エンジニアのための時間活用術、第6回です。
前回は「タスク管理」を「タスク」と「管理」の2つのパーツに分けた上で「管理」について掘り下げました。要点をまとめると、次の3つのステップになります。
- 1.現在の自分の仕事を知る(どんな作業があるのか?)
- 2.本来の目的に沿って取捨選択をする(不要な作業はどれか?)
- 3.得られた成果を評価する(ビフォー・アフターを見比べる=2は正しかったか?)
これらを踏まえ、今回以降は僕自身が日々の仕事で実践している時間とタスクと進捗の3つを同時に管理する方法をご紹介していきます。
「時間とタスクと進捗の3つを同時に管理する」ことになったきっかけ
そもそもこのようなことを考え始めたきっかけは今から20年前にさかのぼります。
当時は、システム開発会社の正社員で、とあるプロジェクトのメンバーとしてマニュアル作りの仕事を担当していました。
マニュアル作りといってもすでにある旧版のマニュアルを改訂していくものでしたので、作業自体はさほど複雑ではありません。
とはいえ、分量が200ページを超える「大作」でしたので、締め切りまでにきちんと仕上がるかが気がかりでした。
この作業で明らかにすべきことは次の3つです。
- 1.締め切りまでにきちんと仕上がるか?(全体スケジュールを作る)
- 2.残り作業はどれだけあるか?(残り作業一覧を作る)
- 3.今日はどこまで終わらせれば良いか?(日次スケジュールを作る)
1.締め切りまでにきちんと仕上がるか?(全体スケジュールを作る)
まずは何はともあれ締め切りに間に合わせること。
そのためには、締め切りまでの時間で目の前の作業をすべて終えられるのかを知ること。
そのためには、何をすれば「すべて終わった」ことになるのかを明らかにする必要があります。
2.残り作業はどれだけあるか?(残り作業一覧を作る)
そこで、残り作業一覧を作ります。
「早く仕事を終わらせなければ!」というはやる気持ちを抑えて、とにかく思いつく限りの作業を書き出します。
その際、紙に書き出すのも良いですが、おすすめはExcelに書き出すこと。今ならGoogleスプレッドシートでもいいでしょう。WorkflowやDynalistといったアウトライナーでも良いですが、後述する「所要時間」を計算することになるので、ExcelかGoogleスプレッドシートのほうがベターです。
2列を使い、1列目に番号を、2列目に作業内容を書きます。
以下のように10刻みで書くと後から思いついたことを割り込ませることができるので便利です(番号は並び替える際に使います)。
10 マニュアル全ページをざっと見る
20 図表の一覧を作る
30 5ページだけ改訂作業をやってみて時間を計る
例えば、以下は後から「つまずきそうなページに付箋を貼る」という作業を後から追加しています。
10 マニュアル全ページをざっと見る
15 つまずきそうなページに付箋を貼る
20 図表の一覧を作る
30 5ページだけ改訂作業をやってみて時間を計る
このように、実際に仕事に取りかかる前に可能な限り作業を洗い出すことによって、仕事の全貌が一望できるようになります。
やみくもに仕事に取りかかって出口の見えないトンネルをひた走るよりも、コース全体を把握した上で現在地を確認しながらマイペースで走る方が不安も少なく、確実にゴールに近づくことができるはずです。
もちろん、取りかかってからでも、事前に洗い出しきれなかった“伏兵”的な作業もあるでしょう。それでも、事前に作業を洗い出す目的はコース全体を把握することですから、「走り始めたら雨が降ってきた」というような予測困難な事態については潔く諦め、とにかく前に進むことです。
今回の仕事であれば、次のような場合がこれに当たります。
ざっと見た限りでは1ページあたり15分あれば終わるだろうと踏んでいたものの、実際にやってみたらシステムの開発者や担当者に質問をしたり、調べたりといった付加的な作業が必要になるページがあることに気づいた。
ここで大事なことは、こういった予測困難な事態が起こりうるということを受け入れることです。
具体的には、そのための時間を空けておくこと。もちろん、予測困難なのですからどれだけの時間を空けておけばいいかはわかりません。でも、たとえ15分でも「ここは何も予定を入れてはいけない」とブロックしておくことによって、精神的にラクになります。
こうして作業を洗い出したら、今度は作業ごとにだいたいの所要時間を書き込んでいきます。
10 マニュアル全ページをざっと見る(30分)
15 つまずきそうなページに付箋を貼る(?)
