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「スマホ新人」は何を考えているのか?/バブル上司とスマホ新人・第1回

By: Jake StimpsonCC BY 2.0


▼お知らせ:
大橋悦夫
 シゴタノ!ブックスの公開を記念して、著者の方々の短期連載企画をスタートします。

第1弾は『就職氷河期世代とバブル上司 スマホ新人を部下に持ったら読む本』の著者・前川孝雄さんです。

前川さんはリクルートで「リクナビ」や「ケイコとマナブ」など様々なキャリア応援媒体編集長を約10年務めた知見を活かして、2008年に株式会社FeelWorksを設立。現在は絆と希望づくりによる人材育成コンサルティングというユニークなコンセプトで話題を集める同社代表として活躍されています。


著者・前川孝雄より

前川孝雄みなさん、初めまして!

「シゴタノ!ブックス」に電子書籍を上梓したのを機に連載を書かせてもらうことになった前川孝雄です。立場の異なる人間同士の「絆」づくりで人と組織に「希望」をもたらすことを主眼に、法人向け人材育成、学校向けキャリア教育・就職支援、個人向けスクールやゼミなどを展開する株式会社FeelWorksを経営しています。

私がこの連載で書かせてもらうテーマは「新入社員(スマホ新人)を部下に持った上司が、彼らとどう向き合うか」です。部下を持つと誰しもが「最近の若者はわからん」と感じたことがあると思います。若手の指導に悩んでいる上司たちに、彼らと向き合い理解するための技をご紹介します。

加えて、そもそも人材育成、社内のコミュニケーションについての基本的な考え方もご紹介したいと思います。

「最近の新入社員はよくわからん」

そう言いたくなったことのある管理職の方は多いのではないでしょうか? いつの時代も「最近の新入社員」にはこれまでの世代と違う特徴があります。

今、管理職をしている世代も以前は「バブル入社組」「新人類」などと呼ばれてきました。上司が部下に戸惑うことは今も昔も変わりません。会社組織では世代間のコミュニケーションが長い間、課題となっているのです。

バブル崩壊による就職氷河期、この10数年で大幅に進歩をしたインターネット、今では電話以外にも多くの機能を持つまでに進化したケータイ・スマホなど、若者を取り巻く環境は変化を続けています。

そのため、今の新入社員(スマートフォンを片手に生活をするスマホ新人)もまたこれまでの世代と違う特徴を持っているのです。

ではスマホ新人とバブル入社組の間の価値観の違いはどのようなものか。そして、上司と新入社員がお互いに幸せな関係を築くためにはどうすればよいのか。本連載では、いくつかの事例を基に話をしていきたいと思います。

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「インターネット耳年増」な若者

私自身が就職活動をしたのは、1988年。まさにバブル世代です。当然インターネットなどなく、リクルートから無料で送られてきた就職情報誌を眺めていました。

それが最近ではインターネット、ブログやツイッターを使うことで様々な情報をすぐに集めることができるようになっています。

問題はこれらの情報は自分で見聞きした一次情報ではなく、どこかの誰かが見聞きしてきた二次情報、三次情報ばかりであることです。容易に手に入る二次情報、三次情報をつぎはぎして語ることに終始してしまい、一次情報を自分で得ることやそれを土台に考えるトレーニングをする時間が取れなくなってきているのです。

以前に一年以上就職活動を続けているのに内定が一社もないことに悩む学生と話をしたことがあります。その学生に今まで何社面接を受けたかを聞くと、たったの二社というのです。

これまで一年間何をしていたのか詳しく聞くと、エントリーシートは出すものの、いざ選考の直前になるとインターネットで噂情報を調べ、少しでも気になることがあると自分には向いていないと思い、受けるのをやめていたということです。

内定をもらっている学生にも悩みがあります。大学を訪問すると複数の会社から内定をもらったがどこに決めたらいいのか分からないという話をよく聞くのです。

社会行動学者のバリー・シュワルツは、『なぜ選ぶたびに後悔するのか』のなかで、「選択肢はあればあるほど幸せとは限らない」と豊かな現代社会の哀しさを明快に説いています。

「自分で応募したうえで選んでもらったのに決心がつかない」現代の日本の若者は、そのさらに先を行っているような気がします。新種の「優柔不断症候群」とでもいうべきでしょうか。

面接の対策のやり方に関しても以前とは違いがあります。最近の学生は面接を受けるための対策もインターネットを通じて調べることが多くなっているのです。

書店やネット上には様々な面接やエントリーシートなどの対策本が出回り、学生が面接を受けていく中で使えると感じたマニュアルはインターネットを通じて一気に広がっていきます。

多くの学生はマニュアルで知識を詰め込み、面接の場で流暢に自己PRをするのですが、少し角度の違う質問をすると突然しどろもどろになってしまいます。知識はあるものの、経験や知恵がないためイレギュラーな局面に弱いのです。

仕事を始めてもちょっとしたミスやトラブルで落ち込み、仕事を投げ出してしまう。これも二次情報、三次情報は持つものの、一次情報を持たない若者の特徴です。

インターネットを調べれば、自分で考えることなく目的の情報を手に入れることができます。調べられる情報が増えたことにより、若者は多くの知識を持ち、様々なことを知ることができるようになりました。

多くの知識を持っていたとしても、そこに経験や知恵が伴っていないため、多くの経験をさせて自分で考える力を身に付けさせていくことが新入社員を育てていくなかで必要なのです。

▼編集後記:
前川孝雄
 アナログで楽天的なバブル期入社の上司が、デジタルネイティブで将来不安にかられる新人をどう抱きしめ育てるべきか。

大学での講義や若手社会人向けキャリアイベントなどで触れる若者の価値観、企業の人材育成コンサルティングで接する管理職や経営者の価値観には大きな相違があります。

この溝を埋め、上司と部下の絆を紡ぎ、職場で働く人たちが希望を見つけられるヒントをギュッと盛り込みました。これまで13冊の本を出してきましたが、初めての電子書籍への挑戦です(汗)。

みなさんからのご感想、楽しみにお待ちしています。

▼シゴタノ!ブックス:就職氷河期世代とバブル上司 スマホ新人を部下に持ったら読む本

長く続く就職氷河期、インターネットやスマートフォンの普及、ソーシャルメディアの登場で若者の価値観は大きく変化した。今までとはあまりに違う新人に戸惑う上司たち。

スマホ新人は何を考えているのか。現場で接した若者の声をもとに、彼ら彼女らが何を考えているのかに迫る。上司が若手を理解するために重要な鍵がどこにあるのか、そして若手を育てるための方法とは?

著者の体験談を織り交ぜながら、新人育成に悩む上司のために若手を理解し、育てるための九つの鍵と十二の技を具体的に説明していきます。

スマホ新人を部下に持ったら読む本


※次回以降、具体的な育て方についてお話をいたします。


▼前川孝雄:
立場の異なる人間同士の「絆」づくりで人と組織に「希望」をもたらすことを主眼に、法人向け人材育成、学校向けキャリア教育・就職支援、個人向けスクールやゼミなどを展開する株式会社FeelWorksを経営。