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WorkFlowyで目次案を育てていく



倉下忠憲前回は、仮であっても「えいや」と目次案を決めてしまうことが企画案自体を前に進める助けになる、ということを書きました。

だから、ここで「仮」を決めてしまいます。その後のことは、その後で調整すればいいだけです。でもって、この作業ではアウトライナーが大活躍するのですが、その話は次回に譲りましょう。

では、実際にその作業をやってみましょう。

保存領域と作業領域

まずは、ツールの話から。

最初にどんな素材があるのかをScrapboxで確認しましたが、目次案はWorkFlowyで作っていきます。具体的には、Scrapboxのページをチラチラ見ながら、どんな章が立てられるのかをWorkFlowyに入力していきます。

あくまで個人の感想ですが、この二つの作業に使うツールは、分けておいた方がうまくいきます。つまり、素材を集め、一覧するためのツールと、それと元に目次案を「作っていく」ためのツールを別にするのです。

なぜかと言えば、これから作っていく目次案は、あくまで一つのたたき台であり、後から全然別のバージョンを作ることがありえるからです。言い換えれば、同じ素材を元にした、別の組み立てを模索することがありえます。

そうしたときに、素材の一覧が残っていれば、それを参照しながら、再びゼロベースで組み立てていくことができます。もちろん、一度組み上げたものを解体してから、再度構築していくこともできるのですが、そう進めるよりも、まっさらな状態から組み上げていく方がうまくいく場合も少なくありません。

つまり、いつでも最初から組み直せるように、素材の一覧状態は確保しておきたい、ということです。

もしWorkFlowyで材料集めを行い、目次案の組み立てもWorkFlowyで行う場合は、その項目を直接編集していくのではなく、コピーを作ってから(≒duplicateしてから)作業を進めるようにしておくとよいでしょう。

目次作りの二つのポイント

では、実際に目次案を作っていきます。前回入力した部分はここまででした。

すでにこの段階で、若干の引っかかりがありますが、その問題はいったん無視して空いている章を埋めていきます。やり方は、先ほども書いたとおり、Scrapboxに書き出した項目を参照しながら、上の目次案に挿入されるべきものが何かを考えます。

その際のポイントは二つです。一つは順番、もう一つが粒度です。

まず話には「流れ」があります。「Bの話をする前に、前提となるAを説明しておかないと」という順番もありますし、近しい話を一緒にしておくとわかりやすい、というつながりもあります。

この企画案であれば、いきなり「知的生産の五芒星」の話をするのは唐突すぎるので、前提となる社会の話を先にする、というのは大枠として決まっています。それと同様に、他の要素も、「これよりは先だし、これよりは後かな」とか「これの近くに置いておこうかな」という大雑把な配置は見据えられます。それに基づいて、章の配置を考えていくわけです。

次に、「粒度」です。これは少し難しいかもしれません。たとえば第一章で「情報社会とは何か?」を2万字かけて説明しておいて、第二章が「付箋の使い方」で中身が2000字ぐらいだったら、あまりバランスがよくありません。それは体裁が悪いということだけなく、読む人にとって読みづらい(≒内容を把握しづらい)点において問題があります。

ですので、なるべく各章の「粒度」は整えておきたいのですが、この段階では、その章に書かれる内容が実際にどんな粒度になるのかは正確にはわかりません。書いてみて、その粒度がはじめてわかる、というのが結構あります。

とは言え、この作業はその「書いてみて」を促すためなので、あまり完全完璧にこだわっていても仕方がありません。あくまで「なんとなく」の感覚で粒度を整えていきます。

目次案の成長過程

では、目次案が整えられていく第一過程をスナップショット的にご覧ください。



再びの自問

これで、「とりあえずの目次案」が完成したことになります。じゃあ、さっそく書いていこう、という話になる前に、この目次案について考えることがあります。

先ほど粒度を揃えるという話を書きました。となると、仮に全体を12万字と想定するならば、一章あたりは2万字ほどの分量となります。ここで、最初に少しだけ触れた「若干のひっかかり」が浮上するわけです。

「第三章 知的生産の五芒星」には、5つの項目がぶら下がっています。2万字を5項目でわければ、1項目辺り4000字の計算です。このブログ記事だいたい二つ分。となると、それぞれの要素について深く掘り下げることはできないでしょう。概要を示し、具体例を一つと、ツール名の列挙くらいでしょうか。

ここで、私が著者として考えなければならないのは、「それでいいのか?」という問いです。でもって、その問いに答えるためには、「この本の役割とは何か?」について答えを出さなければなりません。

この本(≒企画案)が、教養書的な読み物を目指すなら、実践に関する情報を深く掘り下げる必要はないでしょう。ちょうどこの通りの目次案で大丈夫そうです。

しかし、読んだ人が「知的生産の技術」を実践していくための本だとするならば、この量ではやや不足かもしれません。たとえば「情報摂取(Infomation intake)」だけをとっても、それを詳しく解説すれば最低1万字くらいのボリュームになるでしょう。4000字では全然足りません。

ここで判断が迫られることになります。どんな本にするのか。この本の役割とは何なのか。

その問いについて、要素の一覧と目次案の両方を視野に入れながら──読者のことも想像しながら──、考えていくことになります。

おそらくこの辺りが、執筆過程の難関の一つでしょう。要素の一覧を見ていれば自然に答えが出るものではありませんし、かといって意識的に決定すれば自然と中身がついてくる、ということもありません。「書けること」「書きたいこと」「書くべきこと」の要素を、うまく調整していく必要があります。

ここが一つの頑張りどころです。

▼今週の一冊:

論文の書き方的な本は結構読んできていますが、この本は抜群に面白かったです。文章が軽妙で読みやすいだけでなく、非常に実際的・実地的・実践的な話が盛りだくさんです。最後まで眠くなることなく読み進んでいけるでしょう。

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▼編集後記:
倉下忠憲



新刊『「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門』も少しずつ読んで頂いているようです。ありがとうございます。これまでの本に比べて、ものすごく感想のコメントが多いのにびっくりしています。

「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門 (星海社新書)


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中