くじ引きは、引き続ければいつか必ず当たる。ハズレくじを山に戻さない限りは。
最初に当たりを引き当てる人と最後に引き当てる人の差は時間の差でしかない。
まだ当たりを引き当てられてない人の中には、最初に当たりを引き当てた人は何か特別な方法を使ったのではないか、と考える人もいるかもしれない。
そういう人にとって、最初に当たりを引き当てた人がどんな格好をして、どんなタイミングで、どのような仕草でくじを引いたのか、という情報は垂涎の的となり得る。モデリングの対象となり得る。
モデリングをした人が、次に引いたときにたまたま当たりくじを引き当てることもあるだろう。
でも、当たりくじを引き当てるための必要条件はいっさい変わっていない。やめずにとにかく引き続けるということのみである。
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マックスは私が話し終えるのを待って、それからこう答えた。
「僕は、試してみるすべてのことがうまくいくとは言ってないし、すべての決定が素晴らしいものだとも言ってない。そんなことはあり得ないよ。
繰り返すけど、計画なんてたいていうまくいかないものだしね。きみにわかってもらいたいのはね、アイデアというものはなかなかうまくいかないかもしれないけど、試してみることはそうじゃないってことなんだ。“〈実地演習〉に失敗はない”と言ってもよかったかな。それも正しいし、理解はしやすかったかもしれない。
ただ、いいかい。何かをやってみて、それがろくでもないアイデアだとわかったとき、きみはもとの場所に戻ることは絶対にない。必ず、何かを学ぶからだ。学ぶべきことが何もなかった場合は、その前にしていたことに高い価値をおくべきだってこと。そういう意味で僕は、試してみることに失敗はないというのは真実だと思っている。
それをきみにも信じてもらいたい。だけどそれは、“科学的方法”だの“対照のための非実験グループ”だのについてまじめくさって話したいということじゃない。
ただ、いろんなことを楽しくやって、新しいことを試してみて、いつもしっかり目を開けておいてほしいってことなんだ。
難しいと思うのは、ほかの人に変わってもらおうとすること、違う自分になってもらおうとすることだ。たいていの人は変化なんて大嫌いだからね。だけど、この白髪まじりの頭の中には、とても重要なフレーズが入ってる」
彼は、まるで次の考えを押しだすかのように、指先をこめかみに当てた。
人は、変化は大嫌いだが、試してみることは大好きなんだ。(p.88)