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「潰れない会社の見分け方を教えてください」の真意/バブル上司とスマホ新人・第2回

前川孝雄第二回の内容に入る前に、第一回・「スマホ新人」は何を考えているのか?の際に「スマホ新人とはなにか?」というツイートをいただきましたので、「スマホ新人」に関して最初に少し補足させていただきます。

最近の新入社員は今までの新入社員と明らかに異なった価値観を持つようになってきています。その要因のひとつとして前回にお話したインターネットの発達などが挙げられます。シューカツの際にスマートフォンを最大限に活用していくことなどデジタルネイティブな環境で育ったことは最近の若者の特徴ともいえます。

そのため、インターネットがなかった時代に育った上司世代とは異なった価値観を持つ新入社員を「スマホ新人」と呼んでいます。

仕事よりも生活のほうが大切

前回は変化していく若者を取り巻く環境として、インターネットの発達によって若者が自分で考える力を失いやすくなっていることにお話ししました。

今回は変化していく若者を取り巻く環境のもう一つとして、バブル崩壊と長く続く就職氷河期、不況による若者の仕事に対する意識の変化に目を向けます。

  • 「どうもここ数年の新入社員は線が細くて覇気がないような気がするのです」
  • 「まだ若手なのだから、失敗を恐れずのびのびチャレンジしたらいい」


多くの企業人事担当者や経営者の方々が揃って同じことを口にします。

しかし、今の若者はどちらかというと真面目で堅実志向で、羽目を外すことが苦手です。これもバブル崩壊と長引いた不況の影響によるものだと私は考えています。今の若者は子どもの頃からリスクをさけて真面目に取り組むことを刷り込まれてきたのです。

90年代初頭、バブルが崩壊したことで大手企業が倒産し、合併や吸収が日常茶飯事となっていました。今の若者はバブルに沸く六本木の光景も終身雇用というシステムも実際には見たことのないものとなっています。

2000年代では食品や建設に関する偽装問題などで企業の社会的責任も大きく問題として取り上げられてきました。

そういった社会の不安定な面ばかりを見て育ってきたこともあり、今どきの若者は、生活の安定をとても重視する方向に変わってきています。定着してきた「ワークライフバランス」志向の表れといえば、それまでかもしれません。

しかし、私には不安定な時代と聞き続けてきたからこそ、安定を求めるようになってきたと感じられます。

安定した生活が将来の夢

以前に私が大学で就職講座を行った際にもこの志向を表す質問を受けました。

  • 「僕は将来を考えて福利厚生の充実した会社を探そうと思っています。採用情報に書かれているだけではなく、本当に有休が取れるか、酷い残業がないかを確かめる方法を教えてください」
  • 「潰れない会社の見分け方を教えてください」


こういった質問を受けていくと、彼らにとって一番の関心はやりがいのある仕事、やりたい仕事ではなく、何より安心できる暮らしや安定した人生を手に入れることになってきているように感じられてなりません。

就職活動時に希望する職務タイプを見ても、協調性を求められる仕事を望む傾向は高く出てきますが、「前例のないことを取り組む仕事」「複雑な課題を考え分析する仕事」などの創造性を求められる項目のポイントは極端に低くなります。

反骨精神に富んだ骨太な若者は減ってきていると考えられます。

さらに、安定志向が強まっていく中で「仕事より生活のほうが大切ですし、責任が重くなる昇進もしたくありません」とはっきり言う若手まで現れ始めました。

彼らは将来の仕事に夢を持たず、安定した生活ができることを将来の夢にしているのです。

しかし、安定志向、羽目を外さない傾向が強まりすぎた結果、大手企業に就職できた人のなかには、まだ20代にも関わらず、会社組織にしがみついてしまう若者すら出てきています。本人にとっても企業にとってもミスマッチであれば次の道を探すことも選択肢の一つですが、そういった新入社員ほど辞めず、かといって意欲的に働くわけでもなく、会社にしがみついている状態の者すらもいると人事担当役員に悩みを打ち明けられたこともあります。

バブル世代は、将来の右肩上がりの成長と上がり続ける給料を信じ、マルイの赤いカードでボーナス払いやクレジットカード払いに慣れ親しんでいました。

しかし、今では20代そこそこにもかかわらず、保険や貯蓄、将来の年金の心配をしている若者はもはや珍しくありません。管理職や経営者世代では当たり前だったことすら、今の若者には簡単に手に入らないものになっているのです。

こういった社会を創ってきた大人の一人として私自身、反省しており、若者に希望を持ってもらうために働かなくてはならないと肝に銘じています。

日本の職場に活力を

右肩下がり経済のもと、彼らの仕事に対する熱意ややる気は下がり、生活の安定に重点を置くように変わってきてしまっています。

しかし、このまま仕事に対して熱や欲をなくしていく若者が増える一方だとすれば企業業績はおろか、日本の企業社会全体の活力の衰退が懸念されます。こういった時代だからこそ、景気の波を経験してきた大人は若者にチャレンジすることの大切さを身を持って示し、その意義を説き続けることが求められると思うのです。

▼次回予告:
・次回第三回はコミュニケーションツールの変化に関して

ブログやソーシャルメディアによって距離や場所を隔てないコミュニティを作ることができるようになりました。また、手軽な連絡手段としてケータイ、スマホのメールもこの10年で一般化しました。ツールに変化があれば、当然ながら何かしらの変化が出てきます。

次回はコミュニケーションツールの変化に関してのお話をさせていただこうと思います。

▼シゴタノ!ブックス:就職氷河期世代とバブル上司 スマホ新人を部下に持ったら読む本

長く続く就職氷河期、インターネットやスマートフォンの普及、ソーシャルメディアの登場で若者の価値観は大きく変化した。今までとはあまりに違う新人に戸惑う上司たち。

スマホ新人は何を考えているのか。現場で接した若者の声をもとに、彼ら彼女らが何を考えているのかに迫る。上司が若手を理解するために重要な鍵がどこにあるのか、そして若手を育てるための方法とは?

著者の体験談を織り交ぜながら、新人育成に悩む上司のために若手を理解し、育てるための九つの鍵と十二の技を具体的に説明していきます。

スマホ新人を部下に持ったら読む本



▼前川孝雄:
立場の異なる人間同士の「絆」づくりで人と組織に「希望」をもたらすことを主眼に、法人向け人材育成、学校向けキャリア教育・就職支援、個人向けスクールやゼミなどを展開する株式会社FeelWorksを経営。