事実、私はこれまでの人生で、仕事でも私生活でも、そうやって時々の成功を勝ち取ってきました。
スレッショルドとは何か? 本書を読み解くための最重要キーワードです。
成功と失敗を分かつ一線
スレッショルド(threshold)とは、「これを超えると状態が変化するという境目」のこと。日本語では閾値(いきち/しきいち)と訳されます。
本書冒頭にわかりやすい説明がありましたので引用します。
たとえば、砲弾を地面と平行に発射したとしましょう。勢いよく飛び出した砲弾も(空気抵抗を考慮しなかったとしても)、最後は地面に落下します。そう、地球には重力があるからです。
しかし、発射速度が秒速およそ7.9メートルを超えると、その砲弾は墜落することなく、永遠に地球の周囲を回り続けます。これがいわゆる人工衛星です。そして、この人工衛星になれる最小初速のことを第一宇宙速度といいます。
つまり、この第一宇宙速度が、単なる砲弾と人工衛星を分けるスレッショルドなのです。
このように、客観的かつ厳密にスレッショルドが定義できればいいのですが、世の中にはその境界があいまいなもの、あるいは数値化しようのないものもあります。変数が多すぎて定式化できない、ということもあるでしょう。
たとえば、ダイエット中の人が、ダイエット本に書かれている通りに食事制限をしたり、運動を行ったりしたとしても、体質的あるいは遺伝的に痩せにくかったり、基礎代謝が低かったりすれば、効果は思うように出ないでしょう。
スレッショルドは人それぞれ、自らが置かれた環境や関係の中に個別に存在するものなのです。
では、スレッショルドを乗り越えるにはどうすればいいか?
この問いに本書は挑戦しています。でも、千金が一気に得られ方法論ではもちろんありません。書かれているのは、方法論以外のすべてといってもいいでしょう(書名が「成功法」ではなく「成功力」なのも頷けます)。
つまり、どうすればいいのかという答えは書いていない、ということ。ただし、答えにたどり着くためのヒントは十分過ぎるほど書かれている、そんな一冊です。
アンチ・ワークライフバランス?
また、本書の主張はある意味で極端に走っているために、例えば以下の本に書かれていることは、ほとんど全否定されているといっても過言ではありません。
不景気の今、ヤル気にさせてくれる良書
是非、会社でも取り入れて欲しい
手遅れにならないうちに、経営者の方はもっと真剣に考えたほうが良いのでしょうね
リーダーシップの嚆矢
でも、誤解のないように補足しておきますが、どちらかが正しくて、どちらかが間違っている、ということではありません。スタンスの違いがまずあり、ターゲットの違いが次にあり、当然の結果として目指すところも異なってきているのです。
その意味で、両著を読み比べてみることをおすすめします。どちらか、自分に合っている方を選ぶことで、無理なくスレッショルドを乗り越えることができるはずです。
成功するための本音の秘訣が、ここにあり
こういうことにきちんと触れなければいけない
成功への道しるべに
がんばろうという気になる
▼合わせて読みたい:
同じ著者による2冊。
ソフトウエア界の草分け
「考える」ことを止めないために
気合いのスパイス
本として面白い
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・常識というウィルスを駆除する
・「方法」は陳腐化するが「方向」は無限にある
・常識を疑い、自分の頭で考え抜く
この人自身、成功していない。
大企業の戦略的慣性を転換するための考察が欲しい
“サラリーマン”として新規事業にかかわる人には必見
それほどでも・・・
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・次の一歩を踏み出すための「現実起業」と「夢起業」
いずれも読み応えのある内容ですが、特に起業家を志望されているのでなければ『頭のいい人が儲からない理由』をおすすめします(起業家を目指す方は両方)。