前回は、タイトルと方向性を決めました。
- 『情報社会の歩き方 〜知的生産とその技術〜』(仮)
情報社会とは何か。その社会の中で知的生産とその技術はどんな価値を持つのか。それを明らかにしていく、という本です。
前回も書きましたが、この方向性は、後から変えるかもしれません。最終的な決定マークが押されるのはもっと先のことになります。とは言え、進んでみなければ、引き返すべきかどうかの判断もつきません。
なので、いつでも変えられるという保留を置きつつも、前に進んでいきます。
頭の中を出す
板坂元さんは、『何を書くか、どう書くか』の中で、文章を書き出す前に確認することを次の三点述べておられます。
- (1)これから書こうとしていることに興味を感じるかどうか
- (2)自分はどれだけ独自の意見を持っているか
- (3)いま、どれだけ材料を持っているか
固定されたお題で文章を書く場合はともかく、そうでなければ興味のない話題について長期的に執筆を進めるのは極めて困難な作業になるでしょう。幸い私は、「知的生産の技術」に関して極めて強い興味を感じているので、これは問題ありません。
また、(2)と(3)はある種の「下調べ」と言えます。
(前略)どんなリポート、論文も、情報(データ)と、それに対する自分の意見・解釈との二つのものを組み合わせて成り立っている。したがって、まずこの二つをしっかり見極める必要がある。もちろん、情報を集めながら新しい意見が生まれてくることも多いのだが、その土台になる知識を整理することが、文章を書く出発点になるのだ。
つまり、(2)と(3)で下調べするのは、自分の頭の中身です。別の言い方をすれば、情報の棚卸しがこの作業だと言えるでしょう。それを経ることで、移行の執筆に目処が(あるいは指針が)立ちやすくなります。
質問法
そうして頭の中を書き出せば準備万端、とはいきません。もう1ステップ残っています。それが質問法です。
さて、いちおう頭の中のものが出尽くしたところで、今度はそのデータに質問をつけて行く。質問法とでも名づけようか。たとえば、「もっと正確な統計はないか」「なぜそうなるのか」「外国と比較したら」「将来どうなるか」「参考者は何か」「誰に聞いたらよいか」といったいろいろな疑問を出してみるわけである。
自分の頭の中にあるものを書き出しただけでは、当然のように不十分な部分が出てきます。詰めがあまい所もあるでしょうし、網羅性が十分でないところもあるでしょう。そうした部分を、どうすれば肉付けしていけるのかを考えます。
もし、コンテンツに奥行きというものが生まれるとしたら、この質問法をしっかり重ねた場合でしょう。最終的にこの問い立てすべてに答えることはないにせよ、一度しっかり考えておくことはたいへん有効です。
自分ひとりで進めるセルフパブリッシングなら、よりいっそう意識した方がよいでしょう。
実際例
というわけで、上記の作業の(一部を)下のScrapboxページで進めてみました。
『情報社会の歩き方〜知的生産とその技術〜』 – 倉下忠憲の発想工房
まだまだ道半ばですが、ある程度は私の頭の中の棚卸しはできています。
また、このScrapboxプロジェクトには、普段私が考えていること(≒思いついていること)を小まめにメモしています。このシゴタノ!の連載で出てきたいくつかの概念もしっかりメモされています。
なので、書き出しながら、その単語のいくつかをリンクにす([]でくくる)と、見事に過去の着想が下の関連ページに表示されます。
『何を書くか、どう書くか』が書かれた当時(1980年)では、ノートとカードが主要な知的生産のツールでしたが、現代では便利なデジタルツールのおかげで、情報を「あっという間に」取り出せるようになっています。これは是非とも活用していきたいところですし、この話題は『情報社会の歩き方 〜知的生産とその技術〜』(仮)にも入れていきたいところです。
さいごに
まずは、第一段階のアイデア出しと肉付けを行いました。本に至るまでの道のりはまだまだ残っていますが、船が碇を上げ、出航し始めたような感触はあります。
とは言え、まだもう少しは、肉付け作業が必要でしょう。引き続き、上のScrapboxページ上でそれを行っていく予定です。
▼参考文献:
現在は非常に入手が難しいですが、シンプルかつ実用的な執筆ノウハウが紹介されています。
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▼今週の一冊:
というわけで、新刊が発売となりました。「タスク管理」という概念そのものの入門書です。さまざまな「用語」を広く浅く紹介しつつ、タスク管理という行為そのものとどう付き合っていくのか、というちょっと突っ込んだ話もしています。電子書籍版の発売は「未定」とのことなので、紙版でトライして頂ければ思います。
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▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中。