天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々 | |
メイソン・カリー 金原瑞人
フィルムアート社 2014-12-15 |
ありがちな本とも言えますが、個人的にはやはり面白いです。
このような本は、天才になりたくて読むというわけではないし、天才の意外な一面を知りたいから読むというものでもありません。
そうではなくて、いちおう名前くらいは知っている人の仕事の内実を垣間見ることで、少々自分のモチベーションを刺激するのに使います。
161人の仕事に関する話が収録されています。
その大半は、明らかに聞いたことのある人か、どこかで聞いたことのある人です。
前者としてはベーコン、モーツァルト、フロイト、アインシュタイン、村上春樹、カント。
後者としては、トロロープ、マティス、ボズウェル、サティ、ガーシュウィン、グールド、オコナー、ウッドハウスといったあたりです。
仕事をするのは大変だ
他人の仕事ぶりで意外と意欲を挫かれるのは、ラクラク仕事をこなしているように見える時です。
人がラクラク仕事をやっているからと言って、その人を責めても仕方がありませんし、結局自分が無能であるか、やたらと怠け者であるかのどちらかのように思えて、ゲンナリするのです。
しかし、天才としか思えないような人であっても、ラクに仕事をこなしているわけではないのです。
その証拠に、どの天才たちのエピソードにも、やたらとコーヒーが出てきます。コーヒーというのは、明らかに何かの期待と逃避を象徴しているように思えます。
コーヒーが希望と逃避の象徴として、もちろん個々人によって異なる記号も次々と登場します。効果が疑わしいジンクスのようなものです。
たとえば作家のトニ・モリソンにとってそれは「日の光」でした。
執筆のために、だいたい五時頃に起き、コーヒーを作って「日の光が差してくるのをながめる」のが毎日の儀式となった。この「日光をながめる」という部分が特に大切だった。
この「日光」が人によってはジントニックになり、人によっては散歩、人によっては葉巻になり、人によっては会食になり、変わったところで「さかだち」となるわけです。
もちろんこうしたジンクスを見つけることで、仕事が進む限り言うことなしなのですが、結局のところ日光をながめたりするのは、やはり「仕事が大変だから」なのです。
つまり、日光をいくらながめてもちっとも文章が書けなかった日が、たくさんあったに違いありません。
「作家業はきついなんてもんじゃない。悪夢だ」ロスは一九八七年にそういっている。
石炭を掘るのはきつい仕事だが、作家業は悪夢だ……
仕事には生活がかかっている以上、つらいものだと思いますし、そのつらさについての表現も様々ですが、どう言おうとつらいからこそ、コーヒーが欠かせなくなり、それでも遅々として進まないから、熱いお風呂に入ってみたり、日光をながめる儀式を繰り返すはずなのです。
天才だけが知っているいいやり方なんて、ないということです。
「腹をくくる」という言葉がありますが、自分で前に進めなければ、一歩も前に進まないという、みもふたもない事実ですら、「確信する」のは大事なことです。
私などはつい、妄想してしまいます。それで仕事が進んだことは、ただの1度もありません。そういうことで時間をつぶす自分がいやになりますが、天才たちだって、コーヒーをがぶ飲みしては、日光をながめたりして、そんなことで仕事が進むという幻想を抱いていたのです。
そう思うと、少し気が楽になります。やっていることが相当ダメでも、天才たりうる。私は天才である必要もないのだから、やっていることはもっとダメでもいいのです。仕事を進めさえすれば。
天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々 | |
メイソン・カリー 金原瑞人
フィルムアート社 2014-12-15 |
Follow @nokiba
第2回のテーマは「集中を生み出す時間管理」です。
(なお、こちらのセミナーは「心理ハック」というテーマで一貫させてはおりますが、シリーズものではありませんので、第2回に参加いただくにあたって、第1回参加は必須ではありません)
時間管理というのは、誰もが「望むところ」ではあるものの、ビジネス書のなかでは必ずしも「うけ」がよくないという、不思議な不変のテーマです。
1つには「時間を作っても、それを何に使うの?」という、時間貧乏の筆者にはうらやましい疑問がたえず発されるせいかもしれません。
あるいは「時間管理なんかうまくいきっこない」というほとんど絶望的なあきらめの念があるのかも知れません。
私は「時間管理」が可能だという「セクト」にくみする人間ですが、「時間管理」によって成し遂げるべきことは「集中」です。
集中するために時間管理するのです。
時間管理とは、集中する時間を少しでも多くもてるようになるための、方法論です。
繰り返しになりますが私は、時間管理は可能であり、可能にする方法がある、という考えをずっと抱いてきています。
そういう方法に興味ある方に、ご参加いただけると幸いです。