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さて、2014年も終わりが迫ってきました。となると、書きたくなるのが「2014年に読了した本」についての記事です。
いろいろな切り口が考えられるのですが、今回は「役に立った実用書」という観点で紹介してみましょう。
テーマを4つ設け、それぞれに3冊ずつ配置してみました。
- 不確実性との付き合い方
- 生き残るための戦略
- セルフ・マネジメントの技術
- 知的生産とセンス
不確実性との付き合い方
人生というのは不確実性で満ちています。で、あるからこそ選択する必要も出てきます。
唯一絶対確実な方法があるならば、何も選ぶ必要はありません。ただそれを毎回繰り返せばよいだけです。しかし、現実の世界にそんな魔法の杖はないので、さまざまな状況と可能性を考慮して選択する必要があります。
『タートル流投資の黄金律』では、いかにしてリスクと付き合うのかが紹介されています。リスクをまったく無視する、リスクなんてないものとして振る舞う__これが一番リスクがある態度だということはよく言われます。著者のカーティスは、それを踏まえた上で、じゃあどのような心構えでリスクと向き合えば良いのかを紹介してくれています。
『偶然の科学』では、予測の難しさが語られます。選択と予測は切っても切れません。予測のないところに選択はありえない、とすら言えるでしょう。しかし、その予測はどれだけ当てになるのでしょうか。もっともらしく語られる専門家の予測はどれだけ傾聴に値するのでしょうか。人間の認知の限界性を踏まえて考え直す必要があるのかもしれません。
» 偶然の科学 (ハヤカワ文庫 NF 400 〈数理を愉しむ〉シリーズ)
そうは言っても、選択というのは人間にとって大切だ、ということを『選択の科学』の中でアイエンガー教授は何度も語ります。私たちの自意識は、何かを選択している(あるいは選び取れる)という感覚によって支えられている部分が多くある、という点は留意しておきたいところです。
» 選択の科学
生き残るための戦略
いかにして厳しい環境下で生き残るのか。難しい問題ですし、興味深い問題でもあります。
『GIVE & TAKE』は、その答えを「与えること」だと提示しています。与えて、与えて、与え続けること。短期的には、奪う者(テイカー)が勝者のように見えるかもしれないが、最終的に生き残るのは徹底的に与える者(ギバー)である。そのお話は、一種おとぎ話のようにも聞こえますが、案外身近なところを探してみると実例を見つけられるかもしれません。
» GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 (単行本)
ちなみに、高級スーパーの「成城石井」は徹底的にお客様に「与える」お店であることが『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』という一冊から見て取れます。もちろんそれは、赤字覚悟の大安売りをするとか、おまけを付けまくるといったことではなく、お客様に良い商品を提供するためには手間を惜しまない、という姿勢のことです。
一見当たり前のことのようにも思えますが、それを徹底してできているところは存外に少ないものです。だから結果的に差別化になりえます。
マルコム・グラッドウェルは、このことをもう少し違った視点から眺めています。『逆転! 強敵や逆境に勝てる秘密』では、弱者がいかにして強者に勝つのかという戦略が提示されていますが、そこでも「徹底的」が一つのポイントです。残念ながら、弱者が楽して勝てるような戦略はありません。楽して勝てるのは強者だけです。これは肝に銘じておきたいポイントです。
セルフ・マネジメントの技術
モチベーションというのはたしかに大切なんですが、モチベーションがあればすべてうまくいくわけでもありません。行動を変えるためには「本気になる」といった精神コマンドだけではなく、実際的な要素が必要になってきます。中でも大切なのは記録です。行動の記録。やるべきことの記録。
だいたいにして、自分のことについて自分はよくわかっていないので、それを把握するのがスタートになるでしょう。
三冊とも方向性は異なるものの、記録や見える化によって、セルフ・マネジメントを進める方法が紹介されています。
» なぜ、仕事が予定どおりに終わらないのか? ~「時間ない病」の特効薬!タスクシュート時間術
» あのプロジェクトチームは なぜ、いつも早く帰れるのか? いまのメンバーで最大のパフォーマンスを生む!【図解で学ぶ】タスク管理術 (impress QuickBooks)[Kindle版]
知的生産とセンス
情報はある。いくらでもある。ただし、真偽についての100%の保証はなく、質もバラバラ。
そういう状況で、いかにして私たちの行動に情報を役立てるのか。あるいは、知的生産・情報発信を行うのか。
ポイントは、二つあります。
一つは、自分の中の専門性を高めること。もう一つは、その上で他者の力を拝借すること。この両輪が回れば、それほどひどいことにはならないでしょう。
» 知的生産の技術とセンス ~知の巨人・梅棹忠夫に学ぶ情報活用術~ (マイナビ新書)
» ゴミ情報の海から宝石を見つけ出す これからのソーシャルメディア航海術 (PHPビジネス新書)
さいごに
駆け足でしたが、2014年に読んだ実用書の中から面白かったものをピックアップしてみました。もちろん、他にもいろいろあるんですが、ジャンルにまとめきれなかったものは割愛しました。
2015年も、同じように面白い本と出会いたいところです。
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この本は、実用書と言えるのかどうかは微妙なところですが、「ブログ」に関する電子書籍を発売しました。ドラッカーの視点でブログについて考えてみよう、という本です。ノウハウ的なものはほぼ含まれておりませんので、ご了承ください。あと、稼いだり、人気ブログを作ったりする方法も乗っていませんのであしからず。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。