「名は体を表す」と言いますが、ネーミングはとても大切ですね。
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以下の記事を読みました。
» 【ご協力を!】タスク管理ツールに名前を付けたい! – ForGetting Things Done
これを機に私のタスク管理ツールに名前を付けたいと考えております。
……ですが親分。私はどうやらネーミングセンスに欠けるようでございます。考えても「コレダッ!」と膝を打つような名前が逆立ちをしても出てこないのです(逆立ちはできませんが)。
こういうことってよくありますよね。いや、そんなに頻繁に名付けの機会はないかもしれませんが、むしろたまにしか発生しないからこそ、なかなか「ネーミングセンス」なるものは鍛えられません。
そういうときは、発想法です。
ステップ1:属性列挙
まず紙を用意しましょう。A4サイズのコピー用紙か、なければB5くらいのノートで。ある程度広く書けるものなら何でも結構ですが、罫線はない方がやりやすいです。
その紙の中心に、適当なサイズの円を描きます。中身は空白でOKです。そこには将来名付けられるであろう名前が書き込まれますが、現時点ではもちろん真っ白です。
その円を中心にして、適当に、自由に、思いつくままに、その対象に関する事柄を書き込んでいきます。上のツールを例にすれば、そのツールの動作、特徴、機能、想定ユーザー、提供できる利便性、可能性、将来性……を、なんでも書き込んでいきます。
単語でも構いませんし、フレーズでも構いません。長い文章でなければどんな形でもOKです。プラス的なものだけでなく、マイナス的なものも書き込みます。
ステップ2:属性展開
そうして一通り頭を絞り尽くしたら、書き出した要素を展開してみます。
たとえば、「素早い動作」と書き込まれていたら、そこからイメージできる別の言葉を想像してみます。スピード、クイック、ファスト、などが思い浮かぶかもしれません。それらを「素早い動作」の周囲に書き込みましょう。チータ−、F1カー、iPhoneのバッテリーの減り具合、などが思い浮かぶかもしれません。それらも周囲に書き込みます。
これが第一弾の展開です。
さらに、そうして書き出した言葉からもさらに展開してみます。「ファスト」から、ファストフード→マクドナルドが思いつくかもしれません。そこで、「マクドナルドがスピーディーに提供するためにやっているのは、どういうことだろうか?」と考え、自分のツールとの類似点がないかを探ります。もし見つかれば、それは良い言葉と候補となるでしょう。
あるいは、「チーター」から、狩りのイメージが思いつくかもしれません。狩りはハントなので、上記の例で言えば、「タスクハンター」という名前案が思いつきます。そこからのさらなる連想で、「タスクフィッシング」という名前も浮かんできます。
というような展開が、第二弾の展開です。
ついでに、マイナスのものがあるならば、それをプラス的に言い換えられないかも考えてみましょう。「重い」なら「重厚感」にしてみる、というようなことです。
ともかくこうして、紙の上に言葉をひろげていきます。
ステップ3:組み合わせトライアル
上記が終われば、紙の上には相当な数の言葉の破片(ピース)が集まっているでしょう。今度は、それらを組み合わせていきます。
短い言葉同士なら、それらを組み合わせる。少し長い言葉同士なら、それぞれの部品を入れ換える。何しろ素材がたくさんあるので、ここから生まれる組み合わせは膨大です。それらの感触を一つひとつ確かめていきます。
感触を確かめるとは、語感や語呂の良さもありますが、それ以上に「この言葉は、対象の特徴を適切に言い表しているだろうか」と自問することが大切です。いくら響きがかっこよくても、本質とズレた名前をつけてしまえば、「名は体を表す」とはなりません。ピントがあった名前にするのがネーミングの肝です。
しかしながら、ピントがあっているかどうかは、案外事前にはわからないものです。むしろ言葉の組み合わせを作ってみて、はじめて確かめられるものだと言えるでしょう。
不要なピースの発見
上記の確認作業を行えば、雑多に上がった言葉の多くが不要であることがわかります。言葉の組み合わせを「これじゃない」と否認していくたびに、急激に組み合わせの数が減っていくわけです。だから、事前にたくさん出ても心配する必要はありません。
「だったら、最初から本質的な言葉だけを出せばいいんじゃないか」というツッコミが入りそうですが、やっぱり事前の段階では何が「本質的」なのかはわからないことが多いので、とりあえず出してみて確かめることが必須です。
ステップ4:語形変化
言葉の組み合わせ的に、コアの特徴をついた言葉が生まれたとしても、若干語呂が悪い場合は、語形を変えてみましょう。
先ほどの「タスクハンター」なら「タスクハンティング」や「タスクハント」がありえますし、「タスク狩り」なら「タスカリ」と縮小してしまってもよいでしょう。かなり言葉遊びに近い感覚です。
意味よりも、リズムや響きを整えていく工程であり、言ってみれば微調整なのですが、こうした工程を通す中で、言葉の意味にも「遊び」(≒二重の意味)が生まれてくることもあります。
さいごに
もしステップ3の段階で「これっ!」という言葉が見つからなければ、時間を置いてステップ1から再チャレンジしてみるのが良いでしょう。なかなか面倒ですが、名付けは大切なので、やってみるだけの価値はあります。
結局のところ、重要なのは名前を考えることではなく、その対象について考えることです。「それは何なのか?どう受容されたいのか?」──この思考についての答えが「名前」として表出される。それが一番です。
▼今週の一冊:
今回の記事はいろいろな発想法のカクテルなわけですが、大量の発想法について知りたいなら以下の本ですね。
どうやら、次の著作も発売になるようで今から楽しみにしております(追記:11月17日に発売されました!)。
» 問題解決大全――ビジネスや人生のハードルを乗り越える37のツール
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ちなみに、属性展開を行うときは類語辞典や国語辞典がたいへん強力なサポーターとなります。自分一人の頭だけで考える必要はありません。その意味では、複数人で行ってもいいですね。同期でも非同期でもやりとりの中で刺激される発想は必ずあります。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。
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