本というのは、著者の人生経験の“縮刷版”のようなものだと感じることがあります。そこには、著者のもつ有形無形の経験がぎっしりと詰まっているからです。
読者は、読書という行為を通して、この経験を受け取ります。読者の目には一人一人にそれぞれ特定の話題により強く反応するフィルタがはめ込まれているので、同じ本を読んでも受け取る刺激が異なります。
そんなことを考えさせられたのが今回ご紹介する『「いい気分」セラピー』。
たくさんの「いい気分」になる“ハック”が紹介されているのですが、僕のフィルタに響いたものをいくつかご紹介。
「ありがたいなぁ」とつぶやく
以下は著者が以前会社勤めをしていた時のエピソード。とても大事な会議に遅刻しそうになったとき、人から聞いた「魔法の言葉」である「ありがたいなぁ」をつぶやいてみたとか。
その結果、
「脳」というのはとても素直なので、頭をフル回転させて、「ありがたいこと」を探そうとし始めた
のだそうです。
このくだりを読んで、ふと思い出したのが我が父から繰り返し言い聞かせられてきた次の3つの言葉。
- ありがたい
- もったいない
- すまない
忘れないように頭文字を取って「あもす!」と覚え込んで今に至りますが(「あもす!」って何だ、という疑問はさておき)、父いわく、どんなにイヤなことがあっても、この3つの言葉を心の中でつぶやいていれば、怒りも悲しみもスッと引いていくよ、とのことでした。
斎藤一人さんも「すぐ怒るやつは馬鹿だ。この言葉を世界に広げよう」と言っています(「今日の言葉」より※)。さらに、「怒りたくなったら最低3日間考えて、それでも腹が立っていたら怒れ」というようなことを書かれています。
※リンク切れ
こういった言葉の“おまじない”的なことというのは一見すると「なぁんだ、そんなことか」とスルーしそうになりますが、その実、効果が高かったりします。似たような話をあちこちで見かけるということは、それだけたくさんの人が信奉しているという証明でもあるでしょう。
「ない」ではなく「ある」にフォーカスする
続いて、自分を「いい気分」にさせる方法。
「いい気分」のときというのは、
- 自分に起こることを肯定し、許可している
- 自分に満足している
- 感謝している
という状態です。
逆にイヤな気分になっているときというのは、「怖れ」や「不足感」があります。そういうときというのは、「なんでこんなことが起こるんだろう」と、起こることも許せないし、「これは自分に対処できないんじゃないか」「自分はダメになってしまうんじゃないか」と怖れもあるし、「足りないから、もっと得ないと」という不足感もあるから、もちろん感謝もできません。
そこで、著者が提案するのが「ない」ではなく「ある」にフォーカスすること。
●「あの人はできるけど、自分はきっとダメ」
↓
●「自分もできたことがある!」
↓
●「自分はできる!」
●「自分にはお金がない」
↓
●「生活するお金はある!」
↓
●「もっと豊かになれる!」
一見、「ポジティブに考えよう」ということのように思えますが(結果としてはそうですが)、無理矢理自分に信じ込ませるのではなく、ゆるやかに向きを変えていくところがポイントだと感じました。
「あるでしょ」と強く思う
最後に、願いが叶える方法(というかコツ)。
願いには、叶うものと叶わないものがあります。この差は分かりますか?
それは、「ダメかもしれない」という思いです。トイレは、ダメかもしれないとは思いません。生理的な欲求はとても強いので、食欲や睡眠欲などは、達成率はほぼ100%です。
タレントに「会いたい」と思うのも、意欲があれば、チケットを取ることはできますので、達成率は高くなります。
けれど、「お金持ちに」と思っても、「苦労してお金を儲けるなら今のままでもいいか。ダメでもいいか」と思っていたら、現実は変わりません。
この本に限らず、「思考は現実化する」とか「目標を紙に書いたら実現した」といったことが書かれている本は少なくないですね。そういえば、僕自身も、日々「やりたいこと」を書き出すことを習慣にしています。
私の知っている作家の先生は、「執筆が思うようにいかないときは、あれこれ原稿のために頭をひねるのをやめて、書いている本が実際に本屋に並んでいて、うれしい気持ちになっているのを感じたり、読者さんから感想文をもらって感激を味わっていることを想像しているんですよ」と言います。
「そうすると、ひらめきが冴えて、思いもしなかったような文が書けたり、筆が進んで、悩むよりもずっとスムーズに執筆できるんです」と、「方法」や「手段」を頭で考えるより、「“すでになったように”ハートで感じること」が秘訣だと教えてくれました。
「やりたいこと」を書くのは、まさに自分が“すでになったように”感じるためのおまじないといえそうです。
まとめると、「ダメかも」と思わないこと。ひっくり返して「あるでしょ」と思うようにすること、でしょうか。
最後に、本書の冒頭に書かれていた、「いい気分」ってそういうことか! と腹に落ちた一節をご紹介。
「心」というのは、大きく分けて、二つの要素からできています。
一つは、「思い」。頭の思考です。
もう一つは、「感覚」。ドキドキワクワク、といったハートの動きです。たとえば、うれしそうにピョンピョン跳ねて、「いい気分」になっている人がいるとします。それはどうしてかというと、
- 1.プレゼントをもらってうれしい、と「思って」いる
- 2.それで気分が浮き立って、いい気分を「感じて」いる
つまり、「頭」と「ハート」の両方が、「いい気分」という「心」を作っているのが分かりますね。
「頭」と「ハート」が一致しているときが「いい気分」というわけです。
今回ご紹介した以外にも、たくさんの「頭」と「ハート」を一致させる方法が載っていますから、仕事が思うようにいかずに悶々としているときや、上司やクライアントから理不尽な叱責を受けて沈んでいるときなどに読み返すと、「いい気分」をもらえそうです。
▼次にすること:
・『「いい気分」セラピー』を読んで、「頭」と「ハート」の不一致を解消する
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