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世代の壁を乗り越え、共に働くための技術/バブル上司とスマホ新人・第6回

前川孝雄シゴタノ!での特別連載もいよいよ最終回となりました。今回は最後のまとめとして、上司が若手にどのように向き合うべきなのかを中心に、価値観の違う若手に上司が歩み寄り、そして若手が本音を話してくれるようになるための技をご紹介します。

「ワークインライフ」の発想を受け入れる

バブル時代に入社しがむしゃらに働いてきた人は、仕事を生活の中心と考えている人も少なくないのではないかと思います。私自身も仕事中心の考えを持ってきました。

一生のなかで仕事の占める時間的、精神的なシェアはとても大きいので、その時間を有意義に過ごして欲しいと考えていました。

しかし、これまでにお話をしてきたように、スマホ新人、最近の若者にとって仕事とは人生において数ある要素のうちのひとつであり、中心ではないことが多いのです。バブル入社世代が「ライフインワーク」発想だとすると、最近の若者は「ワークインライフ」発想なのです。

  • 「海外旅行が趣味なので、気軽に長期の休みがとれる会社がいい」
  • 「疲れると長く元気に働けないので、週休二日は絶対です」
  • 「サーフィンが好きなので、海の近くから通える会社がいい」
  • 「地元の友達と離れたくない」
  • 「趣味の音楽では食べていけないので仕事をしている」


若手とじっくり話をしていくと、こういった話をよく聞きます。彼らは、程度の差はあっても生活や趣味を非常に大切にしているのです。仕事を生活の中心にしていた上司の世代だと、これに対して「物足りない」と感じることもあるかと思います。

しかし、私は若者が仕事ではなく生活や趣味に居場所を求めていることは、会社がホームになりきれなくなっているからだと感じるのです。これは、バブル崩壊以降に大人たちが作ってきた社会では会社に居場所を求めることができないので、生活や趣味に居場所を求めているのということではないでしょうか。

当然このように価値観の違う上司と若手では食い違いも出てくることでしょう。ここで余計な誤解などを避けるために上司が気をつける点が3つあります。

  1. 部下によっては、生活が第一と考えていることを批判しない。
  2. 仕事と生活を切り離して考えさせる。
  3. 生活面に不必要に干渉しないようにする。


まず、仕事に対する考え方はなにが正しいというものはありませんので、相手の考え方を否定するのではなく、相手の考え方を受け入れて話をする必要があります。

また、生活していくためにしている仕事と考えていると、将来仕事を通じてどうなりたいかという意見が希薄になりがちです。そのため、生活と仕事を独立して考えてもらうようにするのです。

そして、生活面には不必要に命令口調で価値観を押し付けないようにします。彼らにとっての仕事とはあくまでも生活の要素の一部であって中心ではありません。仕事と生活をしっかり区別して話をしないと、私生活まで管理されているように感じてしまうこともあるのです。

仕事が生活の中心であった世代にとっては、あまりにも価値観の違う若手に対して戸惑ってしまうことも多いのかと思います。そういった場面も数多く見てきました。

今の若者の価値観が育て上げられる環境を作ったのは紛れもなく私たち上司の世代であることを忘れてはいけません。

「職場内ぶらぶら散歩」の勧め

以前に、管理職が集まった会で職場を活性化させるにはどうするべきかということを話し合ったことがありました。皆、渋い顔で意見を交わしていますが、出てくる意見は

  • 「トップがメッセージを強く打ち出すべきではないか」
  • 「懇親会を実施しよう」
  • 「若手のプロジェクトを発足させよう」

といったものでした。

私はそこで

  • 「職場内をぶらぶらと散歩したらどうだろうか」

という提案をしました。そのとき他の管理職たちは爆笑をしていましたが、私は真剣に言っていたのです。

この「職場内ぶらぶら散歩」は私自身の経験からも、かなり有効な方法であると感じています。

どのようなものかというと、日中は何かと多忙なものですが、隙間の時間を見つけてはフロア内をぶらぶらし、仕事が一段落する夜の時間には必ず自分の担当するフロアをぐるっと散歩してから帰ります。

