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時間があるはずの日に何もできない理由

佐々木正悟 私たちは、物事の原因を詳しく調べることなく、それっぽい結論に飛びつきたがります。

「ストイックで超人だから」というのは一見「いい理由」のように思えます。

自分ができないことができるのは、人間離れしているからというのは、自分ができない理由としても、超人である人間がやれる理由としても、説明できるからです。

土日に漫画が描けない理由も、同じように「作りだす」ことが可能です。

時間があってもかけない自分は意志が弱いが、描ける純さんはストイックだから、で事足ります。

けれど私たちは、そんなに現実のことが何でもわかっているわけではありません。数秒考えたくらいで正しい結論が出せるほど、因果関係に通じているともいえません。

意志力が弱い、わけではないかもしれない

純さんは、作中かなり試行錯誤しています。記録もふんだんにとって、実際に何が起こっているのかをよく観察しています。そうすれば常に正しい結論に達することができるというわけではありませんが、「意志が弱い」とか「ストイックである」とかいった理由よりは、だいぶリアリティのある結論に近づくことに成功しています。

  • 昼寝もゲームもしちゃうもの
  • 土日はイレギュラーなことが起こるのがレギュラー

こうした発見こそが、正しい現実に近づくために欠かせないプロセスなのです。

「意志力が弱い」だと、「これを強くする」といったかなり大まかな結論になります。そうなると、脳に電気を当てるのがいいのか、滝に打たれる修行をすればいいのか、ウサギ跳びをするのがいいのか、いずれにしても選択肢がたくさんありすぎて対処が難しいのです。

意志力が弱いという結論が間違っているというわけではないのです。ただ、意志力が弱いわけではないかもしれないのです。

昼寝もゲームもやめることも、できるかもしれません。しかし、ことが「意志力」ではなく「昼寝とゲーム」なのであれば、作中で純さんが解決したように、もう少し具体的な対応をとることが容易になります。

わかりきったことのようでも、私たちに「わかっていること」は実に少ないものです。

本当にとても少ないのです。

何が起きているか、もっとくわしく調べてみるべきなのです。もっと詳細に、もっと接近して、自分自身の細かい事情を知る必要があります。