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迷うことなく『ずっとやりたかったことを、やりなさい』

人は誰でも、自分の中にアーティストの子どもを住まわせている。その子どもを大切に養い育てれば、創造的な生き生きとした人生を送ることができる。では、どうすれば自分の中のアーティスト・チャイルドを育てることができるのだろう? その疑問にきわめて具体的なプランをもって答えてくれるのが本書『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』(原題『The Artist’s Way』)である。

p.260「訳者あとがき」より

大橋悦夫読み始めた当初は取っつきにくさを感じたものの、上記にもあるように紹介されているワークが非常に実践的で──僕自身はまだ効果を実感するまでには至っていませんが──、納得した上で取り組めるものばかり。

これはつねづね思っていることですが、人は自分で自分を枠にはめ込んで、その枠の中で何とかしようとする傾向があるようです。もちろん、その枠があるからこそ自分でいられるわけですが、枠にとらわれすぎてしまうと今度は自分を失ってしまうのです。

やはり、プロセスを省略することはできない

ずっとやりたかったことを、やりなさい。そんな枠を取り払うためには、どこかで自分の限界を乗り越え、未知の領域に踏み込んでいく必要があります。とはいえ、人には恒常性(ホメオスタシス)という特性がありますから、何らかの手段で“ロック”を外す必要があります。

その手段こそが本書で紹介されている数々のワークです。

このコースをはじめて最初の二、三週間は、ある程度の抵抗感や居心地の悪さを覚えるかもしれない。その後、コースが中盤に差しかかると、爆発的な怒りが表れる。怒りの後には悲しみが続き、抵抗と希望の波が交互に訪れる。

このような山と谷からなる成長段階は、新しい自分の誕生のプロセスへと連なり、強烈な気持ちの高ぶりと、「こんなことをしていてなんになるのだろう?」という疑いの間を行き来する。

この変動めまぐるしい成長段階の後に、何もかも放り出して、また元の生活に戻りたいという強い衝動が芽生える。それはいってみれば、自分自身との取引の時期である。人はしばしばこの時点で、コースを放棄してしまいたいという誘惑にかられる。私はそれを創造的なUターンと呼んでいる。それを乗り越えると、エゴを手放すことができる。(p.16)

こんな具合ですから、「やればすぐに効果が出る!」ことは残念ながらなさそうです。でも、すぐに出ないということは、簡単には成しえないということですから、一度「あちら側」に到達できればそのアドバンテージは揺るぎないものになるでしょう。

仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか (幻冬舎新書 や)ちょうど筋トレを通して身につけるメンタリティに近いかも知れません。これは、『仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか』に書かれていた以下の一節に通じるでしょう。

「生命」や「身体」に関するものは、すべてプロセスを省略することができない。いずれは科学で短縮されるのかもしれないが、いまのところ赤ん坊が生まれるまでにはどうしても10ヵ月かかる。5ヵ月に縮めたいといっても無理だ。

農業なども、そういう気の長い仕事である。技術で促成栽培するにも限度がある。米も野菜も果物も、多くの農作物は収穫までに長い時間を必要とする。

プロセスの重要性、粛々と努力を積み重ねることの重大さに気づくだけでも、トレーニングをする意味はある。(p.23)


その道は決してまっすぐではない

結局のところ、「実践しないと効果がない」わけですが、これに類するフレーズはビジネス書に学んでいる人であればおなじみのものでしょう。

ビジネス書というのは、以下のいずれかに分けられると考えていますが、

  • 1.読んでいて気分がよくなる本(実践している錯覚を呼び起こす)
  • 2.叱咤激励しながら行動を促す本(危機感を煽られて実践する気にさせる)

いずれも“入り口”までは連れて行ってくれますが、そこから先は自分の足で踏み出すほかありません。そのための一歩を後押ししてくれる(かもしれない)一節を最後にご紹介します。

早熟だった私は、一二歳の時にその本を読んだ。今、覚えているのは、頂上に向かって螺旋(らせん)状の道が巻きついたヒマラヤの一部だ。その螺旋の道こそ、私の考えるアーティスト・ウェイなのだ。

その道を登ろうとすると、高さは少しずつ異なるが、何度も同じ景観の場所に連れ戻される。たとえば、不毛な時期にさしかかると、私たちは、以前にも同じ場所に来たことがあるという思いにとらわれる。たしかに、ある意味で、それは正しいのだ。ずっとやりたかったことをやる成長の道は決してまっすぐではなく、螺旋状に登っていくプロセスだからである。(p.256)