20 図表の一覧を作る(60分)
30 5ページだけ改訂作業をやってみて時間を計る(30分)
こうすることで、ざっくりとではありますがトータルでかかる時間が割り出されます。上記の例ではざっと2時間+αというところです(30分+?分+60分+30分=120分)。
さらに、所要時間を考えようとすれば、おのずとその作業を実際にどのように行うかに意識が向かいます。
すると、どれぐらいの時間がかかるのか想像がつかないような作業については、手が止まるはずです。上記の例では「つまずきそうなページに付箋を貼る」がそれです。次の2つが原因です。
- 1.「つまずきそうなページ」がいったい何ページあるのかが不明
- 2.「つまずきそう」の判断基準が不明
つまり、所要時間を見積もろうとすることによって、仕事に対する自分の認識の甘さを事前に知ることができます。
「まぁ何とかなるだろう」という、良く言えば楽観的、悪く言えば「えいやっ」なスタンスの入る余地がなくなるわけです。
こうして、すべての作業について具体的に何をすればいいのかを、所要時間とともに明らかにできれば、あとは行動を起こすだけになります。
3.今日はどこまで終わらせれば良いか?(日次スケジュールを作る)
ここまでのプロセスは「あとは行動を起こすだけ」の状態に至るためのステップでした。言い換えれば、時間とタスクと進捗の3つを同時に管理するための準備作業です。
- 仕事全体でどれだけの作業があるのかを把握し、
- トータルでかかる時間を見積もり、
- その上で日々のスケジュールに落としていく。
とは言え、会社で仕事をする限りはこの段階でやっておくべきことが1つあります。
これについては、また次回に。
まとめ
時間とタスクと進捗の3つを同時に管理するための準備ステップ:
- 1.締め切りまでにきちんと仕上がるか?(全体スケジュールを作る)
- 2.残り作業はどれだけあるか?(残り作業一覧を作る)
- 3.今日はどこまで終わらせれば良いか?(日次スケジュールを作る)
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参考文献:
2010年に読んで、その後の僕の「タスク管理」に影響を与えた一冊。それまでに実践してきた「タスクシュート」の考え方と一致している部分が多く、共感を覚えつつ繰り返し読みました。短くシンプルでありながら実に的確な指摘の数々に唸らされます。
以下はそんな指摘の一部。
- 最初の1時間に最も重要な仕事に取り組む
- 一日の初めに今日のスケジュールを立てる
- 1つの作業を終えたら、リストに書かれている次の作業を開始する
- リストの順に作業を行う
- 何かを達成したかったら、目標を立てる
- 目標を達成するための手順を考えて書く
- 大きなプラス効果をもたらす大規模なプロジェクトを1つ実行する
- 大きなプロジェクトは、小さな段階に分割するか、大きな区切りを設ける
- 頼まれたことを記録する
- 割り込み仕事が舞い込んできたら、スケジュールを組み直す
- とにかく着手する
- 作業に取りかかろうと努力する
- 少し先の未来の効率を優先する
- 一回考えれば済むことはルーチンにする
- 悩んだときの答えは「イエス」
- 答えが常に「はい」である質問のストックを増やす
- 終業時間の30分前に1日の仕上げを行う
2006年刊行の本書ですが、未だにAmazonに在庫がしっかりあり、長く売れ続けていることがうかがえます。