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勝つコツは一途にコツコツだが、一途の対象はどうやって見つければいいか?



大橋悦夫「コツコツカツコツ」という言葉に出会ったのは『伝説の外資トップが説くリーダーの教科書』という本でした。

勝つ方法はたったひとつだけ。あきらめずにコツコツやるしかないのである。これを私は「コツコツカツコツ」と呼んでいる。

確かにそうだ、と納得しそうになるのですが、コツコツやり続けても方向が間違っていたら勝てないかもしれません。同じコツコツやるなら勝てる方向がいいですよね。

とはいえ、勝てそうに見えるコツコツはすでに多くの人が取り組んでおり、勝ち目は薄そうです。

そうなると、「こんなことやっても勝てるわけがないw」と鼻で笑われているような、あるいは人々の意識にすらのぼらないようなコツコツを目ざとく見つけて、一途にコツコツを始めるしかないでしょう。

そんな一途の対象はどうやって見つければいいでしょうか?

「極端な行動」に思いっきり寄せていく

この点に関して、ロボアドバイザー「WealthNavi」の代表・米山和久さんのお話が面白かったです。

僕は昔からゲームが好きなのですが、戦略系のゲームだと勝ちパターンは決まっていて、とにかく「極端な行動が最適」なんです。前半戦は、ひたすら一番効率的な行動を繰り返して、投資をし続ける。

『信長の野望』でも、とにかく開墾するんです。敵に攻め込まれないギリギリまで兵力を減らして開墾に回し、まちづくりをして国を豊かにする。

そして、あるとき兵を一杯買い集めて、敵を攻めに行き、その地でまた開墾するわけです。『ダービースタリオン』という競馬のシミュレーションゲームも同じで、デビュー前に足に負担のかからない効率的なトレーニングをやり続けて地力を上げたうえで、満を持して出走する。

ゲームの攻略法は、どれもワンパターンです。だから、僕は人生もそれと同じだと思っていて。

「信長の野望」(などの歴史シミュレーションゲーム)をプレイしたことがある方ならすごく分かる話ですね。

最初からバランス良く行動していては突き抜けられないわけです。言われてみれば当然です。

でも、ゲームの場合は前提条件が固定されており、それゆえにパターン化ができるわけで、同じ戦略を現実に当てはめようとしてもうまくいかないのではないか、という懸念があります。

まさに以下の記事で指摘したことです。

現実世界にもときどき「永久パターン」が発生することがあります。まさに現実世界にもバグがあるからです。ただ、見つかり次第このバグは速やかに潰され、同じ方法で「永久パターン」の恩恵にあずかることはできなくなります。

このあたりについては、最近読んだ『リアル人生ゲーム完全攻略本』という本に詳しく書かれていました。

「永久パターン」は、まさに支点がどこに移動しようと、これに連動してずっと支点の上に居続けられるハックということになります。

一見すると、神がかっていますが、これは現実世界のバグを利用しているもののため、どこかで破たんします。「必勝パターン」は常に変わる、ということです。

パターンから外れているかもしれないのに、それでも「極端な行動」をとり続けられる人はまれでしょう。だからこそ勝てる(結果として勝ち残れる)のかもしれませんが、同じくらいの確率で、あるいはもっと高い確率で敗退しそうです。

目の前の仕事を思いっきりちゃんとやる

パターンがころころ変わるというのであれば、パターンを読むのはやめて、真っ向勝負するという戦略もあるでしょう。

以下の記事は「しいたけ」で起業を果たした竹村賢人さんという方のインタビューです。椎茸に至るまでの経緯が非常に面白いのですが、まさにこの「椎茸」という一途に辿りつくまでの道のりにヒントがあります。

経緯をざっくりまとめると、

  • 2010年、新卒で大企業に入社するも、1年で退職
  • 2011年、キャリアに悩んでインドに渡り、現地のIT企業でエンジニアとして働く
  • 2013年、帰国してチームラボに入社
  • 2017年、椎茸祭(会社名)を設立

この中で、チームラボに入社した際のエピソードが興味深いものでした。入社して半年くらいはうまく溶け込めず、社内で誰とも交流ができなかったとのこと。

── そんななか、どうやって自分のポジションを確立していったんでしょうか?

