マンガ「ドラえもん」に「ツモリガン」という道具が出てきます。
オートマチック拳銃の形をした道具で、これで相手を撃つと相手は睡眠状態に陥り、今やろうと考えていた事を夢で見る。そして相手は、やろうとしていた事をやったつもりになっている。
という機能があるのですが、ここで注目したいのは「やったつもりになる」という部分です。
前回、以下のようなことを書きましたが、
頭の中だけで「よし、これで書こう」と意気込んで書き始めることは、盲牌で麻雀を打つようなもので、見た目はスマートかも知れませんが、思い違いや勘違いにより、最終的に文章として完成させる時にうまく“絵柄”が揃わない可能性も出てきます。
これは、頭の中で考えるレベルと、実際に手を動かしてやってみるレベルとでは出てくるもの(前者はパッと思い浮かんだもやもやとしたアイデア、後者は目に見える文字や図)の質が異なることに起因するズレと言えます。
ただ、文章を書く場合は、頭の中に何のアイデアもない状態でおもむろに書き始め、書き進めるうちに、書き進めたことによって初めて見えてくる発想やアイデアに乗っかって、さらにどんどん前に進むことができる場合もあります。
大宅壮一氏は、歩きながら頭の中で原稿用紙を広げ、そこに文章を“書いていた”と言われています。その状態で書斎に戻り、すでに頭の中で“書き上がった”原稿をリアルな紙の原稿に転記していくわけです。
これは、実際には目に見える形で文章を書いているわけではないものの、実際に書いているのと同じ現象が脳内で起こっているのではないか、と考えられます。実際には手を動かして書いているわけではないのに、実際に書いたのと同じような体験が刻まれている、すなわち、想像した内容と現実に行った行動とを脳が区別できない状態になっているのではないか、ということです。
ちょうど、冒頭で紹介した「ツモリガン」で撃たれた時の症状と言えるでしょう。
これを応用するなら、現実と区別できないくらいのリアルさで自分の想像を膨らませ、イメージを広げることでしょうか。
どこで読んだかは忘れてしまいましたが、株式会社ヤッパの伊藤正裕社長は毎晩寝る前に翌日の予定を詳細にシミュレーションしているそうです。この過程で、例えば打ち合わせがあれば、自分がどのような言葉を発するのか、相手からどんな質問をされるのか、質問をされたらどのように答えるのか、というレベルにまで分解して頭の中で試行を繰り返すのだとか。
ここまで詳細にイメージしてあれば、実際にその打ち合わせの場に身を置いたら、既視感を覚え、しかも自分がどう行動するかについてもすでに試行済みなわけですから、非常にスムーズに話が運びそうです。
もちろん、常に想定通りにコトが運ぶとは限りませんが、予め試行済みのシナリオが頭の中で完成していれば、現実に対するときの不安が軽減されるでしょう。
では、このようなシミュレーションをするには具体的にどうすればよいのでしょうか、…という詳細については、また次回に。。