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必要なことは「決めつけないこと」

東急プラザ渋谷(渋谷フクラス)

佐々木正悟 元監督・野村克也さんが2月11日、84歳で亡くなりました。千葉ロッテマリーンズの偏狭な1ファンとしては、必ずしも「ノムさん」のファンではありませんでしたが、NHKまでただちに特番を組むあたり、さすがのインフルエンサーです。

少なくともヤクルトの監督をしていたころから「可能性を求め続ける」という言葉が印象に残っています。「なんで、決めつけてしまうのか」とずっと伝えられていた記憶があります。

なぜ、決めつけてしまうのか

決めつけない、というのがどうも私たちは本当に苦手です。だからなんとなくこうした言葉はさらっと聞き流してしまう。なぜなら、決めつけているつもりがないからです。自覚なく決めつけてしまうのです。

部署は解体となりチームメンバーが異動を命じられるなか、熱意の向けどころを奪われたマスターは脱サラを決意。

俺は俺で、喫茶店をやる!

「男で30くらいだとさ、なんとでもなるという妙な自信があるもんだよ」

威勢よくはじまった「喫茶アメリカン物語~開業準備編~」でありますが、二言目には「でも、なんともならなかったな」

……そりゃあそうです。開業のために前々から準備していたわけでもなく、突然に脱サラだなんて無謀です。

私たちはこう考える。「無謀」であると考える。「開業のために前々から準備」すればもう少しはうまくいきそうだと考える。

これが「決めつける」ということです。

著者のやままあきさんは「結果」を知っているのですから、これが「無謀ではなかった」という解も得て、答えを見てから問題を解いているようなものですが、読んでいるだけの私たちはそれでも「無謀だったのではないか」と飽きずに決めつけたがる。

完全に間違っていると答え合わせをしてみてからなお「そりゃあそうです」という文章の方がしっくりきてしまうでしょう。ましてこの世のどこにも銀座にも「喫茶アメリカン」の影も形もない段階から2000万円を親から借り尽くしていきなり喫茶開業するのをどうして「無謀」と思わずにおくか。

そこにこそ「決めつけない」の真価があるはずです。

「無謀だ」も「無謀ではない」も決めつけ

誤答であることがあからさまになってなお「無謀だ」と決めつけたがる心性を、誤答であるかどうかがわからないうちから「決めつけずに」おくことをどうやって手に入れるか。

私は一度も「無謀ではない」とは書いてません。「無謀だ」も「無謀ではない」も決めつけです。

「なんで、決めつけてしまうのか」とノムさんは繰り返し批判していたのを思い出しましょう。「わかってない」くせに「わかっている」と思いたがる。「わかっていない」の周辺に、答えらしきものがあるはずです。

何度か書いていることで恐縮ですが、私はこと自分自身については、2011年3月11日の真昼に、渋谷の東急プラザのほぼ最上階にいた時以来、自分の能力をまるきり信用しなくなりました。

少なくとも私は、未来を読むことができるほど有能でも賢明でも何でもない。その意味では今後も愚かなままでしょう。もし少しでもなにかを「予知」できるくらいなら、もしも少しでも、ほんの一日先でも未来を「予測できる」というのなら、あの日にあんなところには行ってなかった。

つまり、著者のやままさんが、いまあるお金のすべてを使って、東銀座の一等地にカフェを開いたとしても、それが「無謀」なのかどうかはぜんぜんわからないのが私です。

ちょうど1年前の今ごろ、jMatsuzakiという人が、私にはぜんぜんわからない理由で、突如としてドイツのベルリンに移住して、会社を興したりしています。

たぶん彼には私と同じくらいしかお金もないし、ドイツ語はもとより英語も堪能ではなく、そもそもドイツのことなどなにも知らなかったはずです。無謀でしょうか。「そりゃあそうです」 ドイツや起業にくわしい人は、そう考えるかもしれません。

しかしそういう人は、日本の活断層や地震の多さにはそれなりにくわしいのではないでしょうか? 2011年のあの日、どこにいましたか? 平穏無事に過ごすことこそ賢明であるというなら、ベルリンに住むより東京にいる方が、「無謀」なのではないでしょうか。

決めつけないという視点を抱きながら「喫茶アメリカン」を熟読していけば、「無謀だからやめる」でも「無謀なことにチャレンジする」でもない、本当にやるべきことが少しずつ見えてきます。

そう。絶対に成功するやり方は見つけられなくても、やるべきことというのはあるものです。

野村元監督のご冥福をお祈りするとともに、あのセリフをよくよく覚えておきたいものです。

「なんで、決めつけてしまうのか」

▼編集後記:
佐々木正悟



02-28(金)、鎌倉「コバカバ」にてワークショップを開催します。

今回のテーマは「集中力を発揮する」です。

倉園佳三さんの集中力は驚くほかありませんが、私も「グッドバイブス」をただ横で聞いているうちに、仕事中に脱線するということがほぼ皆無になりました。

この辺を自分でももう少しわかりやすくお伝えしたいです。とりあえずはまず、ワークショップに参加します!