前回は北さんが、自身の「手帳術」の根幹部分を紹介してくれました。
» 今日からはじめる手帳術 第19回 4つの手帳術をMIXするー概要編
とても盛りだくさんでしたね。次回が楽しみです。
さて、私が担当する「今日からはじめる手帳術」は今回で最終回。最後に「手帳術」をはじめる上で、ぜひとも押さえて欲しい要所を紹介しておきます。
それはGTDでもお馴染みのアレ__「週次レビュー」__です。
システムのメンテナンス
どのようなものであれ、それが「システム」と呼べるのならばメンテナンス作業は欠かせません。
パソコンであれば、ファイルのバックアップをとったり、あるいはOSのアップデートを行うでしょう。不必要なファイルを削除したり、適切な名前にリネームすることもあるかもしれません。時にはキーボードの溝を掃除するなどハードウェア的なメンテナンスを行うことも考えられます。どのような作業も、その「システム」を快適に安心して使い続けていくために必要です。
では、「タスク管理システム」ならどうでしょうか。あるいはもっと大きな「セルフマネジメントシステム」ならば?
こうしたシステムにおいてもメンテナンス作業が必要です。そして、それを行うのが「週次レビュー」です。
実は「一週間に一度レビューする」というのは別にGTDの専売特許ではありません。ケリー・グリーソンの『なぜか、「仕事がうまくいく人」の習慣』には以下のような記述があります。
一週間に一度は、自分の仕事のよりどころを残らず点検しよう。わたしが“仕事のよりどころ”と言うのは、「使用中の和いるケース」に収めてある、各プロジェクト、締め切りを書き込んだ予定表、予定している行動、備忘録メモ、翌週の懸案に対応する備忘録ファイルシステム、保留にしている物事(保留トレー、保留ファイル──意見や情報を持っている未処理のEメールすべてに対応するEメールフォルダなど、電子ファイルも含む)、そして予定事項の記録表など、すべてを合わせたもののことだ。
まさにGTDの「週次レビュー」です。
適時こうしたものを見返し、再検討し、再配置・再調整する。その行為がシステムの「信頼度」や「使いやすさ」を維持し続けてくれます。
自分との対話の時間
もう一つ別の側面から「週次レビュー」について考えてみましょう。
レビューでチェックするのはカレンダーやタスクリストなどの外側のツールだけではありません。自分自身の頭の中を空っぽにする作業も含まれます。
ノートなりA4サイズの紙なりを目の前に広げ、頭の中にある「気になること」をひたすら書き出していく。ただそれだけの作業ですが、とても意義深いものです。
私たちの日常は、インプットで占められています。新聞、テレビ、雑誌、書籍、広告、仕事の依頼、上司の命令・・・あげ出せばキリがありません。さらにソーシャルメディアとスマートフォンの普及で、インプットに取り囲まれていると言っても過言ではないでしょう。もちろん、このことにはメリットがたくさんあります。
しかし、そうして外側からの情報に触れすぎることで、自分の心の声が聞こえなくなっていることはないでしょうか。自分自身が本当に何を考えているのか分からなくなっていることはないでしょうか。
長年一緒に暮らしている夫婦でも、会話がまったくなければ相手の考えていることがだんだん分からなくなってくると思います。きっとこれは「自分」についても同じことが言えるでしょう。
慌ただしい現代だからこそ、一週間に一度ぐらいは「自分と対話する時間」を作る。これも週次レビューの一つの意味です。
スケジュールに組み込む
というメリットを紹介しましたが、数字的にみればこうした「メンテナンス作業」はちっとも生産的ではありません。もちろん、生産を補助する効果はあるでしょうが、その行為で直接何かを生み出すわけではありません。
となると、「優先順位」が低くなることは避けられないでしょう。週次レビューをしたからといって締め切りが迫っている原稿が進むわけではないのです。そして、日常は何かしら締め切りに満ちあふれているものです。
こうしたことを考えると、週次レビューなどの自分メンテナンス作業は予めスケジュールとして組み込んでおく必要があります。一週間に一度、どこかに連続の時間を確保し、そこには予定は入れないと決めてしまうわけです。
おそらくそういう手段を取らない限りは、週次レビューを継続的に続けていくことは難しいでしょう。
もう一点付け加えると、週次レビューの時間がやってきたときに、「さて、何をしようか」と悩まないようにチェックすべき対象をリスト化しておくことです。これでスムーズにレビューを進めることができますし、心理的抵抗感も薄れると思います。
さいごに
今回は「週次レビュー」について紹介しました。
紙の手帳をお使いの方は、一週間に一度その週にやったことを見返して、来週すべき行動にもれが無いかチェックするのが最初の一歩になるでしょう。「週次レビューなんて難しそう」とあまり身構えずに、簡単な気持ちで始めてみることです。
できればノートを広げて、思ったこと・考えたことをザラザラと書き出してみることもやってみてください。ずいぶんとスッキリした気分が味わえるでしょう。
▼参考文献:
GTDについては、まずこれを読みましょう。読んで、一度実践に挑戦して、もう一度読み返すのをオススメします。
「仕事術」の大切な要素があらかた書かれています。今読み返しても、使える内容が多いです。
▼参考図書:
▼倉下&北式の手帳の使い方を一冊の本に纏めています
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来週から「R25の知的生産」に戻ります。
しばらくお休みしていたのでネタがたんまりストックされている・・・というわけではないんですよね。やはり連載を書いているから自然とネタ集めをしてしまう傾向はあります。
さて、また次回に紹介エントリーを書きますが、6月30日に技術評論社さんから新刊が出ます。とりあえず、今回は紹介まで。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。