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来年の目標を立てるときに1つだけ気をつけること



佐々木正悟 それは、目標を1つだけにしぼり、他のことに1年間手を出さないということを、同時に目標とすることです。

最近、久保ミツロウさんの『モテキ』というコミックを読み出しています。

その設定が、まさに、私たちが「目標を達成できない大きなトラップ」そのものです。つまり、コミックを面白くするための設定ではあるのですが、目標を1つに絞り込めないばかりに、たった1つの目標すら達成できなくなるというワナなのです。

このコミックはあまりに戯画化されているものの、基本的には私たちの身の回りのどこにでも見られるものです。悪の元凶は「モテ期」にあるのです。主人公は「あまりにもモテない」前提があるから、「モテキ」によって大いに混乱し、それがマンガのおもしろさを支えています。

しかし実際には、モテようとモテまいと、同じことです。

目標を1つに絞り込めないところへ、魅惑的な複数の選択肢が呈示されるのは、最悪です。1つだけなら確実に達成できる目標すらふいにするからです。その出来事は意識の表面でしっかりと展開されるため、後悔が必ず心に残るでしょう。

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扉を閉じられない心理



この心理的混乱による失敗は、シーナ・アイエンガー やダン・アリエリーといった、新しいタイプの心理学者たちが繰り返し指摘するリスクです。現代的な人生の困惑を生み出すものであり、多様な選択肢の「すべて」を何らかの形で確保しようとするあまり、それらに振り回されているうちに、ズルズルと時間をムダにしてしまうワナなのです。

人はこのリスクをよく知っています。「二兎追うものは」の、有名すぎることわざがあるくらいです。

しかし理性が何を知っていようと、多様な選択肢の中からつまらないものは「捨てる」という合理的な行動を取ることは、実際難しいものです。その難しさを、各種の心理実験はよく実証してしまっています。

扉から扉へ走りまわる人間の行動は充分に奇妙だ。しかしもっと奇妙なのは、ほとんど価値のない扉—消えかけているチャンスや、自分にとってほとんど興味のないチャンス—を追いかけたいという抑えがたい衝動だ。

たとえば、先ほどの女子学生のダナは、ふたりの男性のうちひとりはまず見込みがないとすでに結論を出していた。ならばなぜ、もうひとりの男性との関係を危険にさらしてまで、魅力に欠ける彼氏とのしおれかけた関係に栄養を与えつづけるようなまねをしたのだろう。

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年末年始のワナ

この問題をいやが上にも浮かび上がらせる時期があります。ちょうど今ごろ。年末年始です。

多分に心理的なものでしかないにせよ、年末、12月というのは、「扉がいっせいに閉まる」象徴的な季節です。

状況にもよりますが、12月というのは「どうにかこうにかにせよ仕事がよく進む月」です。それは「扉が閉まっていく」から、無駄なことを捨てるのがやりやすいのです。

締め切り、といっても心理的な締め切りなのですが、それでも、あるいはそれだからこそ、人は「年内にこれらを片づけてしまおう!」という明確な目的を意識できます。「終わらせること」の優先度が上がる分だけ、「ついでにやる」ことの優先度が下がるのです。

新年1月は、これと反対の心理になります。「扉がいっせいに開く象徴的な季節」なのです。何かと「新しいことをはじめる格好の月」であるために、「できたらいいなと思えることをここぞとばかりに詰め込もう」という心理的誘惑にさらされます。

何もかもができはしないけれど意外と充実する12月と、心機一転ですべてがうまくいきそうなのに、結局何もせずに過ごすお正月というパターンは、「扉」に注目すると案外当然の現象なのではないか。

1月は、新しい扉を極力開けないことと、閉められる扉を燃やしてしまうべき月なのです。「新しくやめることを始める」のが1月なのです。