健康な人はあまり重要でない気持ちは無視し、しかし同時に、本当に適切な必要性が何かを理解し、反応する。気持ちを読み取り、気持ちの裏にある必要性が何かを理解することは、人生を生きるための重要な技術だ。
つまらないまたは有益ではないと感じる事柄と、満たされるべき正当な必要性とを区別できる技術である。
例えば、仕事が終わらずに悶々としながらも辛うじてPCに向かっている時、突如として「あ~、ビールが飲みたい!」という衝動に駆られ、勢いのままに飲む、すると衝動は満たされるものの肝心の仕事は完全に止まる。
そうでなくても遅れているのに、遅れにいっそう拍車が掛かる。「ええいままよ」と深酒し、記憶があいまいになって気づくと朝を迎える。
続いて訪れるのは自己嫌悪でしかない。自己嫌悪は自分を傷つけることしかしないため、傷ついた自分を癒すために何かに頼る必要性が生まれる。この必要性を満たすものは少なくとも仕事ではないから、ますます仕事は遅れていく。仕事の遅れというプレッシャーはストレスとなって、いっそう自分を傷つける。さらに癒しが必要になる。
かくして続く終わりなき悪循環。想像するだに恐ろしい。
こうならないためにも、最初の「あ~、ビールが飲みたい!」が本当に適切な必要性かどうかを見極める確かな目が求められる。
一番効くのは、自己嫌悪の朝の記録をつぶさに残しておくこと。これを読み返せば、「うっ」となって、ビールに対する抑止力となりうる。