ただ散歩するだけではなく、「どうだ?」「今日は何か面白いことはあったか?」といったように若手の顔を確認して、声をかけながら回っていきます。

余裕がありそうなメンバーを見つければ隣に腰をかけて雑談をします。忙しそうなら肩を叩いて「その調子でがんばれよ」と声をかけていきます。

そうしていると、自分のデスクで仕事に向かっていてはキャッチできない情報が入ってきます。顧客とのやりとり具合や部下達の感情の機微など、組織運営には欠かせないリアルな情報を聞くことができるのです。

若手にとって一世代以上年が離れており、忙しそうな上司というのはとても声の掛け難い存在です。若手の声を聞くには上司が余裕のある状態を見せて、こちらから若手に歩み寄っていくことが大切です。

この「ぶらぶら散歩」をして上司が余裕のある状態を見せることで、若手に限らず、部下達は緊張感いっぱいの息苦しい職場から開放されて、伸び伸びと働けるようになっていきます。これも以前にご紹介した喜怒哀楽を分かち合い、実力以上の頑張りを発揮できる職場作りにつながっていくことなのです。

さいごに

6回の連載を通していくつかの技などをお伝えしてきましたが、「言いたい事はわかるが、そんなことをしている余裕はないんだ」という気持ちの方が多いのではないかと思います。

確かに私もその通りだと思います。若手の育成に関しては現場の上司一人が努力して変えていけるものばかりではありません。大企業であれば企業全体としての支援体制が整わないとできないことも多々あります。

これは現場の上司ばかりが悩んでいるのかというと、実は経営者から相談を受ける際には、ほぼ全員が若手育成の重要性を口にしています。

しかし、大きな企業であればあるほど現場にそのメッセージが浸透していないようなのです。

バブル崩壊から20年が経ち、その年月の中で出来上がった組織風土は簡単には変えていけないかもしれません。そして、上司と若手が一緒に働き、企業が入社した人材を大切に、長期的に育てていくには根本的な改革が必要になってきます。現在の社会風土には限界が来ているのではないかと思うのです。

今後、管理職には実務能力だけではなく、部下を育てていくための力が必要になり、経営者はそれを強化する場を設けていく必要が出てくるでしょう。そして管理職もただ支援に身を委ねるのではなく、自分にできることを考えていく必要が出てくるでしょう。

今こそ経営者と現場管理職を含めたすべての大人たちが、将来を担う若者を温かく育てていく職場を作り直していかなければならないと強く感じています。若手時代を経験してきた上司だからこそ、若手に歩み寄ることができるのです。

何人かが躍起になったところですぐに世の中が変わるものではないことは重々承知しています。

だからこそ一人でも多くの方の気持ちに火が付き、それが社会を変えていく原動力となることを切に願っています。

▼シゴタノ!ブックス:就職氷河期世代とバブル上司 スマホ新人を部下に持ったら読む本

長く続く就職氷河期、インターネットやスマートフォンの普及、ソーシャルメディアの登場で若者の価値観は大きく変化した。今までとはあまりに違う新人に戸惑う上司たち。

スマホ新人は何を考えているのか。現場で接した若者の声をもとに、彼ら彼女らが何を考えているのかに迫る。上司が若手を理解するために重要な鍵がどこにあるのか、そして若手を育てるための方法とは?

著者の体験談を織り交ぜながら、新人育成に悩む上司のために若手を理解し、育てるための九つの鍵と十二の技を具体的に説明していきます。

スマホ新人を部下に持ったら読む本



▼前川孝雄:
立場の異なる人間同士の「絆」づくりで人と組織に「希望」をもたらすことを主眼に、法人向け人材育成、学校向けキャリア教育・就職支援、個人向けスクールやゼミなどを展開する株式会社FeelWorksを経営。