だいぶ前(2005/3/28)の記事ですが、それが約1年後(2006/4/10)に43Foldersで話題になり、その広がり具合が興味深かったです。元記事自体も邦訳があり、こちらもけっこう盛り上がっているようです。
●元記事:Why can’t you pay attention anymore?
●43Foldersの記事:ADT & the catch-and-release distraction program
●元記事の邦訳:マルチタスクで人間の知力が低下する?–情報化時代のアイロニー
43Foldersの記事やこの記事に寄せられたコメントの中で紹介されていた、「おお、これはすぐにできる」と感じられた“時間ハック”をご紹介します。
元記事をまとめると、
●注意力欠如障害(Attention Deficit Disorder:ADD)の研究を続けてきた
●Dr. Edward Hallowellは、ADDに関連して同氏が発見、命名した
●注意力欠如特質(Attention Deficit Trait:ADT)という別の問題が
●今、企業社会のなかで大流行しつつある
●ADDが先天的なものに対して、ADTは「現代の職場環境の産物」
ADTの特徴とは?
●あまりに多くの情報がありすぎて、その処理に忙殺されるため、
●気が散る、イライラする、衝動的になる、落ち着きを失う、ことが増える
●この状態を長く続けていると、仕事の成果も上がらなくなる
●一度にたくさんのことをやったり、あるいはやろうとするために、
●効率が犠牲になる
この後、「お手玉で、自分が扱える数よりも1つ余計に玉をさばこうとしているようなものです」という喩えが出てくるのですが、このメタファーは今日の仕事を的確に描写したものと言えるでしょう。
ADTの組織に対する影響としては、
●従業員の脳から生み出される想像力や創造性を犠牲にすることになる
●組織全体がADTにかかると「会社中が株式取引所のような状態」になる
●全員が駆けずりまわる
●Bloombergの端末に目をやる
●株価の変動を確認する
●全ての問い合わせに応じようとする
●全員がどんな刺激に対しても、過敏に反応する
●そして誰も戦略を持たない、持っていたとしても毎日変わる
一言で言えば、物事を深く考えることができない状態が続くことになる、というわけです。これを打開するにはどうすれば良いでしょうか。
●対策は、考えるための時間をとるようにすること
「考えるための時間」を日々の仕事に採り入れていくための具体的な方法が43Foldersの記事で紹介されており、これに対してたくさんのコメントがついています。
まず、その方法は、
●1時間、1つの仕事に没頭する(メールも電話もすべてシャットアウト)
●30分、メールや電話連絡をこなす、ボーッと考える、だらだらする
という2つのオンとオフをくっきりと分けて交互に繰り返す、というもの。「注意のキャッチ&リリース・メソッド」(The catch-and-release distraction program)という名づけられたこの方法に対して「やってみた!」「これはすごい!」といった実践レポートが寄せられています。その中で具体的にルール化している人も。
●ドアは閉めておく(大部屋オフィスでは無理ですが…)
●現在の作業に関係のないウィンドウは閉じるか最小化しておく
●通知はすべてオフにしておく(メール通知、携帯電話、チャット)
●電話には出ない(ボイスメールにせよ、とのことですが日本では…?)
その一方で、こんな意見も。
●すぐに対応しないと誰かを困らせてしまう場合もあるだろう
●みんなが“ADT状態”であれば、それがスタンダードになってしまう
●自分一人が“脱ADT”を目指しても、組織がADTのままではダメ
●結局、みんなで足並みを揃えないとうまくいかない
これを読んで頭に浮かんだことは、ひたすら同じ構造の繰り返しだなぁ、というフラクタルのイメージです。テクノロジーによるものにしろ、ちょっとした工夫によるものにしろ、あらゆる解決策は必ず大なり小なり問題の芽をはらんでいるもの。この芽をいかに早く顕在化させられるか、その上で有効な打開策を考え、実行に移せるか、という「解決策」のキャッチ&リリースが常に根底にあるのではないか、と。
1.困った(手作業では追いつかない…)
2.課題の明確化(繰り返し作業は機械化しよう)
3.解決策の考案と実行(コンピュータを活用して効率アップ!)
1.困った(ストレスフル…)
2.課題の明確化(ADT)
3.解決策の考案と実行(注意のキャッチ&リリース)
1.困った(一人でやっていても効果が挙がらない…)
2.課題の明確化(組織レベルで推し進めるには?)
3.解決策の考案と実行(???)
1.困った(???)
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:
といった具合に、えんえんと続いていくのですが(たぶん)、それぞれのセットは同じ構造を持っているわけです。でも、これは見方を変えれば、大きなビジネスチャンスと捉えることもできますね。
原文(43Folders)はこちら。