竹村:仕事って、基本的に誰かの役に立つってことじゃないですか。で、役立つことの最たるものって、人が嫌がる仕事を徹底的にやることだと思ったんです。

例えば、システムの保守の仕事ってみんなあまりやりたがらないんですよね。だから僕はそれを引き受けまくって、一人で20本くらい案件を持っていました。

ひたすら連絡がきて、ひたすらそれを修復する。電車に乗っている時もパソコンを開いて、必ず15分以内に復旧させることをポリシーにやっていました。そんなことを3年くらい続けましたね。

まさにここにヒントがあります。「人が嫌がる仕事を徹底的にやること」という「極端な行動」に思いっきり寄せています。

ポイントは、意図して寄せているのではなく、結果として寄せていくことになった、寄せて行かざるを得なくなった、という点です。

竹村さんはこの「戦略」を取ったことで新しいフェーズに進みます。

竹村:その結果、徐々にお客さんから新しい仕事をいただくようになっていきました。保守のタームって担当者と定期的にやりとりをするので、実は新しい案件を取りに行くうえで重要なポジションなんですよ。

入社当初は上司から言われた仕事をやっていたんですけど、だんだんと自分で仕事をとれるようになってきたんです。

選り好みせず、目の前の仕事をちゃんとやる、という戦略です。

自分の「好き」のままに一途に突き進む

仕事以外でも同じ戦略が役に立ちます。人が嫌がる、あるいは人が無意識的に避ける行動をあえて意識的にとり続けるのです。

これには推進力が欠かせません。「好き」というエネルギーです。たとえば、人がお気に入りの飲食店に足繁く通うとき、そこには間違いなく「好き」の後押しがあるでしょう。

それでも「さすがに毎日だと飽きるな」とか「こればっかり食べるわけにもいかないしな」といった、ナチュラルなブレーキがかかり、一途な想いははかなくも途切れることになります。

つまり、一途を遂げ続けるためにはこのナチュラルなブレーキを跳ね返すくらいの強烈な「好き」を自分の中から見つけ出す必要があるわけです。

以下の記事に登場するブロガーのやままさんはまさにそんな「好き」をブログを書くことを通して見つけ出したように思えます。

やままさんは自身のブログで過去37回も「喫茶アメリカン」に関する記事を書いているようですが、ちょいと愛が重すぎませんか!

東銀座にある「喫茶アメリカン」という飲食店に一途に通い続け、レポート記事を37本もアップする。

その結果、メディアの目に留まり、次のフェーズに歩を進めています。

やままさんには、ほかにも通い続けているお店はあるでしょう。その中で、どのお店に通い続ければもっとも早く取材をしてもらえるか、という最適パターンを考えることもできたはず。

でも、そのようにして見つけた最適パターンには付けいる「好き」がないかもしれません。そのパターンは最適ではなくなってしまうのです。

結局のところ、ブログに書いてみることが「一途クエスト」の第一歩ということになるでしょう。

ブログに書いてみることで、自分の「好き」の熱量が再確認でき、書いた記事を読み返すことで探究心が芽生え、おのずと2回目、3回目の訪問につながっていく。

この流れは、以下の記事でZONOさんが話していた、ヘッドライトに照らされた部分だけを頼りに進んでいくというやり方に通じます。

とにかく「いま何がしたい?」をイメージしながら日々やっていく。そうすると、暗闇の部分が少しずつ明確になっていきますよね。「あー、私はとりあえず北に向かっていたけど、近づいてみたら東北よりは上かもしれない」といったことがだんだん見えてくるんです。

「いま何がしたいか?」にもとづいて日々やっていけばいくほど、自分が目標だと思っていたものが具体的に見えてきます。その見えた方向に歩いて行く。

一途の対象を見つけたければ、「どうやれば一途の対象を見つけられるか」を考えるのではなく、目の前にある「好き」を拾い集めながら、目に見えない伏線を回収していくことがコツになりそうです。

対象が自分の、特にマニアックな「好き」である限りは、勝つ余地はあるはずですので。

編集後記