やるべきこと、やりたいこと、やったほうがいいこと。たくさんある中から慎重に、あるいはやむを得ず、あるいは偶然に選び取る。いきさつはどうあれ、選び取ったことにどれだけ真剣に、前向きに、主体的に取り組めているでしょうか。
今回ご紹介する『「心の翼」の見つけ方』は、そんなことを考えさせる一冊です。
あなたがあたらしく、あなたらしく、あるために
本書には何ら新しいことは書かれていません。それゆえ、新しいことを求めている人にはおすすめできません。読んでいただきたいのは、自分を新しくしたいと思っている人です。
気球は、暖かい空気で満たしてあげれば、どんどん浮上していきます。それは、自助努力によって成長できる私たちと同じです。
しかし、私たちの気球が大空に向かって上昇していく実物の気球と違うのは、私たちの気球はロープでつながれているということです。自己制限というロープで固く地上につながれているのです。そして、浮上する力が強ければ強いほど、それをつなぎとめておこうとする反作用の力が働いてしまうのです。(p.44)
著者の考え方に沿うなら、自分をあたらしくすることによって、一層あなたらしくなります。
文中で明確に規定はされていませんが、自分をあたらしくするための具体的なステップを挙げるなら次の3つになるでしょう。
1.自己紹介を見直す
2.タイムラグを乗り越える
3.他人の「自分」を大切にする
上記の3項目は、僕なりの解釈がベースになっています。そういう意味では一解釈に過ぎないのですが、少なくとも僕にとっては、この3つの指標が得られたことによって、日々の行動が変わりました。
例によって質問文に変えるなら次の通り。
1.自己紹介がマンネリ化していないか?
2.タイムラグを楽しんでいるか?
3.他人の「自分」を大切にしているか?
本書をお読みいただければ、この3つの指標の意味を共有できると思います。というより、置かれている環境や抱えている課題の違いによって、この3つとは全く異なる指標が引き出されることの方が多いでしょう。
そういう意味では、読者それぞれが自分なりの指標を見つけ出し、自分を新しくするうえで役に立つ行動指針を作り上げるためのガイドという位置づけとして本書を捉えることもできます。
僕自身は、読み進めながら「確かにそうだな、大切だな」と思ったことが無数にあり、読んだそばから自分を新しくするための燃料として日々の“やる気窯”に投下していました。
以下は、投入したものの一部。
●「嫌なことをするから、お金がもらえる」という思い込みが、仕事観のベースにあるとすると、仕事が楽しいものになるはずがありません。(p.81)
●だから、仕事とは、喜ばれることです。(p.91)
●何でもそうですが、大切にするから大切にされるのです。(p.95)
●複雑なものは単純にしないと使えない。(p.110)
●世界を変えたかったら、自分を変えることです。(p.112)
●言い訳は、痛み止めの薬のようなものです。一時的には、それでラクになれます。しかし、痛みの原因を取ることはできません。(p.115)
●経営者が全能感を持ってしまうと、「裸の王様」まっしぐらです。(p.193)
●自我は「ガン細胞」のようなものです。ガン細胞はとても強い細胞です。しかし、その強さのあまり、最終的には、自分さえ殺してしまいます。(p.197)
●しかし、人生が明日も続くというのは思い込みでしかありません。「明日はどうなるか分からない」、それが人生です。(p.202)
僕以外にもたくさんいるであろう、“気球のロープを外し忘れている人”は必読です。
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