『知的生産の技術』に「こざね法」というメソッドが紹介されています。
有名な情報カードを使った情報蓄積法ではなく、紙片を使った構成構築法で、KJ法と似ていながらも、違った特徴を持っています。
私はこざね法を知る前から、紙片でなく付箋を用いて同じようなことをやっており、「たしかに便利ですよね。こういうやり方」となんとなく理解した気持ちになっていたのですが、今回は付箋によるアレンジではなく、できるだけ紹介されている方法に沿ってやってみたときのお話を書いてみます。
用いた道具
使ったのは以下の二つです。
- B8サイズのリングメモ
- セロハンテープ
実際の「こざね」(紙片のこと)は、不要な紙を自分で裁断して作るのですが、さすがにそれは面倒さが立ったので、同じサイズのリングメモを買ってきて、リングからびりびりと切り離して使いました。
また、紙片と紙片を接続する道具は、こざね法ではホッチキスが使われているのですが、紙片を紙やノートに貼り付けるときにはセロハンテープを使うことになるので、紙片の接合もセロハンテープでやってしまうことにしました。
すでにこの段階でも、いくつかのアレンジが発生していますが、付箋でやるよりもずっと「こざね法」に近い状態とは言えるでしょう。
実践
あとは、実践です。
紙片一つひとつに、その章で書こうとしていることを一項目ずつ書き出していき、それらを一通り書き終わった後で、「これの次は、これだな」というものを見つけたらテープで二つの紙片を貼り付けます。さらに後に続くものがあれば、それも貼り付けます。
以上の動作を繰り返して、複数のブロックを作り、今度はそのブロックの流れを考えます。ただし、その場合、ブロック同士をテープで接続するのではなく、ブロックを並べることで(≒その配置で)流れを表現します。でないと、紙片がやたらと縦長になり、扱いが難しくなるからです。
平面にただ置いているだけだと、ブロック単位での大きな移動がやりやすくなります。この操作が、構成を検討するときに活きてくるのです。
実践での発見
以上の実践をやってみると、いくつかの発見がありました。
まず、紙片でやると、付箋と違って「ブロック」で持ったり、移動したりができます。付箋でこうした作業をやる場合、基本的に一枚一枚を独立的に貼り付けるので、グループでの移動が少し厄介ですが、つなげた紙片ならそれが簡単にできるわけです。
これはもともと「こざね法」が、構成案を作るための方法として考案されている点が影響しているでしょう。構成とは要素の流れと配置を決めるものであり、そこには必ずブロックが生まれるからです。言い換えれば、こざね法はブロックベースの構成構築法だと言えます。
また、紙片を重ねて貼り付けるので、使用される空間がコンテンツのサイズと適合します。一行だけ書いた紙は一行分のスペースを、二行分だけ書いた紙は二行分のスペースを使うわけです。
独立的に貼り付ける付箋の場合は、その記述の量がどうであれ、付箋一枚分のスペースを使うので、空間の使用可能量が小さくなってしまうことを考えると、これはメリットだと言えるでしょう。
さらに、付箋のように「紙に貼って使う」ものではないので、用意したスペース以上にこざねが広がることもありえます。枠の中身に紙片5枚分のスペースしかなくても、つなげるだけならいくらでもつなげていけます。しまうときは折り畳むなどして圧縮すれば問題ありません。
その意味で、こざね法の方が空間的自由度が高いと言えるでしょう。
フラットな配置
もう一つ、これはKJ法との違いですが、こざね法においては作成した「ブロック」に見出し(表札)を作ることをしません。単に要素をブロックに固めて、それを並べていくだけです。
もちろん、見出し的なものを書きたければこざねにそれを書くことはできますが、その情報が「上位」に位置することはありません。つまり、構造的にフラットなのが「こざね法」です。
ブロックに「見出し」を与えたほうが、全体的な操作はやりやすくなりますが、そもそも一枚一枚のこざねが半-見出しのようなものです。半-見出し集合の見出しをつけるのは難しいでしょうし、間違ったネーミングを与えてしまう可能性もあります。
この段階で検討しているのは、話の流れだけなので、ブロックの見出しについては考えなくても、案外うまくいくものです。
さいごに
というわけで、今回はできるだけそのままの「こざね法」をやってみた感想を紹介してみました。
付箋に比べると、いちいちテープで貼り付けていかなければならない面倒さはありますが、そのかわりに紙片を使うことのメリットもあります。付箋が紙片の上位互換とは必ずしも言えないわけです。
そうした意味も含めて、まずは一度原典が示す通りに(つまり虚心で)取り組んでみるのが良いのでしょう。それによって、頭で理解していたのとは違ったそのメソッドの性質をつかみ取れるようになります。
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村上春樹さんの新刊は短編集です。品川猿のお話が好きです。
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