一日という時間は長いようでいて短く、短いようでいてけっこう長いものです。やりたいことを満足いくまでやろうとすると足が出ますが、満足のいく過ごし方をしようとすると手に余るのです。
かくして毎日意図せずして時間を無駄にしてしまいます。
これを防ぐための方法が「一日を複数のセクションに分ける」です。
分けてみて初めて使いみちが分かる
肉でも魚でも木材でも、その切り分け方を間違えると無駄になります。
目的をもって意図的に切り分けているからこそ、それぞれの“切り身”が活きてきます。
1日という時間についても同じことがいえます。
たとえば、
「今日はアポがなく、終日デスクワークの予定だから、仕事をガシガシ進めよう」
という日であっても、実際には思ったほど「ガシガシ」進まないものです。
「今日は終日デスクワークだ」という認識が強すぎるために、実際以上に時間がたくさんあるような錯覚にとらわれて、結果的に無駄なことに時間を費やしてしますのです。
ウサギとカメの競争における、ウサギの昼寝のようなものです。
「一日」という尺が長すぎるために、正しくとらえられないわけです。
そこで、目的に応じて切り分けます。
分け方は記録が教えてくれる
では、どのように分ければいいか?
まず、うまくいかない分け方の事例をご紹介します。
ある会社の会長は、時間を大きく三つに分けていると自分では思っていた。
三分の一は幹部との時間、あとの三分の一は大切な客との時間、残り三分の一は地域活動のための時間だった。
六週間にわたって記録をつけてもらつたところ、これら三つの活動のいずれに対しても、ほとんど時間を使っていないことがわかった。それらは、割くべきであると考えられていた時間にすぎなかった。例によって都合のよい記憶なるものが、実際にそれらの仕事に時間を使っているように思い込ませていたのだった。
たとえばこの人は、かなりの時間を、友人の顧客からの注文に早く応えるよう工場に催促の電話をすることに使っていた。しかも、注文はいつも円滑に処理されており、彼の干渉はむしろ注文を遅らせる原因になっていた。
ここから分かることは、時間にかんする記憶はあてにならない、ということです。
記憶があてにならないなら、記録をとるしかありません。実際に何時から何分かけて何をやっているのか。これを仕事を始めてから終えるまでもれなく記録します。
記録することで、自分の時間の使い方をあとから辿ることができます。
「このあたりで区切りをつけられそうだ」というキリのよい切れ目を見つけるのも容易でしょう。
少なくとも記憶と想像に頼るよりは信頼のおけるキレの良い切れ目が見つかるはずです。
すべての時間に名前をつける
切れ目に沿って一日をいくつかのセクションに分けることができたら、それぞれのセクションに名前をつけます。
名前をつけることで、それぞれのセクションをどのように過ごせばいいのかが明確になるからです。
たとえば、以下のようにです。
» 1日10分であらゆる問題がスッキリする「ひとり会議」の教科書
この作業でとても重要なのは、「あなた」の視点でやらず、「あなたのマネージャー、または秘書」になったつもりでおこなうということです。
マネージャー「○○さん(あなたのお名前)、本日この時間はこのように会議が入っておりますので、よろしくお願いします」
自分「うん、了解」
マネージャー「会議のあと10分くらい休んでいただいたあと、すぐランチです。○○さんとです」
自分「おお○○さん、楽しみ」
マネージャー「ただランチが終わったら、すぐ3時間ぶっ通しで作業していただくことになります。さらにその後、打ち合わせが2件入っています」
自分「きびしいな。なんとかならないかな」
マネージャー「そのかわり打ち合わせが早く終われば、夜8時にはあがっていただけます。今夜は彼女を誘って焼き肉でも食べにいきますか」
自分「オッケーいいよ、それならいける」こんなふうに、2人称の立場で、実際に動くあなたのご機嫌を取りつつ、合意を取っていく感じです。
すべての時間に、○○をする時間、○○をする時間と名前をつけていきます。ぼんやりする時間も、ちょっとしたすきまの時間も、名前をつけてスケジュール帳に書き込んでおきま
す。そして大切なのは、一度名前をつけたらその時間がくるまで、そのことを忘れてしまうことです。
時間をいくつかのセクションに区切り、セクションごとに名前を付けることで、一つひとつのセクションに集中することができるようになります。
あるセクションに「集中する」ためには、ほかのセクションのことを一時的に頭の外に追い出す必要があります。
あれもやらないといけないし、これもやらないと・・・などと複数のことが気になっていると何もできずに時間だけが過ぎていってしまいます。
「今はこれをする!」と決めたら、「あれ」は別のセクションに追いやってしまう。
こうすることで、「今はこれだけをしていればOK」ということで、「これ」に全力投球できます。
ちなみに僕自身は、以下のように一日を12のセクションに分けています(TaskChute2では最大12個まで自由にセクション分けができます)。
参考文献:
こちらでも紹介していますが「人は時間を管理する用意ができていない」という一文が忘れられません。
第3部「自らをマネジメントする」の第3章「時間を管理する」および第4章「もっとも重要なことに集中せよ」は必読です。第3部全体がいわゆるセルフマネジメントに関するトピックを扱っており、『7つの習慣』における第3の習慣と合わせて読むと理解が深まります。
いずれもどちらかというとマインドよりも技術に寄っているため“実技”っぽくて好きなのです。
» プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編))
レビューが重要なのはわかっているけど、なかなか時間が取れずに先送りを繰り返している、という方におすすめの一冊です。レビューの印象が変わります。レビューの“レシピ”がたくさん載っているので、「これは」というものを試しているうちに自分なりにしっくりとくるレビューができるようになります。
» 1日10分であらゆる問題がスッキリする「ひとり会議」の教科書
関連エントリー:
・TaskChute2の使い方を動画で解説(TaskChute友の会#10より)
・「今日一日の区切りで生きる」ために「一日を6つの区切りに分ける」
・時間がうまく使える場合とうまく使えない場合の違い
・レビューは何のためにするか?
・レビューの最適なタイミングとは?