前回は、本の情報は、その本を読み終えた人(≒読者)に聞くのが一番だ、というお話をしました。
では、いかにしてそのような人を見つけるのか。今回は、それについて書いてみます。
人付き合いと本付き合い
必ずしも100%ではないものの、友人の友人とは友人になりやすいものです。よって、まったく見知らぬ人に声を掛けるよりも、既存の友人関係を手がかりに、人とのつながりを開拓していくのが効果的です。
上記は、人付き合いの話ですが、同じようなことは本付き合いにも言えるかもしれません。自分が好ましいと思う本を好ましいと思う人が好ましいと思う本は、自分も好ましいと思う確率は結構高いものです。それこそ、見知らぬ人の好みよりもはるかに信頼度は高いでしょう。
ということは、そういう人を見つけると、読書ライフは楽しくなりそうだと予測できます。
感想の検索を通して人を捜す
では、どうしたらそんな人を見つけられるか。答えは簡単で「検索」することです。
まず自分が好きな本のタイトルをいくつか思い浮かべます。できれば、ベストセラーな本は避けた方がよいでしょう。まったく無名というわけでもないが、さりとて超絶有名というわけでもない。その辺りがちょうど良いラインです。
あとは、その書名でGoogleを検索すれば、その本の感想を書いているブログが見つかるかもしれません。それが高評価であれば、そのブログは「アンテナ」(※)に加えておくのがよいでしょう。
※RSSリーダーに加えたり、お気に入りに設定したり、ということです。
書名だけでうまくいかない場合は、書名+書評や、書名+感想というキーワードで検索してみるのもよいでしょう。そういう工夫で書評ブログの森を探索していきます。
とは言え、世の中には、ほとんど読んでいないのに話題の作品だから一応褒めておく、という姿勢のブログもあるので、その点には注意が必要です。ベストセラーを避けたのもそういうのに遭遇しないための工夫です。もし、気になるのであれば、見つけたブログのその他の記事も合わせてチェックしておくと、「アンテナ」に加える判断がしやすくなるかもしれません。
他人の本棚を除く
本によっては、まったく感想記事が見つからない、ということもあるでしょう。そういう場合は、ダイレクトに他人の「本棚」をのぞき見るのも一手です。
ウェブ上に本棚を構築するサービスはいくつかあり、たとえば、
といったものがあります。それらのサービスで、同じように書名で検索すれば、その本を登録している人が見つかります。
後は、その人の「本棚」を覗いて、自分と傾向が近しいのか、それとも遠いのかを確かめて、「アンテナ」に加えるかどうかを判断するとよいでしょう。
その際のポイントは、「だいたい似てるけど、違うところも多い」人を見つけることです。まったく同じであれば、新しい発見はありませんし──その人が見つける本は、きっとあなたも見つけることでしょう──、違い過ぎれば、見知らぬ他人と変わりありません。ほどほどの重なりがちょうどよいのです。
継続的ウォッチング
上記のような検索で、ブログなり本棚なりを見つけたら、その中の人がSNSを利用していないかもチェックしてみましょう。もし、利用しているなら、ブログや本棚サービスに出てこない本の情報が出てくるかもしれません。
たとえば、ちょっとした本の感想や、気にはなったけど買ってはいない本の情報、といったものです。そうしたこぼれ話や、リアルタイム性の高い情報も、本選びには役立ちます。
さらに、そのように継続的に情報を確認していると、最初は相性が良いと思っていた人でも、「あっ、ちょっと違うな……」と思うようになるかもしれません。数冊程度でわかることと、十数冊でわかることには、やはり違いがあります。
できるだけ、単発で判断するのではなく、中長期的な情報から判断するようにすると、自分と相性の良い人が見つけられるようになるでしょう。
さいごに
上記のようなウォッチングを続けていると、自分で書店に行って本を探すことで得られる情報だけではなく、多様かつ大量の本の情報が集まるようになります。あえて言えば、自分がウォッチしている一人ひとりがエージェントとなって、自分に本の情報を届けてくれる環境ができあがるのです。
大量の本の中から、面白い本を選び出すためには、そのような下準備が欠かせません。ひとりの力だけではなく、複数人の力を合わせること。それが一つのコツです。そしてこれは、フィル—バブルにはまりこまないための工夫でもあります。
▼今週の一冊:
自著(というかなんというか)です。かーそるの第二号が完成しました。具体的な告知はまた次回させていただきますが、とりあえずお知らせまで。
Follow @rashita2
いよいよ、かーそる第二号が発売となりました。なんとか、7月中に間に合った恰好です。今回のボリュームたっぷりですので、ちびちびと愉しんでもらえる一冊となっています。よろしくお願いします。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。
» ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由