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自衛隊メンタル教官が教える心の疲れをとる技術

自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術 (朝日新書)
自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術 (朝日新書) 下園壮太

朝日新聞出版 2013-02-13
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本書はとても役立つ本です。現代ビジネスパーソンで、どうも感情の取り扱いに苦慮している、腹を立てすぎたり、不安になりすぎるという自覚のある人は、ぜひ一読してください。

スッキリすると思いますし、読書前と後とでは、人間関係への考え方が自然まったく違っているはずです。

「ムリしない」を具体化する

本書でもっとも強調されていることが「ムリをしない」ということです。これだけ読むと実に失望されることでしょう。自衛隊メンタル教官が教えると言うから何かと思えば、「ムリをしない」なんて、と思われるにちがいありません。

つまり私たちは「ムリをしない」という「教え」に何も期待していないのです。「ムリをしないようにしましょう」というのは「気をつけておうちに帰りましょう」と同じくらい、いかにも「響かない」標語なのです。

それをしかし本書では本の冒頭にもってきて、一章まるまる割いて、あらゆる確度から強調しています。それくらい「ムリをしない」は重要であり、しかし完璧に無視されがちな方針とも言えます。

自衛隊のメンタル教官はこう言います。ムリをしないということが「できない」のは、本人も周囲も「ムリをしている」ということに気づかないためだ。しかしあらゆるサインをとらえて「ムリに気づく」ようにしたとしても、本人も周囲も「ムリをしてでも乗り越える」という方針でやってしまいまがちだ。そうして無理がたたって問題が発生してしまう。

なぜかイライラしているし、仕事に意欲を持てなくなってしまった。

このようなケースは、表面的には「生きがい」の問題のように見える。

しかし、多くのクライアント(相談者)を支えてきた私には、生きがいの裏に潜むエネルギー問題が見えてしまう。エネルギーの使いすぎ、つまりムリな状態を続けたことで、気力が低下し、生きがい問題として表れているケースが非常に多いのだ。

このことを私は、心理学を知っている人間だけでなく、世の常識として定着して欲しいと切に願います。ここを多くの人が逆にとらえているのです。

生きがいがないから、意欲がなく、だから元気がない。

このように考えるのが自然だと、とても多くの人が思っています。そういうこともあるかもしれませんが、まったく逆のケースの方が多いのです。

疲れているから、意欲がなくなり、だから生きがいなど見えようもない。

エネルギーを使いすぎているのです。だとすれば「ムリをしないで休む」以外の解などありようがないのですが、もともとの発想が逆だと、ここも逆になってしまいがちです。つまり「大変なときほどムリをしてがんばり続けることで、そのうちに視界が開けてくる」という、見ようによっては非常におかしな発想を、ごく当たり前のものとして受け止めてしまうわけです。

「ムリをしない」を具体化する方法として、本書ではやはり「そんな方法なの?」といわれてしまいそうな方法をいくつか挙げています。しかしそれも実に理に叶った方法です。ここでは1つだけ紹介します。

ムリだと表現してもらう

なぜ「ムリだと表現する(してもらう)」事が大事かというと、ムリが来ていることに周囲が気づきにくいからという理由です。当たり前なのですが、これがけっこう難しい。なぜなら自分で気づかなければ「ムリだ」と表明しようがないし、うすうす気づいていても「まだムリではない」と思いたがる人が多いからです。

自衛隊のレンジャー訓練などでも、厳しい訓練に対して一言も弱音を吐かない、弱いところを見せない隊員は、気をつけなければならない。急に折れてしまうからだ。

一方、始めからぐちぐち不平を言っている隊員の方が、結局最後まで残り、任務を果たしていったりする。

これもごく自然な発想なのですが、何か「異常なものの見方」と思ってしまう人が多そうです。「周囲」としては何もサインが発せられないなら「問題なし」とみなすしかありません。「ぐちぐち不平を言う」は美学に反するかもしれませんが、コミュニケーションをとって問題を意識させれば、それに対応しようとするのが人間なのです。少なくともそうする人はいるものです。結局のところそれが「問題の所在を明らかにする」事につながります。

弱音を吐く、というのはそんなに悪いことなのだろうか。そのような人は、情報を提供してくれるので、適切に対処しさえすれば、ムリの大破局には至らない。(中略)

いずれにしても、自分の苦境を、表現してくれることはありがたい事だと思うべきだ。

とは言うものの、ムリをしていると気づいていない人や、ムリをしていても気づきたがらない人などは、自ら進んで「弱音を吐いて」などくれないでしょう。それは何かしら別の仕方で表現してもらう事が必要です。そのコツなどについてもこの本では巧みに述べられています。

自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術 (朝日新書)
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▼編集後記:
佐々木正悟

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こちらは2月22日発売予定の拙著ですが、内容的にはかなり似た問題を、別の角度から取り扱ったものです。もっとも記事で紹介した『自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術』を読んだのは、校正から何から一切が終わった後の事で「先に読んでいればよかったのに・・・」と思ってしまいました。こういうおかしな符合はけっこうよくあります。