先日「夏の知的生産とブログ祭り」というイベントに参加しました。
そこで「断片からの創造」というプレゼンテーションを行ったのですが、そのスライドを少し変わった手法で作ったので、今回はそれを紹介してみたいと思います。
WorkFlowyでアイデア出し
まず、クラウド・アウトライナーであるWorkFlowyでの、徹底的なアイデア出しです。
テーマ(「断片からの創造」)のトピックを立て、その下に「断片」と「創造」というキーワードに関係しそうな思いついたことを書き並べていきました。階層については特に気にしません。作るにしても1〜2階層までで、あとはできるだけフラットに並べていきます。ともかく思いついたことをそのまま出すのが、このステップの主眼です。
スライド作りの初期段階の一週間は、この作業にじっくり取り組みました。プレゼンテーションソフトなどにはさわらず、ただアウトラインを育てていくことに注力したわけです。
結果として、すさまじい長さのアウトラインができました。
紙への書き出し
このままアウトライナー上で流れを組み立てていくこともできますが、私はそこで紙に移行しました。
A4用紙(コピー用紙です)を拡げ、WorkFlowyのアウトラインを眺めながら、要素を配置していきます。バラバラだった断片を小さなかたまりとして捉え、それぞれの関係性を踏まえながら、情報同士のつながりを見出していくのです。
※紙が折れているのは、胸ポケットに入れて持ち歩き、時間があるときにせっせと書き足していたため。
ただしこれは、たたき台というかプロトタイプというか、「とりあえずやってみる」ものでしかありません。この段階で「正確な最終図面」を意識する必要はまったくありません。だいたい、いきなり精緻にまとめられると考えること自体が誤りです。あくまで、お試し気分で、紙の上に要素を書き並べていきます。
Re:紙への書き出し
上の作業を行うと、頭の中に「適切な」サイズの情報のかたまりができあがってきます。こうなるとしめたもので、あとはそのかたまりをいかに並べるかを決めれば実際のスライド作りに取りかかれます。
ただし、紙の上にペンで書き込んだものは、iPadなどと違って移動させることができません。なので、付箋に活躍してもらいます。
少し大きめの付箋を使い、そこに要素を書き込んでから、そのサイズに合わせてハサミで切り取りました。21世紀にもなって、自分は何をやっているんだろうと少し悲しい気持ちになったことはたしかですが、空白部分の多い付箋は使いづらいので仕方がありません。
とりあえず、こうしてかたまりごとに付箋化された情報群を眺めながら、「最初にこの話、次にこの話」といったストーリーラインの組み立てをしていきます。
そしてスライドへ
付箋の段階で厳密に順番が決まらなくても、大まかに方向性が決まればそれで十分です。Keynoteを立ち上げて、スライド作りに着手します。実際にスライドを作り、並べていくうちにさらに順番が変わったり、追加する要素が見つかることも珍しくありません。
そうしてできあがったスライドがこちらです。
スライドだけ見ても内容はわからないと思いますが、紙や付箋に書き出したようなイメージ図が登場しているのがわかるかと思います。
さいごに
このような進め方をすると、実はスライド作りに着手する前の段階、つまり付箋のパーツを並び替えているところで、もう9割方はスライドの内容は完成しています。というか、スライドなしで、そらでそのテーマについてしゃべってください、と言われても__話の接続は多少悪くなるでしょうが__十分に対応できます。頭の中では、そのテーマについてはもう固まっているのです。スライドは、その内容を転写しているに過ぎません。
しかし、この過程すべてを外部ツール(WorkFlowy、紙、付箋)なしで完遂できるかというと、これは無理な話です。すべては自分の頭の出来事なのですが、それは外部ツールの補助によってはじめて高稼働してくれるようになります。
ようは、「考える」ことはどこまでいっても頭の仕事なのです。ツールが「考えて」くれるわけではありません。しかし、ツールの補助も馬鹿にはならない、ということもまた確かです。
▼今週の一冊:
「時間をかけずに成功する」というと、すこし語弊があるかもしれません。つまり、「楽して」とか「苦労なく」みたいに聞こえるのです。
実際本書で紹介されている人たちは、たしかに圧倒的な速度で「成功」しているのかもしれませんが、やっぱり時間はかかっています。「短期間で圧倒的な成果を手にする」みたいことではありません。
それでも、同じ時間や労力をかけるなら、どこにそれをかければいいのか、については意識しておきたいところです。
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▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。
» ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由