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知的生産の技術本には何かが書かれるべきか


unsplash-logoStefan Steinbauer

倉下忠憲文章を書くことには、いろいろな難しさが含まれています。

たとえば、「何を書くのかを決める」ことの難しさです。テーマはどうするのか。どこから持ってくるのか。どう掘り下げるのか。どんな切り口を持ち出すのか。はたしてそれは面白いのだろうか。検討課題は多々あります。

解決策としては、普段から着想をメモしておくことと、発想法などを用いて新たな視点を切り開いていくことなどがあるでしょう。

もちろん、難しさはそれだけではありません。

着手

たとえば、「書き始める」難しさもあります。

構想ばかりが膨れあがってなかなか着手できないこともありますし、「なんとなく気が乗らない」といういかにも人間らしい理由もあります。単純に忙しすぎて執筆時間が確保できないこともあります。

こうしたときは、タスク管理なりスケジュール管理が必要となります。

文章を書く中での難しさ

もちろん、「日本語を扱う」という意味での、純粋な文章を書く難しさもあります。

言いたいことがうまくいえない。話がなかなかまとまらない。わかりにくい文章、読みにくい文章になってしまっている。ここにも粒度はさまざまありますが、ともかく「スラスラと書いていける」ことは、よほど特異な才を持たない限りは難しいでしょう。

こうした問題には、作文技法一般が役立ちます。

書き上げる難しさ

書き始めたとしても、今後は書き上げる難しさがあります。話が広がりすぎてまとまりきらない、といったことではなく、モチベーションや体調管理の面で継続できない、という理由です。

あるいは、締切があるのに納得できる仕上がりになっていない、というような失敗もあります。

これらは全般的にセルフマネジメントの課題ではあるでしょう。

書いた文章を読んでもらう難しさ

直接的に文章を書くことの難しさではないかもしれませんが、自分が書いた文章を読んでもらう難しさもあります。

依頼された原稿を書き上げたらそれで終了、という知的生産ならば問題ないのですが、在野の知的生産の場合は、そのパブリッシュメントも含めて自分で行わなければなりません。

これはプロモーションの技術が必要ですし、マーケティングの視点も欠かせないでしょう。一周回って、ここから「何を書くのか」ということを考えることもありえます。

幅広い技術を含む知的生産の技術

以上のように、一口に「文章を書くこと」といっても、その内外ではさまざまな課題が発生します。よって、知的生産を達成しようと思えば、幅広い分野の技術(ノウハウ)が必要です。言葉を操作して文章を作成する技術だけが知的生産の技術ではありません。あるいは、定義を充分に広く取れば、本稿で列挙した技術もまた知的生産の技術に含められる、とも言い換えられます。

最近の傾向は、一つのツールの紹介や、一つの技法の解説に特化したコンテンツが多いようですが、しかし実際的に考えれば、綜合格闘技的というか、知的生産の技術のトータルコーディネート的なものが必要なのではないでしょうか。おそらくそこでは、技法とツールの包括性が、あるいはそれによって構成される一つの系の視点が鍵となるでしょう。

さいごに

そもそもとして、こうした話題に先鞭をつけた『知的生産の技術』や『知的生活の方法』などの書籍では、知的生産活動(知的生活)全般が扱われていました。そして、だからこそ、そこからは「生活の臭い」のようなものが漂ってきた印象があります。

その意味では、現代のノウハウは非常に製品的というか、小綺麗にまとまりすぎている印象すらあります。それが悪いことなのかどうかまではわかりませんが、本当にうまく使えるのだろうかという点は心配になります。

ともあれ、そうした話は横に置くにしても、現代までで知的生産の技術はさまざまに展開し、発散を続けてきました。一度収束させておくことは、きっと有用だろうなと想像します。

▼編集後記:
倉下忠憲



毎週同じことを書いているような気もしますが、追い込み作業中です。というかもうAmazonページも出来ちゃってます。けつかっちんですので、頑張らないと。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中