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考えてもみなかったことが実現する

仕事をしながら、いつも不思議に思うのですが、やってみる前に思い描いていたことと、実際に達成できたこととの間には非常に大きなギャップがあります。

立てたスケジュールから著しく逸脱したり、実際にかかった費用が見積もり金額から大きく乖離したり、というレベルのことではなく(そういうこともありますが)、ここで取り上げたいのは、もう少し上の次元にあることです。

例えば、就職活動。自分が向いていると思って始めた仕事が、実際にやってみたらそうでもなくて幻滅したり、そうして失意のままに異動した先で出会った業務が思いのほかしっくり来たりする、というような想定外なギャップです。

考えてもみなかったことが実現する、いわば「想定サクセス」とでも言うべきものを考えるとき、対立概念として浮かび上がるのが「想定サクセス」です。人生を振り返ってみると「想定サクセス」というのはそれほど多くないのではないでしょうか(後からなら何とでも言えますから)。

考えるという行為は、言葉を使ってしかできないものです。つまり、言葉にできないことを考えることはできないのです。また、言葉にできたとしても、それが行動に変換できなければ、考える段階に留まることになり、そこから前に進むことができません。

例えば、意志決定をしよう、と考えた時、「意志決定」という言葉を知っていても、具体的にどんな風に身体を動かせば「意志決定」をしたことになるのかがわからなければ、「意志決定をしなくては…」という思考の堂々巡りに陥ります。

そこで、「始めてみて初めてわかること」が、自分を前に進める上で役に立ちます。メルマガ「えのさんのeの素」に以下のようなエピソードが紹介されています。

逆境が後の成長の原動力になる

独立した時、本当にお金がなかった。商品を仕入れるにも、現金じゃないと売ってくれない。親も借金を抱えて苦しんでいたので、そちらを助けるにはあまりゆっくりもしてられない。

早く、売上を伸ばさなければならないが、仕入れるお金がない。対策は商品を高回転させるだった。日々、この課題を取り組むうち、いくらにすると売れるかが、良くわかるようになった。

おもちゃの相場感は、ぎりぎりの資金繰りに置かれたゆえに身につけることができた。逆境が後の成長の原動力になった。逆境に育つ技術は何かを意識してみよう。

実際にお店を始めなくても、こういった状況は想像できるはずです。そこで、本番になって慌てないようにあらゆることを想定して、事前に対策を固めておけば、安心してスタートを切ることができる…、と思いがちですが、どうもそうではないような気がします。

もちろん、何の準備もせずに「やってみなけりゃわからない」とばかりに勢いで突っ込んでいくのは敢然とした無鉄砲です。かと言って、準備を周到にし過ぎても、よく言われるような「石橋を叩いて壊す」ことになるのではないかと思うのです。

「えのさん」から学べることは、知識としては新しくないと思います。でも、行動としても新しくない、と言えるでしょうか。

学ぶべきは「敢えて自ら逆境に身を投じるべし」ということではないでしょう。人間には防衛本能がありますから、敢行しようとしても身体が拒否しますし、頭では「これから逆境を始めるんだ」という意識を持ってしまいますので、本当の意味では逆境にならないのです。不意打ちは、不意を衝かれて初めて不意打ちになるのと同じことです。

「これならうまく行くだろう」と自信たっぷりに勇んでやってみた結果、現実には全然うまくいかない、というギャップを味わうこと、しかもそのギャップが想定であればあるほど“効き目”があるのではないでしょうか。

誰も失敗はしたくないものですが、失敗を重ねた人ほど成功に近づきやすくなるのもまた事実ですし、この考え方は広く受け容れられていることと思います。

そう考えると、というより、考えるまでもなく、自分自身を「考えること」から引き離し、どれだけ「行動すること」に執心できるかが、──結果として文字通りになってしまいますが──考えてもみなかったことを実現させる上で考えておくべきことと言えるでしょう。いや、考えてはいけませんね。でも言葉にする以上は、考えざるを得ないのですが(以下略)。