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情報とアイデアの整理



倉下忠憲森博嗣さんの『アンチ整理術』を読みました。


整理が持つ有用性を一定は認めながらも、そもそも整理する必要ってあるの? と根本的な視点を著者は提示しています。

本書を読みながら、あらためて情報の整理について考えたくなりました。そもそも情報って整理する必要はあるのでしょうか。

情報の種類と性質

もちろん、ひとくちに情報といってもその内実は多様です。ひとまとめにして論じるのはあまりにも雑でしょう。

そこで知的生産における情報を大きく四種類に分けて考えてみることにします。

  • テンプレート
  • 資料
  • アイデア
  • 成果物

テンプレート

たとえば、このシゴタノ!の記事を書く際には、記事用のテンプレートを使っています。本文がいっさい入っていない状態で、記事の枠組みだけが保存されたテキストデータがそれです。メールや企画書などでも似たような「雛形」は多く使われることでしょう。

こうしたテンプレート(雛形)は、いつ・どのように使われるのかがはっきりしています。たとえば、記事用のテンプレートなら、記事を書く際に用い、そこに原稿データを嵌め込む形で使用します。それ以外の使い方はありません。同じように、たまに提出を求められる著者プロフィールなども、使用スタイルは固定・限定的です。

こうした情報に関しては、必要になったら即座に取り出せるのが望ましい反面、必要でないときは別にどういう状態であっても構いません。つまり、整理はしごく簡単です。

たとえば私はそのようなテンプレートをEvernoteに保存し、「テンプレート」というタグをつけることで管理しています。記事を書くタイミングで、そのタグでノートを引っ張り出せば何も問題ありません、至極簡単です。同種のことは他の情報ツールでも容易に実現できるでしょう。

資料

では、資料はどうでしょうか。たとえば、雑誌の切り抜きやWebスクラップです。

こうしたものは、考察の参考にしたり、引用したりと、用途自体は限定的なものの、いつ使うのかまでははっきりしません。しかるべきときが来たら引き出せるようにしつつも、それがいつなのか、はたしてそれがやってくるのかは不明なわけです。

さらにややこしいのが、執筆中の企画案に関する資料についてはいつ使うかが明瞭なことです。つまり、同じ資料と言っても、使用タイミングが不明瞭なものとそうでないものがあるのです。

使用タイミングが明瞭なものは、テンプレートと同じように扱いは簡単となります。たとえば、Evernoteなら専用のノートブックを作り、そこに放り込んでおけばよいでしょう。しかし、不明瞭なものに関しては同じ扱い方はできません。ここに情報整理の困難が潜んでいます。

アイデア

さらにややこしいのが、アイデアです。資料が自分の頭の外からやってくる情報だとすれば、アイデアは自分の頭の中からやってくる情報だと言えます。

そのような自分の頭の中発の情報には、たとえば「タスク」や「スケジュール」、あるいは「ネタ」に分類できるものもありますが、そうした分類にそぐわない思いつきもあります。それをここでは暫定的に「アイデア」と呼んでいます。

そのようなアイデアたちは、どこでどのように使われるのかがわかりません(もしそれがわかるなら、それは「タスク」や「ネタ」だからです)。

特に、「どのように使われるのかがわからない」というのがやっかいで、どこにどう保存しておくべきなのかの基準が定まらないのです。

情報整理についてのやっかいさは、このアイデアの扱い方が一番の原因になっていると言ってよいでしょう。

成果物

一方で、そうしたテンプレートや資料、そしてアイデアを駆使して作りだした成果物に関しては、整理は難しくありません。というか、単に保存しておけばOKでしょう。

なぜなら、成果物とは知的生産の(ひとつの)ゴールであり、それが素材として使われることはほとんどないからです。だから、使用を前提とした(あるいは使用から逆算した)整理を行う必要はありません。

もちろん、過去に生み出した小さな成果物を集めて大きな成果物を生み出す、という知的生産が行われることはありますが、そうなった段階で改めて素材集めすれば十分間に合いますので、日常的な情報整理では考えなくても大丈夫でしょう。

さいごに

検索すればたいていの情報が見つけられる現代においては、情報を事細かく整理する必要性自体は低下しています。特に、テンプレートや資料については、非常に雑に管理でも大丈夫でしょう。

一方で、アイデアの扱い方は簡単ではありません。整理を行うための基準軸が定まらないからです。ちなみに、森博嗣さんはメモをしない、つまりアイデアを保存したり、整理したりはしていないと書かれています。おそらくそれも一つの手ではあるでしょう。

なにせ、アイデアを整理するための基準はないのです。自分の知的生産のスタイルに合わせて、自分で構築していくのがそれぞれの王道になりそうです。

▼今週の一冊:

発売されたばかりの佐々木俊尚さんの新刊です。今から読もうと思っています。



▼編集後記:
倉下忠憲




少し好調の波がやってきたかと思えば、再び不調の波が。波ですので、行ったり来たりはしかたありませんね。ぼちぼち頑張っていきます。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中