セミナーやワークショップにつきものなのが、質疑応答の時間です。講義が一段落したところで、講師が、
「ここまでで何かご質問はありますか?」
などと受講者に向かって問いかけるあれです。
僕自身も、毎月のタスクカフェを初めとするセミナーやワークショップの中で、当たり前のようにこのフレーズで問いかけを行っています。
が、誰一人として質問をしてくださらないことはけっこう多いものです。
- 「ここまでで何かご質問はありますか?」
- 「(しーーーん)」
重苦しい沈黙が会場内を支配します。
この沈黙が講師にとって耐えがたいものであるがゆえに、早々に、
- 「し、質問がないようなので先に進めます!」
と切り上げたくなるもの。
ですが、ある人からのアドバイスで、この考えを改めました。
沈黙が続いても、しばらくはガマンする?
ひと言でいえば、沈黙が続いても、しばらくはガマンせよ、というのです。その間、受講者一人ひとりの顔に順番に目を向けていき、表情を読み取るように努めます。
耐えがたいと感じているのは受講者にとっても同じことで、むしろ、
- 「こんな質問をするのは迷惑なんじゃないかな」
という迷いから、ほかの受講者がもっと「マシ」な質問をするのを待ってしまうわけです。
- 「誰も質問しないようなら、じゃぁ、質問させてもらおうかな」
ということで、満を持して手を挙げる。
このように受講者にとっての時(=タイミング)が満ちるまでは、講師はガマンして待て、というわけです。
質問を引き出すための問いかけをする
とはいえ、この方法をしばらく続けてきていますが、出ないときは出ないので、待つ時間が惜しく感じられます。
何よりも「待つ」というのは対策と呼ぶにはあまりにも受動的です。
もっとこちらから働きかけるような、積極的な対策を講じたいと考えるようになりました。
例えば、以下のような問いかけ方です。
- いまお話した○○のやり方ですが、ご自身でもすぐにできそうですか?
- 今日のお話を会社に持ち帰って、すぐにチームに展開できそうですか?
- 実践するうえで不安に感じることはありませんか?
「質問はありませんか?」というのはいかにも丸投げだということが分かります。
むしろ、講師の側が質問をすることで、受講者の中から質問を引きずり出すようにする。そのためには、自分が話した内容を受講者目線でとらえ直す必要があります。
- 「ここで躓くんじゃないか?」
- 「こういう不安があるのではないか?」
といった仮説を立てて、これに沿った質問を考えるのです。
こうすることで、受講者の方に“転ばぬ先の杖”を提供することになり、「実践可能なレベルにまで高めた知識」を持ち帰ってもらえるようになると考えています。
個別に尋ねてみる
あるいは、これは僕の場合ですが、会場内にいるパートナーの佐々木さんに振ることもあります。
- 「佐々木さんはこういうときはどうしていますか?」
- 「佐々木さん、何か補足があれば…」
不意に振られてしどろもどろになることもまれにありますが、たいていの場合は「待ってました」とばかりに、長々と自説を語ってくださるので、けっこうホッとします。
この“佐々木節”が呼び水となって、「そういえば…」という具合に受講者から質問の手が挙がることも少なくありません。
佐々木さんのようなパートナーがいなければ、何かを話したそうな受講者を見つけて、個別に「どうですか?」と尋ねてしまうのもいいと思います。
ワークをやっているなら、ワークシートに書かれている内容をもとにツッコミを入れても良いでしょう。「先ほど、チラッと○○という言葉が目に入ったのですが…」などと問いかければ、何か話してくれる可能性は高いはずです(「いえ、別に…」とつれない返答をされる場合もありますが…)。
まとめ
ということで、沈黙に耐えてひたすら待つのではなく、こちらからやれることをどんどん仕掛けていきましょう。
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